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1 孫の手
背中が痒いんで愛用の孫の手を探すが、どうしても見つからない。
そこで妻に頼む。
「おい、背中をかいてくれ」
「どこらへんね?」
服の上から、妻がテキトーにかく。
「そこじゃない。手を入れて、じかにかいてくれんか?」
「イヤよ! 爪の間に変なものが入るやない」
「冷てえヤツやな」
「なら、これで自分でかきよ」
妻が鉛筆をよこす。
「こんなんでかいたら、背中が黒くなるやないか」
妻いわく。
「もういっぺんかけばいいのよ、消しゴムがついてる方でね」