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664 つりまくり
2019.2 作
「痛っ!」
声が出て、あわてて胸を押えた。
「どうしたん?」
妻がオレの顔をのぞきこむ。
「胸がつったんや」
狭いコタツで寝返りをしようとして、胸の筋がつったのである。
「痛そうやね」
「ああ、痛くてたまらん」
「あんた、体のどこもここもつるんやね」
妻の言うとおりなのだ。
脇腹がつる。
足の指がつる。
ふくらはぎがつる。
「ほんと、つりまくりや。それで昔、オマエもつったもんな」
妻いわく。
「だったらしょうがないわね、うちに痛い目にあっても」




