マリア+リッジ=喧嘩中?
夢を見ていると気づいた、五年前の別れの場面。裏切り者と言われたあの日。
あたいは五年前自分を慕う妹分より一族を選んだ。あたいたちの一族は一番強いものが長となり全てを決める。
それは、一族を守り繁栄させるために昔から行われてきたあたいたちの伝統と誇りだ。
長がこの場から離れると決めたのなら、一族の物はそれに従わなければいけない。例えそれが妹分をマリアを裏切る事になっても。
でもそれは、自分の心を守る為の言い訳だったのかもしれない。
「……朝か」
最悪な目覚めだちくしょー、素っ裸でベッドの上に胡坐をかき赤い髪を掻き毟る。
そのまま立ち上がり、服を着る。鍛え抜かれた体は引き締まっていて、無駄な肉が着いていない分スラリとした野性的な美しさがあった。
「んー?なんだか騒がしいな」
ホットパンツに赤いブーツ、胸に革ベルトを巻いていつもの出で立ちになる。
「リッジ、起きてる?」
十年近くの付き合いになる友人が起こしに来てくれた。今日は嫌な夢でいつもより速く起きちまった。
「ミフィー起きてるよ」
「あら、珍しい。明日はスライムが降ってくるわね」
滅茶苦茶言いやがる。
「降るわけねーだろ!」
「ふふふっ、そうそう、シュン君帰ってきたみたいよ?」
んー?だれだっけ……あぁ、あのワンコか。
「そういやそろそろ三ヶ月だっけ」
とりあえず外で待たすのも悪い、あたいは部屋をでてミフィーと合流する。
「ふふふっ、おはよう」
「ああ、おはようさん」
相変わらずでけーな……くそっ、あのワンコのことを思い出したら急にミフィーの胸が気になってきた。
「どうやらエントランスホールに皆居るみたいよ」
「なら行ってみるか」
二人揃ってエントランスホールに着くと、なにやら見知らぬ少女とマリアが狼らしき者を引っ張り合っている。なにしてんだか。
「おっ、お前もしかしてシュンか?」
あたいの言葉に反応して狼が顔をみてから視線が胸に落ちる……この野朗。
「……狼鍋ってのも食ってみたいもんだ」
あたいがそういうとキャインキャイン鳴き出した。
一度しっかり躾けないといけねーな。
「それではマナナは私に着いて来なさい。ミフィー、そこの有翼人に医療室のある場所を教えてあげてください」
「はっはい~」
「分かったわ、えーと名前を教えて貰っていいかしら、私はミフィーア・エプソよ」
「これはどうもご丁寧に、回復系万能美少女ミカエラちゃんです。どうぞよしなに」
「ふふふっ、変わった子ね。それじゃぁついてきて」
いや、変わった子で終わるなよミフィー……
ベアーチェは黒髪のすこしトロそうな少女とどこかに移動し、ミフィーとミカエラ? も医術室へ行く。
そうすると必然的に残るのはあたいとシュンとマリアだけ……
《久しぶりだなーていっても会ったのってたった一時間ぐらいだったよな》
シュンが話しかけてくれてどこかほっとしている自分にイラつく。
「ああ、そうだな」
ついぶっきらぼうに返事をしてしまった。
《改めて、シュン・ハットリだよろしく。ちゃんと魔狼になって帰ってきたぞ》
あ……確かに、魔狼にしてはすこし小さいが始めてあった時は子犬だった。
「ああ、リッジ・レザーだよろしくな。しかし、まじで魔狼になれたんだな、三ヶ月じゃ無理だと思ったんだが」
「ふんっ、シュンはわらわの従者なのじゃ、これぐらい晩飯前のちょちょいのちょいなのじゃっ!」
それは凄いのか?
