黒槍
1-⑥b
墓参りは滞りなく終わった。
ひとつ不思議なことがあった。墓前には線香と花が供えられていた。
父さんを忘れないでいてくれる人が家族以外にいるのは嬉しかった。
見知らぬ他人が父さんの命日を憶えていくれている一方で、ど忘れして顔も思い出せなかった息子がいる。ごめん、父さん。
美樹姉さんと虎緒の話し合いで霊園からほど近い喫茶店でケーキを食べることになった。
喫茶店には駐車場が無いからと、歩いて向かうことにした。
「歩くくらいなら車で行けるデパートのスイーツショップにしたらよかったんじゃない?」
「ちょっと―。和樹があの喫茶店のケーキが大好きだから、こっちにしたのに」
そうなの?俺別にケーキ好きじゃないけど、でもこういう時に反論すると怒られるからやめとこ。
雲行きは怪しい、曇り空では済みそうになさそうだ。と思ったら、雨粒がポツリときた。
直ぐにサアサアと降り出してきた。
「やっぱり降ってきちゃったわね」
「ほらお姉ちゃん、傘持ってきちゃってよかったでしょ。虎緒ちゃん傘一緒に入って」
「ミサ姉、はっやく、はっやくケーキっケーキっ」
雨か、嫌いなんだよな。傘差しても結局どっかしら濡れちゃうし。母さんに持たされてはいるけど。
風邪ひくのも嫌だし仕方がないか。
「痛っ」
右手が痛んだ。静電気が体に走ったのか思った。手が疼く。
「和樹どうしたン?」
軽く手を振るって紛らわせた。夢の中で感じた痛みと似ていた。
「大丈夫だよ」
霊園の出口に、人が立っていた。
「青野和樹、少しいいか?」
傘からのぞいた顔は、黒崎だった。
どうしてここにいるんだ、という疑問は正臣が言ってくれた。
「墓参りだ。青野和樹と話がある」
「黒崎君、今年も来てくれたのね。ありがとうね」
「黒崎君。おっきくなったね」
「いえ。僕が来たかっただけですから」
母さんと美樹姉さんが黒崎と話してた。
というか黒崎はこれまでも父さんの墓参りに来てるのか?
なんでだ?
「すみません、美咲さん、美樹さん2人にさせてもらえませんか?」
「……うん。じゃあお姉ちゃん、私たちは先に喫茶店に行ってようか?」
「そうね、正臣ちゃん、虎緒ちゃん行きましょ」
「「う、うん」」
わざわざここまで来て話すことはないだろ。少なくとも俺にはない。
「青野和樹、どこまで思い出した?」
「は?」
「卒業式の予行練習で話していただろ?瑠璃色水晶を使ったのだろう?」
「どうしておまえが瑠璃色水晶を知っているんだ」
「それはどうでもいい、どこまで思い出したんだ?」
わからない奴だなあ。
「思い出したってなんだよ。瑠璃色水晶はゲームの中で、俺が使う力のことだよ」
「ゲーム?僕は現実の話をしているんだ」
話がかみ合わない。面倒くさいな。こいつと話すくらいならワッフルの方がよっぽど俺の気持ちを分かってくれる。
(ワッフ!)
