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飼育員さんの1日 (7)

フラミーさんには竜商についても少し教えて貰いました。

竜商がドラゴンを買うときには二種類の方法があります。

一つは今日のフラミーさんのようにドラゴンの飼育員のもとまで赴いて直接交渉する方法。

もう一つが品評会です。

品評会の後には出たドラゴンがそれぞれランクつけされその後に入札にかけられるのです。

前者はドラゴンを見極める目が必要になりますし交渉術も必要です。

後者は品評会である程度ランクが付いているので分かりやすいですがどうしても値段が高騰してしまいます。

どちらにも利点があり、不利点があります。

フラミーさんは前者しかやらないそうです。

元からかなり顔が広いようでドラゴニアにはたくさん取引相手がいるとのことです。

本当に何だかやり手の女性といった感じです。


「じゃあ、また一週間後。」

「うん。フラミー、よろしくね。」

「ティーアちゃんもまた来るね。お茶美味しかったよ」

「はい。ありがとうございます。また準備してお待ちしてます。」


まだこの後もやることがあるらしくフラミーさんはまだ日があるうちに帰っていきました。

一応晩御飯のお誘いもしたのですが残念です。

アスカさんより食べさせがいがありそうだったのに…………


「行っちゃいましたね。」

「まあ、仕事があるんじゃ仕方ないよ。」

「そうですね。」

「でもあいつは仕事、仕事ってきっと中々結婚出来ないだろうね。」

「…………ドラゴンのこと以外何も出来ないアスカさんが言ってもいまいち説得力無いですけどね。」

「まあ、そっか。でも、私にはティーアがいるしね。じゃあ、私達もお仕事しようかな。」

「…………そこは認めるんですね……ティーアも一応ずっとアスカさんのために働く気はないんですけど…………」

「えー。ティーアはずっと一緒がいい。」

「はいはい。えっと……ところでいつも通りのブラッシングでいいですか?」


アスカさんの話を適当に流して次の話をしました。

だいたいいつもこの時間はティーアはドラゴン達の皮膚をブラシで擦ってます。

こうすることで皮膚が丈夫になり、皮膚の間から変な病気が入りにくくなるそうです。


「うん。そうだね。終わったらご飯もあげといて。」

「分かりました。アスカさんは?」

「うん。私は書類とかまとめないといけないから、ティーアよろしく!」

「はい。分かりました。」


普段はティーアがブラシをして終わった子からアスカさんが体調を見ながらドラゴンに晩御飯をあげているんですけどやはりミーアの件もあり忙しいのでしょう。


「では、今日はどの子からいきましょう?」


ブラシを準備して室内に入りティーアは四匹を見回しました。


「コック、ヤット、コクル、…………ミーア。」


自然とミーア目が止まりました。

ミーア自体はいつも通りといった感じです。

特に変わったこともなく呑気にしていました。

でも、今となって改めて見ると何か違って見えるような気がします。


「ううん。違う。いつものミーアです。」


ティーアはティーアに言い聞かせてコックから順番にブラシを当て始めました。

いつも通り首筋から背中、しっぽと順番にブラシをかけていきます。

コック、ヤット、コクルときてミーアと来たときにまたティーアの手が止まってしまいました。


「ミーアは…………ミーアは後一週間だと分かっているの?」

「ケルル?」


ティーアが話しかけるとミーアは大きな瞳で首を傾げてこちらを見てきます。

…………全く……分かってるんだか分かってないんだか、本人は呑気です。

…………それとも分かっててティーアに気を使っているのでしょうか?

…………………………


「…………まあ、分かってない方がティーアは気が楽でいいんですけどね。」

「ケケル?」


うーん。やっぱり分かっていないようですね。

ティーアはブラッシングを始めました。


「クーケルルル」


ミーアはやっぱりいつも通りでした。

気持ち良さそうに目を瞑っています。

……でも、でもやっぱりティーアはいつも通りには出来なかったようです。

ティーアは自分では普通にしているつもりなのですが自然と涙が出てしまいます。


「クークー」

「…………ふん。心配してるのですか?こういう…………ぐすっ……時ばっかり……うっ……ずるいです。」


ティーアに鼻を擦り付けてきます。


「クークー」


尚もティーアの事を心配して優しい声で泣くミーアにティーアは必死に色々と堪えました。

一人前のドラゴンの飼育員は泣かないのです。


「ぐすっ…………もう、大丈夫。」

「ケケカルル!」

「ありがとう。ミーア。」


頭を撫でると今度は嬉しそうに鳴きました。

ティーアは思わずミーアの額にティーアの額をコツンと合わせました。


「うん。ティーア頑張る。ミーアがいなくなる日までも、その後も。だから見ててね。」

「クーフーフー」

「…………うん。そうだね。」


ミーアが頑張れと言ったような気がしました。

ドラゴンの言葉は分かりませんが分かった気がしたのです。


「ティーア!!仕事終わった?」


その時、遠くからアスカさんの声がしました。

しまった。

予定よりだいぶ時間をかけてしまったようです。

アスカさんの晩御飯を作らないと。

しかもまだドラゴンにご飯をあげていません。


「すみません!!もうすぐ終わります。」

「早くしなよー!!」

「はい!!」


目をごしごし擦り涙を誤魔化し急いで四匹にご飯をあげようとしました。

今日は一人でここの係りで本当に助かりました。

アスカさんがいたらこの恥ずかしい姿を見られてしまいますからね。

そして、本来ならここからご飯の飼料を調合をしないといけないのですが…………


「あれ?もうしてある…………ティーア準備したっけ?」


不思議な事に既にご飯が配るだけに準備してありました。

ティーアが混乱して忘れてるだけでしょうか?


「ティーア!まだー?」

「はい!すぐに行きます!」


アスカさんがいつにも増して急かして来ます。

そんなにお腹空いたのでしょうか?

いえ、そんなこと考えてる暇は無いです。

急いでやらないと。

ティーアは悲しんでいたことも忘れて四匹にご飯を配りました。

急がないとアスカさんが怒りますから。


『ふふ。…………本当に可愛いね。』



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