狼+帰還=名前
気がつくと俺は包帯でぐるぐる巻きになっていた。
体を起こそうとしたら酷い鈍痛がする……あれ?なんで俺全身打撲みたいになってんの?
「おや?起きましたかシュンさん。丸一日も起きなかったので心配しましたよ?少しだけ」
丸一日も寝ていたのか、後少しって……もうミカエラにはあまり期待はしない。
《この包帯はミカエラがしてくれたのか?》
「ええ、酷い怪我だったので回復魔法を使ったのですが、あまりにも範囲が広く逆に酷い事に」
《ちょっと待って、【ヒールアタック】何回したの!》
「……九回ほどしかしてませんよ?」
《殺すきか!》
「まぁまぁ、生きていたのですからいいじゃありませんか」
くそっ、ミカエラと一緒に居るほうが生傷が耐えない気がするのは何故だ。
《あっ……マナナは?ネクロマンサーはどうなった?》
「さあ?私が来たときには影形すらありませんでしたよ?」
《そうか……それでマナナは?》
「少し離れた場所で坐っていますね、何か落ち込んでいるようですが」
……最後に見たあの姿はいったいなんだったんだろう。
《俺行ってくるよ》
何とか痛む体を起こして歩いていく。
少し歩くとマナナが膝を引き寄せて三角坐りで腰を地面に下ろしていた。
《マナナ》
俺の声に顔を上げる、今にも泣きそうな表情で何か言いたくて、でも言うのが怖い。そんな顔をしていた。
「わんちゃん……マナナ思い出しちゃった……村の人達がなんでゾンビになったのか」
今まで見た事がない、疲れたきった顔をしていた。
「マナナが望んだの、村の人も両親も、皆壊れてしまえって」
《マナナ……》
「ねぇわんちゃん……皆がマナナにしてきた事と、マナナが皆にした事に何か違いがあったのかな」
そんなの俺に分かるわけがない、だから今一番したい事をする。
俺はマナナの頭の上に顔を乗せて、マナナの背中にべったりと引っ付く。
「わんちゃんは暖かいね……」
《んーマナナは冷たいな》
「だってゾンビだもん」
《だなー》
こんな時に気の利いた事が言えないのが情けなくて、俺にできるのは一緒にいてやるくらいしかなかった。
この世界の夜も元の世界と同じで月は一つしかなく、丸い満月が俺とマナナを優しく照らしてくれていた。
◆ ◆ ◆ ◆
ネクロマンサー襲撃から一週間。俺はポルトランの街に着いた。
とうとうここに戻ってこれたのだ。
「ほほーここがシュンさんの地元ですかー。思った以上に何も有りませんねー」
《毎回一言多いな!》
「ここも人がたくさんいるねー」
《魔都キリマンに比べたら田舎だけどなー。とにかく丘の上にある城にいくぞー》
「はーい」「くくくっシュンさんのお部屋をチェックしなければいけませんね」
はぁ……マナナはともかくミカエラを連れて行ってもいいのか不安になるな。
二十分ほど歩いてようやく城の入り口に到着する。
ようやく帰ってこれた……考えれば俺は、餌にされそうになり、雪崩に巻き込まれ、尻を齧り取られ、巨大蛇の囮になり、炎帝の娘に殺されかけ……ようやくかえってこれたよおおぉぉぉぉ。
おかしいな、涙が止まらない。
《皆ー俺帰ってきたよー、俺だよ俺俺。俺帰ってきぶべら》「五月蝿いですね」
メイドがいつの間にか現れて地面に叩きつけられる。
「わっわんちゃん」
マナナが助け起こしてくれる。俺の味方はマナナだけじゃね?