≪ワッフルさん、喋ってはいけません≫
ん?足元からワッフルの声が聞こえた気がする。妙な声も聞こえた気がする
足元を見ても、いない。当たり前だ、連れてきていない。というかワッフルは夢の中だ。
いやいや現実に存在する犬が夢の中に入れるわけがない。
≪入れます≫
頭おかしくなっちゃってるな。やっぱり妙な声が聞こえる。
「どうなんだ青野和樹」
「うるさいな、だから夢の中でゲームに参加させられて、そこで使った力が今朝起きたら現実でも使えていたんだ」
説明させんな、言ってる方が恥ずかしいわ。支離滅裂でしょ、こんな説明。
「夢?ゲーム?何のことだ。現実の瑠璃色水晶はお前のエフェクトだろう」
馬鹿言うんじゃねえよ。
夢とかゲームが現実になる訳ないだろ。オーラが指先から漏れてたのも見間違いだろ。
そうに違いないんだ。
「だから夢に桃原香織ちゃんが出てきたんだよ――」
「桃原香織。ちっ、そうかそういうことか」
舌打ちすんなよ。
別に黒崎に会いたくてここに来たわけじゃない。不愉快なのはこっちなんだよ。
もういい、帰るか。ワッフルの件も母さんにもう一度相談しなきゃいけないんだ。
ズズゥ。
雨に混じって聞こえてくる音がした。
ズズゥウ。ズズゥウ。
振動が伝わってきた。
辺りは、すっかり暗くなっていた。まだ日が落ちる時間じゃないのに。雨で曇っていてもこんなに暗くならない。
暗いのは、黒煙で覆われているからだ。
厚く黒煙に閉ざされていた。
「……ゥゥゥウ」
唸り声だ。
地を這うように響いてくる。
黒煙の中で蠢いた暗さは、少しづつ形を露わにしていく。
いた。
眼は空洞でおよそ動物ではない。
低く唸る声は凶悪な殺気に満ちている。
黒い体、鋭く伸びた爪と牙。
夢で見た、甲体がそこにいた。
黒煙から、甲体がどんどん溢れてくる。
あっという間に囲まれていた。犬型甲体の群れだ。
「っ、っはあっはあ」
息がうまく出来ない。
「ゥウウガア」
唸りを上げるバケモノは突如、突進してきた。
体が反応した時には、既に目の前に大きな口と牙があった。
死ぬ。
俺死ぬのか。
死にたくない。怖い、眼をつぶった。
ここは現実なのか夢なのか。光のない黒い世界に捕らわれ、俺は死ぬのか。
ズヒュン。
風切り音にしては鈍く力強い音が耳を掠めた。
痛くない、どうして。
考える暇もなくバケモノに殺られたはずだった。恐る恐る眼を開けた。
「生きて、る」
犬は、空中で動きを止めていた。
空中で縫い付けられたように串刺しにされていた。
鋭く伸びた何かがバケモノの頭を貫通していた。
どういうことだ?どうして止まってるんだ。突き刺さってるのは何だ。
黒い槍が刺さっていた。
地面に繋がった1本の黒色のラインから棘のように突き出てバケモノに刺さっていたのだ。
ラインは黒崎の足元につながっていただった。
「ヴヴァグガ、 ギギ」
串刺しにされたバケモノはまだ生きていた。
体を串刺しにされたまま暴れる。
「何だよコレ、うあああ」
「ふん、見苦しい」
黒崎は平然としていた。
ズズズヒュン。
地面から沢山の黒い槍が飛び出す。
甲体はめった刺しとなった。
周囲を囲むバケモノ共は唸りを上げる。
殺気が圧力として重力を加算して押し付けられるようだった。
めった刺しとなったバケモノが霧散していく様子すら、黒崎は煩わしそうだった。
ため息混じりに右手で差していた傘を畳み、カバンと一緒に左手に納めた。
「雨に濡れてしまうな」
そう言うと右手を前方へかざした。
黒崎の影が脈動する。影より深い黒色と灰色が黒崎の足元に広がっていた。
「ゥババゲガガガガガガガガギャギャ」
雨粒、水たまり、霧と弾けた。犬型甲体3体が一斉に襲い向かってきた。
「邪魔だ」
一言、同時に影から黒色のラインが3本、いやもっとだ。動きが早くて数えられない。
黒のラインはアラベスク模様を描き交差直進を繰り返し突き抜ける。
ズヒュォオオン!
