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モンスターズ・バトル&ゲーム  作者: まるいもの
1章 プロローグ
6/36

召還+転生=スライム

俺の名前は服部瞬(はっとりしゅん)、今年十八歳になる受験生だ。

特技は速書き術にペン習字、生徒会長とお近づきになりたくて書記になる為に必死に覚えた。

なのに俺はいまスライムに転生してゴブリンと一対一で戦っている最中だ。

なに?訳が分からない?俺も自分が何を言ってるのかわからなくなりそうだ.

だから少し思い出してみようか。


-----------------------------------------------------------------------------


夜中の一時、受験勉強が一息ついたらお腹がへったので、コンビニに買出しに行った帰りだった。

丁度横断歩道を渡ろうとしたら、地面にびっしりと光る魔方陣のような物が浮き出る。


「うわっなんだこれ」


魔方陣に気を取られたのが不味かった。居眠り運転のトラック、気づくのに遅れ逃げれない。

ドンッ! トラックに轢かれ()瞬間、地面の魔方陣が光輝く。


トラックの運転手が慌てて降りた時には、そこに轢かれたはずの少年は影も形もなかった。



   ◆◆◆◆◆◆◆◆



---ベアーチェ城、地下召還の間---


まるでドラキュラ城のような雰囲気のお城の地下で、一人の少女が呪文のような言葉を呟いている。

年の頃十二~三歳ほどの美しい少女だ、動くたびにサラサラと流れる銀髪を黒いリボンでツインテールにし、先ほどから呟いている口は赤く濡れて艶やかだ。


最後の言葉を紡ぎだし閉じた瞼を開く、その目はルビーのように赤い。

地面に描かれた魔法陣が光り輝き、雪のように白い肌を照らす。

細い肢体も相まって儚げな印象を醸し出している。


『おおー爺、召還陣が反応しておるぞ』


暗闇の中から一匹の老フクロウが少女に応える。


『姫様っおめでとう御座います、これで何とか間に合いますぞ』


うんうんと頷き両手を広げて。


『さあっ、わらわの召還に応じ現れよ!』


どちゃっ   グロイ物体召還


『『……』』


『にょわ~にょわわ~、わらわはこんな物体召還してないのじゃー』


『姫様っ姫様ー!まだ、まだナマモノですぞ。ああっ魂が抜けますの、早くビンの中に!』


『瓶っ瓶はどこじゃー、あった!』


ガシャンッ


『にょわ~~~』


『姫様っ落ち着いてくだされ、後一つ、後一つ在りまするー』


儚げだった少女の面影は見る影もなかった。




ここは……どこだ?魔方陣みたいな光が……トラックに轢かれ……


トラックに轢かれて見覚えの無い場所に、病院でもない、まるで召還魔法にでも呼び出された気分だ。


どうせ召還するなら轢かれ()前にしてくれよ、何で轢かれ()後かな……意識が遠のく……俺死ぬ……な。





こんこん


ん……眠い……


こんこんこん


誰だ?もう少し寝かせてくれ、あと五分。


こんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこん


《だー、うるさいっ誰だ安眠妨害するのは!》


「おおー爺、起きたぞ!」


「念話と言語の魔法もきちんと掛かっておりますなー」


目を覚ますとそこには信じられないほどの美少女が居た、《うっわ、何この子すげー可愛い》


「おおー爺、こやつ判っておるの、すでにわらわの美貌に骨抜きなのじゃ」


くねくねと怪しい動きをしだす。


「流石姫様ですの」


《あっあれ?俺声に出してたっけ?》


「おぬしには念話と言語の魔法を掛けたのじゃ、声を出さずとも相手に意思を伝え合えるのじゃー」


「流石姫様なのですの!」


《はっ?魔法?てかここ何処?何で俺ガラスの中にいるの!》


「いっいっぺんに聞かれても答えれんのじゃー少し落ち着くのじゃ」


フクロウが俺の前にやってくる、あれ?このフクロウが喋ってる?