《なんで晩飯前なんだよ、なんだかぎりぎりじゃねーかそれ》
「にょわ~~すっ少しまちがえただけなのじゃー」
「姫様ーファイトですぞー」
《やっぱ三ヶ月じゃへっぽこは直らないか》
「むきぃぃぃぃぃ、へっぽこいうでないわ」
何故だか見ているのが辛い。
「……あたいはもういくぜ」
そういって食堂に向かう、くそっ面白くねー、なんでマリアは……
◆ ◆ ◆ ◆
《んー何か俺わるいことしたかなー、してたな胸関係で》
「ふんっ、あやつのことなどどうでもいいのじゃ!」
《なんだよマリア、もしかしてまだ仲直りしてないのか?》
「別にいいのじゃ、シュンもこうして帰ってきてくれたしのー」
そういってギュッと抱きついてくる。今まではマリアのほうが圧倒的に大きかったが、今では大体同じぐらいの大きさになった。
「もっふもふなのじゃー」
《あーもうすりすりするな、くすぐったい》
「しかしシュン殿たった三ヶ月で魔狼になれるとは、へタレは卒業したのですかのー」
《おうよ、もう誰にもへタレなんていわせないぜ!》
「むう……へタレでないシュンなんぞ、本物のシュンではないのじゃー」
なに無茶苦茶いうのこの子は。
「ですのー」
おい梟。
《ふぅ……お前らには想像もつかない修羅場を俺は潜り抜けてきたんだぜ?ふふったとえベアーチェさんが相手でも俺はもう恐れない!》
あ……なんかいまフラグが立ったような【第六感】がびんびん警報ならしてる……
「ふむ……あまり調子に乗らないほうが身のためですよ?犬」
いつの間にか後ろに恐怖が立っていた。
《いえっ……あの、俺狼に……》
「ブリーフィングルームで今後の予定をきめます、姫様と犬も移動してください。分かりましたね?犬」
《イエス・マム》
俺は器用に後ろ足だけで立ち上がり前足で敬礼をする。
「へタレなのじゃ」
「へたれですのー」
うっせー、怖いもんは怖いんだよ。
◆ ◆ ◆ ◆
ブリーフィングルームにはメイド服を着たマナナ以外まだ来ていないようだ。
《おおぉ……マナナ似合ってるぞー》
「えへへ~そうかな~」
純朴系美少女たるマナナが、少したけの短いメイド服に着替えていた。
黒い髪に黒い瞳がグレー系の服、白いエプロンドレスに白いカチューシャがよく似合っていた。
「むむむむむっ、わっわらわもメイド服を着るのじゃー」
「姫様ーそれはなりませんぞー、主たる物が従者の衣装を着てはなりませんぞー」
《ほーれー、あほなこと言ってないで速く座れよー》
ブリーフィングルームは四つのテーブルに十六の椅子が置いてある。
椅子とテーブルの置き方が酒場を連想させるな。
「そしてここがブリーフィングルームよ、あら? みんなそろっている?」
ミフィーにつれられてミカエラもここに来た。
「まだリッジが来てません」
「別にいなくてもいいのじゃ……」
うーん、なんだか三ヶ月たってよけい拗れてないか?
「仕方ないわね、少し探してくるわ」
◆ ◆ ◆ ◆
城の中庭で訓練用の木偶人形を殴りつける。技も何もないただ力任せに拳をぶつけているだけ。
「らぁっ!」
派手な音を立てて木偶人形が真っ二つに叩き折れる。
「はぁはぁはぁ……くそっ」
「ふぅ、こんな所に居たのねリッジ」
またミフィーに見られたくない所をみられた。
「なんだよ……」
「もう皆ブリーフィングルームに集まってるわよ? 来週からタクティクスでしょ?」
「いきたくねー」
あたいはついわがままを言ってしまう。ミフィー……十年前会った姿と今も同じ、あたいの友人であり姉貴のような存在。つい甘えてしまう。
「わがまま言わないの。リッジの気持ちも少しは分かるけど、そんな事じゃマリアちゃんと仲直りなんてできないわよ?」
「だって、マリアの奴が全然話を聞かないから」
「とにかく、今はブリーフィングルームに行く事、いいわね?」
「分かったよ……」
しぶしぶと、だけどどこかほっとした気持ちでミフィーの後ろに付いて行く。
仲直り……か。
◆ ◆ ◆ ◆
ミフィーがリッジをつれて帰ってきた。これで全員揃った。
「それでは、来週から始まるタクティクスのことですが」
うぅぅ、とうとうやっとだな、三ヶ月の苦しい修行をへてここまできた。
「私たちが今回参加するタクティクスはポルトランから十キロほど離れた所にある特設フィールドに決まりました。本当ならば後三人ほど簡易契約で雇った者で行く手はずでしたが、犬の帰還、それについてきた二人に参加してもらうことにします」
「むぅぅぅぅ、ゾンビ娘は敵なのじゃー」
「姫様ー、ここは我慢ですぞー」
マリアも結構しつこいなー。
「そこで三日後にあるバトルコロシアムに二人は姫様と組み特別マッチにでて貰います。そこで勝利できなければ当初の予定通り簡易契約により助っ人で参加ということにします」
あーそうだな、先ず資格を取らなきゃいけないか。
「二人とも宜しいですね?」
「はっはい~」「分かりました」
むぅ、ミカエラの奴大人しいな。本能でベアーチェさんに逆らうのは不味いと気づいたか、なかなかやるな。
「それでは今日の所はこれで解散とします」
《三人ともがんばれよ》
「むぅぅぅ、ゲームは別なのじゃ。負けんのじゃー」
「わんちゃんみててね~」
「ぼちぼちと頑張りますよ」
先ずは二人の資格取りからだな。
少しのんびりと進んでいきます。