牙を突き立てようとせんとした甲体は、空中で揺れていた。
地面に描かれたラインから、巨大な黒色の槍が飛び出し、バケモノを串刺しにしていた。
目の当たりにしても現実味がなかった。
まだ、唸り声は続いている。尚も充満する黒煙の中で 俺は何も出来ずにいた。
夢から醒めず眠ったままなのだろうか。
不安と焦りに思考が奪われていた。
「戦うのか戦わないのかどっちなんだ」
黒崎が聞いてきた。
「戦えるわけないだろ」
「そうか、思い出したわけじゃないんだな。そうだよな、壊れてしまったんだよな」
黒崎の顔は葬式みたいな表情だった。
ぽん、と俺の肩を叩いたのは静電気が走ったかと思うくらいに綺麗な女性だった。
≪スキルを確認しました。【斬撃小:斬りつける攻撃】、【浄化小:エフェクトによる負効果を癒す】、【治癒小:ダメージを癒す】をラーニング≫
頭の中に変な声が響く、今は無視だ。
「大丈夫。私たちが倒すから、青野クンはじっとしてなさい」
現れたのは、長い黒髪の女性。
「サヤカさん、もしかして俺をつけてきたんですか?」
3年A組の担任教諭、一宮サヤカ先生が目の前にいる。
「だって黒崎クン、私を避けてるでしょ?だから会いに来たの。それよりこの数は厄介ね。私は後ろを抑えるから」
黒崎はため息をつきながら、うなづいた。
どうしてここに、サヤカ先生がいるんだ。しかも黒崎と一緒に。
「青野和樹、そこを動くな」
甲体は蹴る度アスファルトを削る。雨音は既にかき消されていた。
一斉に弾ける勢いで襲いかかってきた。
黒崎は動かず目線で敵を補足する。再び向き直ると右手をかざした。彼の影は高速で地面を走る。
バケモノは唸り地面を削り迫りくる。
「消えろ」
黒崎の影は地面から突き出した黒色の槍となった。地面に黒く描かれるアラベスク模様。
ズオオオオオオオ、襲いかかる甲体は次々串刺しとなっていった。
「はは、なんだよ。黒崎なんだよこれ」
黒崎は答えてくれなかった。こっちを見向きもしない。
「さてと。私でこいつを何とか出来るかなぁ。一先ずやってみますか」
サヤカ先生は学校の先生で俺らの担任だ。
あんなバケモノにどうするっていうんだよ。
サヤカ先生から水の球が溢れだす。
水の球はいくつも集まり、先生を中心に回りながら少しづつ大きくなっていった。
規則的な円運動を描く水の玉。
「疾っ」
短く息を吐いた。
水の玉は動きを止めた、同時に玉は回転しながら円盤状のカッターへと姿を変えた。シュイイインと高音を鳴らす。
「クロップサークルよ、切り刻め」
それは命じられるままバケモノへランダムな弧を描き向かっていった。
高音と共に巨体をなぞり切り刻んでいく。刻まれ動作を奪われていく。
甲体は突進を止めない、唸り、がなり、クラッチのイカレた車のように突き進んでいく。
それでもサヤカ先生はその場を動かず、尚も切り刻み一切の慈悲がない。
「終わりよ、一切合切八つ裂きになりなさい」
スタアアンッ、バケモノの胴体は四方八方に切断されていた。
ボトリボトリと落ちた残骸はすぐに崩れていく。
怖いんじゃなくてパニックで一歩も動けなかった。ここは夢か?俺はどこに迷い込んだんだ。
ガタガタガタ、聞こえたのは近くにいた俺だけだった。
俺の体が震えているわけじゃない。もっと大きなものがバタついているんだ。胴体を串刺しにされた一体が暴れだしていた。
サヤカ先生も黒崎も集中しているのか事態に気づいていない。
串刺しの一体は全身をしならせ激しく震わせている、が突如ブヂンと音が途切れる。体の半分を引きちぎり上半身だけで上半身だけで飛ぶように動き出したのだ。
黒崎へ飛びかかっていった。全く気付いていない。サヤカ先生も気付いてない。
つまり、このままでは黒崎はやられる。
俺は走り出していた。
「後ろだ黒崎!」
黒崎が気づいたところで間に合わない。
走れ、脚を踏み出す。
ダメだ俺も届きそうもない。既にバケモノの顎は大きく開き、黒崎の影に迫っていた。
「うわぁああ!」
叫びながら右手を突き出した。
10メートルも離れたは先にいる黒崎に手を伸ばしても届くはずもない、鉄砲でも撃たない限り助けられようもない。
それでも必死だった。
夢の中の力が、エフェクトを使えれば。
≪スキルを自動セット。【ショット】完了しました≫
瞬間、光が弾けた。
頭の中を瑠璃色の光が突き抜け、体の奥底から痛みと同時に瑠璃色の輝きが右腕へと描かれていく。
そして俺は狙いを定めた。
「間に合えっ」
瑠璃色の弾丸を右手から撃ち出した。
一直線に光を棚引かせバケモノに走る。雨粒を切り裂き黒煙を突き抜けていった。
バァンッ!