「僭越ながらワシが説明をいたしますかの、先ずはワシの名前はクロッカスと申しますの、姫様の使い間をしております」


《あっ俺は、はっと……シュン・ハットリです》


欧米風に名乗ってしまった。


「そして此方におわすお方が、マーセリア・ファレン・グランバーグ姫様なのですじゃ」


「フハハー、よろしくなのじゃー」




---数分後---


《つまり俺は死ぬ寸前に異世界アーズマースに召還されて、このままでは魂が離れて昇天してしまうので、魔法のガラス瓶に入れて保護したと》


「そうなのじゃ、感謝するとよいのじゃー」


ヘソまでしかない黒のキャミソールに、赤いリボンをふんだんに使った黒のゴシックパニエ、黒いニーソックスに黒革の靴が、銀の髪と白い肌によく似合っている。


そんな美少女が薄い胸を反らしてドヤ顔をするのはとても微笑ましい。


《そうかー俺死んじゃったのか、トラックに轢かれたもんなー・・・そうだ、俺のことを召還してどうするつもりだったんだ?》


「勿論、わらわの従者にする為なのじゃ!」


《従者?でも、俺死んじゃったんだぜ?》


「それには心配に及びませんの、姫様は今現在唯一の転生魔法の使い手なのですじゃよ」


《転生?ってもしかしてこの世界の住人に転生するとか?》


「ですのーこの世界のモンスター(・・・・・)に転生できますのー」


《モンスター?》


「ですの」


《「……」》


《モンスターはちょっと……人間に転生できません?》


「無理ですの」


んー、このままじゃ死ぬだけだとしても簡単に受け入れられないなー。


「フハハー、心配ないのじゃ、何と今回の転生のために用意した素体は、大陸一の強さを誇ったダークナイトの死体なのじゃー」


《おおっダークナイト、なんだか凄く強そうじゃないか》


「生前は姫様のお母様にお仕えしておられた方ですの」


なるほど、大陸一は眉唾でもダークナイトってのは本当みたいだ。どうせ死んじゃったんだ、ダークナイトに転生して異世界無双も悪くない!


《俺転生します、よろしくお願いします》


「うむうむ、わらわに任せておくのじゃ、魔王の名に掛けておぬしをリッパなダークナイトに転生してみせるのじゃー」


《まっ魔王だったの!》


「自称ですのじゃ」


「フハハー」


何だか思いっきり不安になってきた、大丈夫かな……



瓶詰めの俺は自分では動けないのでマリア(そう呼ぶ様に言われた)に運ばれて移動している。

塵一つ落ちてない掃除が行き届いている廊下を10分近く歩き目的の部屋へ到着する。


「ベアーチェ、用意は出来ているかや?」


部屋の中は、大きなガラスの筒に怪しげな物体が接続された機械のような者があり、その脇に一人のメイドが控えていた。


黒髪をボブカットにし、少しつり上がった目が印象的なクール系美人のメイドさんだ。スタンダートな中世ヨーロッパ風のスカートの長いメイド服が良く似合っている。


「姫様、それがあの汚物の魂ですか?」


あれ?俺今凄く見下されてません?


《あの、汚物って……》


「あなたのぐちゃぐちゃになった死体ですが」


《俺の体汚物扱いかよ!》


「邪魔なのでゴミ捨て場に出しておきました」


《いやああああ!俺の体ー、せめて火葬ぐらいしてえええええええ!》


「ちっ」


今舌打ちしたよっこのメイド!


「そんなことはどうでもいいのじゃー早く準備をするのじゃー」


「用意は此方に全て整っております」


そういって機械のような者を指す、ガラスの筒は二つ在り、一つには黒い鎧を纏った騎士が入っていた。


《あれがダークナイト……あれに転生するのか……》


「フハハー、どうじゃ強そうであろう?」


《確かに悪くない。ふふふふ、運動が得意じゃなかった文系の俺が異世界でダークナイトに転生!》


「それでは最後に契約をしませんとの、姫様契約書ですの」


《契約?》


「そうなのじゃ、転生するにはわらわと主従の契約が必要なのじゃー」


「主と魂でつながりその魔力によって転生を果たすのですの」


《やっぱりただで転生だなんてうまい話はないか。だけどお姫様を守るダークナイト!悪くない、悪く無いぞ!俺契約するよ!》


「フハハーそれでこそわらわの初の従者なのじゃー。でわこの契約書におぬしの名前と契約に了承する旨を念じるのじゃ」


ぺたりとガラス瓶に羊皮紙のような物をくっつけられる。


《ぐぬぬぬぬぬ》


適当に念じてみると、契約書に俺の名前と訳の解らない文字が浮かび上がる。


「やったのじゃ、爺、初従者ゲットなのじゃー」


「姫様、ご立派になられて、ぅぅぅ」


「……しょーもない」


何だかさっきから不穏な言葉が出ていたが自分の世界にトリップしていて気がつかなかった。


「それでは、次は転生ですの」


「なのじゃー」


俺の魂が入れられている瓶を、ベアーチェさんが何も入っていない筒に入れる。口は悪いがやることは丁寧なんだな。



「でわ、今より転生の儀式に入るのじゃ!」


「姫様ファイトですの、呪文を間違ってはいけませんぞー」


「だっ大丈夫なのじゃ、わらわはもう三回に一回しか間違えんのじゃ」


え、ちょっと待って、それって三回に一回間違えるんじゃ……


俺の脳裏に激しい警報がなるがすでに止める方法が無く、マリアの詠唱が始まる。


『常世の生、積み重なる死、巡る命は連環の輪、全ては……すべてはー(なっなんじゃったかの……忘れてしまったのじゃ、ええ~い何とかなる)……おっおっぺけぺ~』


目を逸らしながら呟く。


《まてえええええ、それ絶対にまちがってるだろおおおおおお!!》


筒の中が光に満たされていく、ちょっと待って、嫌な予感しかしないんですけどおおおお!


