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489 渾身の一作
2018.6作作
書いたばかりの作品をプリントアウトする。
短編だが渾身の一作である。
せっかくだ。
妻にも読ませることにした。
「これ、できたばかりなんやけど読んでみらんか?」
「いま読むの?」
しょうがないといった顔で、妻が受け取る。
それから三分。
妻は原稿から目を離さず、ひたいにシワを寄せていた。
物語に引き込まれているのだろう。
「今日はないこと、真剣に読んでくれるやないか」
妻いわく。
「字がよく見えんのよ。老眼鏡をかけてまで読む気もせんしね」