バケモノの頭は吹っ飛んだ。
甲体はは地面に落ちた。
「や、やったぞ。間に合った」
ギリギリで助けられた。
助けられた、良かったぁ〜。足が震えてる、怖ええよ。
黒崎、食われそうになってんじゃねーよ。
地面には瑠璃色の弾丸だけ残っていた。
周囲からは唸り声は聞こえない。
黒煙は白い靄へと変わっていて雲間から陽が覗き始めている。
黒崎は、瑠璃色の弾丸を拾い、俺に放り投げてきた。
「っと」
掴むとオーラになって俺の体にふっと戻っていった。
「それはきちんと回収しろ」
背を向け立ち去ろうとする。
「お、おいっ」
まて、聞きたいことが。黒崎の方をつかもうとするが足がもつれる。うまく歩けない、あれ立てない。
バシャンバシャ、空回りする腕がはじいた水たまりが冷たい。
「青野和樹、今日の事は忘れるんだ。そしてもう僕に近づくな」
ふざけるなよ、勝手に帰ろうとするんだよ。
「このままでいいの?」
目が見えなくなってきた。そうだサヤカ先生がいるんだった。やべえ立ち上がらないと。かっこ悪いとこ見せちゃってる。
「ねぇ、青野クン倒れちゃったし助けてあげなくちゃ」
「そのままにしておけばいい」
「雨降ってるし、さっきので怪我してるかもしれないし」
「見てませんでしたか、こいつの力。無傷ですよ。青野和樹はその程度で傷つくようなヤワな男じゃない。少し雨に当たって頭を冷やすといい」
冷たいな黒崎は。
「青野和樹はあれから3年間何も思い出してはくれなかった。僕のことも、彼女のことも」
「連れて帰って、教えてあげればいいじゃない。それに黒崎君が言った通りなら、彼の力があれば彼女だって」
「止めてください!彼女は……。あいつは役立たずのままでいい。今度は僕が……。第一あなたに何が分かるんですか!」
サヤカ先生に怒鳴るなよ。
でもそのくらい言われたほうが楽だ。サヤカ先生に次会った時、顔を見れそうにないんだ。
なあ、あんたたちは何なんだよ。教えてくれよ。
雨に濡れて地面に倒れて、体温が奪われ溶けていく。
寒かった。
そして意識を失った。
☆
〜〜黒崎誠〜〜
「そうよね黒崎君、あなたは香織さんと青野和樹君を守るために闘ってるんだもんね」
別に守るためじゃない。守ってもらったのは僕の方だ。
『青野和樹はあれから3年間何も思い出してはくれなかった。僕のことも、彼女のことも』こんな言葉を言うつもりが無かったのについ口がから出てしまった。
今度は僕が二人を助ける番なのだ。たとえ体が動かなくなっても、死んでしまったとしても。
香織ちゃんと和樹くんをボロボロにしたのは僕のせいなんだから。
だからこれ以上力を目覚めさせちゃいけない。
「あなたは立派よ。でも一人で戦い続けるつもり?うまく隠しているつもりかもしれないけど、黒崎君、あなた左目がほとんど見えてないでしょ。もうあなたは限界よ戦うのは私たちに任せなさい」
闘うのをやめるわけにはいかない。これは僕の戦いだ。
左目はもうほとんど見えてない。
左手も最近は思い通りに動かせない。それでいい、これは罰だ。
「サヤカさん、遠くから声が聞こえませんか?おそらく青野和樹の連れ合いでしょう。僕も貴女もここから離れたほうがいい」