「おおっ爺、成功したのじゃー転生するのじゃー」


「え?えええ?」


おい梟、なぜ疑問系だあああああ!……ああ、意識が薄れていく……


俺の意識は混濁し何かと混ざり合う感覚が全身を支配していく、そして


ポンッという音と共に俺は転生を果たした。


まん丸で、ぷよよんと震える四十センチほどの、日本茶のような色のゼリー状の物体に。


そう、あれだあれ、スライムに……


《「「ええええええええ!!」」》


「なっなぜスライムなんぞになるのじゃー」


《呪文をおもいっきり間違ってただろうがああああああ!》


「あっありえんのじゃ、ダークナイトがスライムに……」


呆然とたたずむマリア、だが被害で言えば俺のほうが大きいわ!


「まっまだですじゃ姫様、たとえスライムといえど素体はダークナイト殿の体、もしかすればスーパー強いスライムかも知れませんの」


「そっそうなのじゃー【ステータスが見えるんルーペ】を持ってくるのじゃー」


「姫様ーこちらでございまするー」


一人と一羽がルーペを覗き込む。


--------------------

【グリーンスライム(弱)】

【Lv1】

【HP:5】

【MP:6】

【攻撃力:3】

【防御力:4】

【魔法力:1】

【必要経験値3EXP】

--------------------

種族スキル

【捕食】

ユニークスキル

【速書き術Lv1】

【ペン習字】

--------------------


「「弱っ」」


《えっ、なに?弱いのおれ?》


「これが普通のグリーンスライムのデーターですね」


ベアーチェさんが一枚の羊皮紙を見せてくれる


--------------------

【グリーンスライム】

【Lv1】

【HP:10】

【MP:0】

【攻撃力7】

【防御力8】

【魔法力0】

【必要経験値10EXP】

--------------------

種族スキル

【捕食】

--------------------


《弱っ、普通のスライムにすら勝てないじゃないか、名前の横に(弱)て付いてるよ!》


「ふっふえっふぇぇぇぇ」


目に涙を一杯に溜めて今にもなきそうなマリア。


「ひっ姫様、まだですぞー、ユニークスキルが2つもありますぞー!」


「ぐしゅ、本当じゃ、見たことも無いスキルが2つ在るのじゃ」


「シュン殿、これはどんなスキルなのですかの、恐らく異世界のスキルだと思われますぞ」


《えーと【速書き術】は字が速く書けて、【ペン習字】は字が綺麗に書けます……》


「……戦闘の役には立ちませんの……」


「ひぐうううう、えぐううううう」


ああっだめだ、もう崩壊が目の前だ。


《まだだっ諦めるな俺のためにも!普通のスライムにはないMPと魔法力があるぞ、魔法が使えれば少しは有利になるんじゃないのか?》


「おおっそうですじゃ、MPを消費する代わりに魔法は威力が高いですぞ、希望がみえましたの姫様」


「本当?」


うんうんと頷く梟とスライム(ぷよよんと動く)


「スライムには発声器官がありませんから、魔法は使えませんね」


ほんの少しの希望に止めを刺すメイド。


「びえええええぇぇぇぇぇぇ、びえええぇぇぇぇぇぇ」


ああ、とうとう崩壊しちゃったよ。なんで嬉しそうなのこのメイド!


《なっ泣くなマリア、どちらかと言うと俺が泣きたいぐらいだが、とりあえず泣き止め、な?》


「わらわはこんなゴミを召還した覚えはないのじゃー、びええええぇぇぇぇぇ」


《ゴミ言うな!》


「初めての従者だったのにぃぃ、こんなのいらないのじゃー、びえええぇぇぇぇ」


《泣きたいのは俺のほうだよ、ダークナイトからスライムってどれだけ落差あるんだよ》


「汚物(死体)からゴミ(スライム弱)に転生お疲れ様です」


《いやああああああああああああああああ》


こうして俺は異世界に召還され、転生し、スライム(弱)になったのだった。

最弱のスライムの中ですら(弱)な主人公、皆さん応援してやってください。

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