表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/34

新しいプロローグ

「人、多いね」

 周囲を見渡して言った梓に弥生が応じた。

「百五十校が参加するという話ですもの。神奈川や大阪ほどではないにせよ、試合数の多さは半端じゃありませんわ」

 男子野球部との試合から一週間後の六月二十二日。県庁所在地の文化センター。

 来月の上旬から始まる県大会予選の組み合わせ抽選会場に、梓たち清水共栄女子野球部員一同は到着したところだった。

「にしても女子はやっぱ少ないね。うちらずいぶん目立ってるんじゃないかな?」

 一美の言う通り女子生徒の姿は少なくて、目に入るのはひたすら男、男、男。

 全員が女子な上に、百五十センチのちびっ子だの金髪碧眼の留学生だので構成された梓たちの集団はやたらと注目を集めていた。もちろん、男子野球部を倒したという情報も、すでに多くの人が知っているだろう。

 春季関東大会の県予選で優勝した清水共栄は、本来ならAシードが決定していた。だがそれは男子野球部の成し遂げたことであり、女子野球部としてはシード権を辞退、ノーシードで一回戦から戦うことになる。

 会場内に入ってホールの座席に腰を下ろせば、周囲には様々な高校の制服がずらり。名前を聞けば梓もよく知っている高校ばかり。

「あの……向こうっ側からわたしたちを睨んでるの、どこの高校……?」

「河出商業ね。去年と一昨年、決勝で甲子園行きを逃してる県北の名門校」

 真理乃に優が解説している横では、シャーロットと転校生の一美相手に弥生と雪絵が知識を披露し合っている。

「あそこにいるのが岩波一高ですわね。県立の進学校ですけれど、去年の夏は県大会ベスト4まで進出して話題になりましたわ」

「あの白いブレザーは、扶桑大一枝だな。一昨年の春、センバツに出てる」

 そんな会話に囲まれていると、次第に梓は心躍ってきた。不安と期待が交錯し、鼓動がどんどん高まっていく。

 ――戦いが、始まる。

 敗者は容赦なく退場させられ、勝ち残った者は休む間もなく次の戦いを強いられる、死力を尽くした闘争。全国で四千以上のチームが覇を競い、たった一つの真紅の旗を目指して、繰り広げられる死闘。

 三十数年ぶりに味わうそれへの期待に、梓は酔いそうになった。

 悪酔いとばかりは言えない。心のどこかでずっとこれを待ち望んでいたのだから。


 セレモニーが終わり、いよいよ抽選開始。

「さ、行ってらっしゃい、キャプテン」

 梓に振り向いて、弥生が笑う。

「恥ずかしいからやめてよ、くじ引きで決まったことなのに……」

 立ち上がりながら、梓は唇を尖らせる。最上級生の啓子も一美も、あるいは美紀も優も雪絵もキャプテンになるのを固辞し……最後は「どうしても嫌、というわけではない」弥生と梓でくじを引いたのだ。

「ほら、愚痴は後で聞いたげるから、行ってきな」

 美紀が梓に笑いかける。

「はーい」

 梓が座席横の段差を降りて行こうすると、一美が声をかけてきた。

「楽しい相手、引いてきてよ!」

「はい!」

 元気に答え、梓は舞台へと駆けて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