和樹くんを巻き込みたくない。あの時の地獄を忘れて生きていられるならその方が良い。そうに決まってる。
「ちょっと待ちなさい、決して悪いようにはしないから。だから桃原香織さんと一緒に私たちのところに来て。これが最後のチャンスよ」
「無理ですよ」
「桃原香織さんの症状も深瀬君ならなんとかできるの」
だからこそ、一緒に行くことが出来ない。深瀬こそが今のこの状況を作り出しているんだ。
けれど僕がどんだけ頑張っても気付いてはくれないんだ。ずっと一人、和樹くんは幸せになって行ってまうんだろうな。
「わかった、いいのね?私と天谷さんは強引に貴方達を保護しに行きますからね」
僕は返事せず帰ることにした。
サヤカさんは、敵に与する者だ。
桃原香織を狙って襲い来る甲体。その襲撃から守れるのは自分だけだ。
★
~~黒崎誠~~
1年前のとある日
いつか来るとは思っていた。その為の準備もしてきた。
それは今日とこれからの日々のために在った。
ザッザッザッ、アスファルトが削れる音が聞こえてくる。辺りは黒煙が斑に溢れていた。
一見するとイノシシに見える動物がいた。
でもそれは動物などではない。
超常の力を宿した、人すら食らうバケモノ、甲体だ。
奴らは牙をむいて僕と桃原香織の前に立っていた。
幸い、ここは自宅の庭だった。人目を気にすることなくエフェクトを使える。
桃原香織は車いすに乗って寝ていた。今日も保健室登校後に体調を崩したのだ。こうして一緒に帰ってきた。そこに甲体が現れたのだ。
「グルウウゥゥ」
甲体の体表からは黒煙が揺らいでいた。迸る殺気は彼女を狙っている。
甲体のエサは、ターミナルだ。より強いターミナルを狙う。
桃原香織のターミナルは施設から逃げた時から暴走し続けている、だからいつかは狙われると覚悟していた。
「グルゥアアア」
「消えろ、消えてしまえっ!邪魔するものは何であろうと誰であろうと串刺しにしてやる」
影は弾ける。
黒色の影は槍の如く、アラベスク模様を描き疾走していく。
黒槍は突き進む。
「ブォバャァァ」
叫び僕らへ襲いかかろうとする甲体。
ズヒュン、黒い槍は甲体を串刺しにした。
「ね、ねえマコトちゃん。甲体がきたの?」
「ああ来たよ。大丈夫1体だけだった。もう倒したよ」
「そっか。次甲体が来たとき私が寝てたら起こしてね。戦うから」
起こさない。香織ちゃんは僕が守る。
「わかった」
「ほんとにわかってるの?マコトちゃんは弱いんだから私がいないとダメなんだからね」
そうだね、弱いよ。でも守りたいんだ。
「あとね、お願いがあるの」
「うん、何?」
「和樹は巻き込まないようにしよ?」
「うん、そうだね」
和樹君はもう十分僕らを助けてくれた。たぶん力が目覚めなければ狙われることもない。
僕は和樹君も守りたい。その為に力を磨いてきたんだ。
その日から、時折、甲体の襲撃があった。幸い、香織ちゃんが戦うことはなかった。決まって香織ちゃんが体調を崩した日だったから。
戦いの後は、香織ちゃんがいてくれた。
でも、僕は少しずつ孤独になっていた気がするんだ。