「……ゾンビ……ですか?それに有翼人?」
ベアーチェさんがマナナとミカエラを不振な目で見る。
「どうもー回復系万能美少女ミカエラちゃんです。医術の心得がありますよー」
「あう……マナナ・カプスです、ぞっゾンビです」
自己アピールをするミカエラに釣られてマナナも名前を言う。
「どういう経緯でつれてきたのかは後で聞きましょう。よく戻ってきましたねシュン、ご苦労様でした」
うぉぉぉぉぉぉっ、べっベアーチェさんが俺の名前を言ったよ。何でだろうたったそれだけなのに今までの苦労が報われた気がするのは。
俺が感動をしているとエントランスホールにばたばたと走ってくる音が聞こえる。
「にょわーシュンー!帰ってきているのじゃー。うおぉぉぉぉ、大きいもっふもふになってかえってきたのじゃー」
「姫様ーようございましたー、爺も嬉しゅうございますぞー」
ツインテールにした煌めく銀髪をなびかせ、瞳をキラキラと光らせて飛びついてくる。
「ぐしゅっ、久しぶりなのじゃー」
俺をギュッと抱きしめた瞬間。
「だめーー!」
といってマナナがマリアを突き飛ばす。
「にょわ~~」
力は多少弱めたのだろう、ゴロゴロと転がるだけで済んだ。
「なっなにをするのじゃー。わらわはシュンの主なのじゃ!ギュッとしてもいいのじゃー」
「だめーー、わんちゃんはマナナのーー」
なっなんだこれは、もしかして俺って今モテ期?……なんでだろうあんまり嬉しくないのは。
マリア……従者として、マナナ……餌として。速く人型になりたいぃぃぃぃ。
「むきぃぃぃぃぃ、せっせっかくシュンとの再会なのにーー!それならばシュンに聞くのじゃ!その小娘とわらわのどっちにギュッとされたいのじゃ?」
小娘が他人を小娘呼ばわりするなよ……マリアとマナナどっちがいいかだって?
俺の頭の中で漫画の比喩でよく使われる煙が湧き出て中から天秤が出てくる。
一つのさらにマリアの顔の描かれたボールを、もう一つにマナナの顔が描かれたボールが落ちる。
ガシャンと皿の上に同時に落ちた瞬間マリアのボールが飛んでいった。
おっおーい、マリアっ何処に行くんだ。ああ……マリアが星になっちまった……
「ほれ、シュンどっちがいいのじゃ?くふふ、早くいうのじゃ」
マナナとリサにはなんだかんだといって助けられてるからなー。マリアは……言わずもがな。
「おっ同じぐらいかなー……」
「なっなんじゃと!」
ショックを受けた顔をしている。正直に言わなくて良かったな。
「むむむむむ」「むぅぅぅぅぅぅ」
にらみ合うマリアとマナナ。
「姫様そこまでにしてください」
「じゃがなっ!」
ガシッ、メキメキメキ。
「話が進みません」
「痛い痛い痛いのじゃ、わかったからアイアンクローはやめるのじゃー」
相変わらずだなー。
「まず二人に聞きますが、貴方達はバトルゲームにでるつもりは有りますか?」
「え……わっわんちゃんと一緒にいられるなら……」
「私は出たいですね、そのつもりでこちらに来ましたし」
ミカエラってそういうつもりだったんだ?
「そうですか、ミカエラは医術の心得があるのでしたら治療室を好きに使って構いません」
「よろしくお願いします」
「あとマナナでしたか、ゲーム以外にもそうですね、貴方はメイドとして働いて貰いましょう」
「うにょ~~駄目なのじゃーこのゾンビ娘は駄目なのじゃー」
《マリア、そういうなよ。マナナのおかげで俺は魔狼にまでなれたんだよ》
「わんちゃん……」
むきぃぃぃぃぃと地団駄を踏むマリア。
「おっ、お前もしかしてシュンか?」
エントランスホールからリッジが降りてくる、相変わらずないな……
「……狼鍋ってのも食ってみたい所だ」
《すいませんでしたあああああ、というかなんで分かるんですかね!?》
「シュン君って雰囲気でなに考えてるか分かりやすいから」
おおっミフィー相変わらず大きい……
「にぎやかな所ですねー」
マリアとマナナが睨みあい、梟が五月蝿く飛び回る。
ベアーチェさんは相変わらず怖くて、リッジは感が鋭くミフィーには癒される。
ミカエラは未だよく分からない。
でも、俺の今の居場所だ。
さあ、次はゲームに殴りこみだ。このまま何処までも昇ってやる!
なんとかここまで帰ってこれました。
次はゲーム……にいければいいな~




