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マナナ+人柱=忌み子

リサが白い骨でできた鎖に囚われて身動きができないようだ。


そして、髪の色が黒になりマナナに戻ってしまう。リサ意識が眠ってしまった。


まだ限界が来るのには少し早い、それだけ激しく動いたという事だろう。


目の前にはネクロマンサーがいる。ボロボロになったローブの下からは、怨念と執念を繋ぎ合わせて作り出した不気味なオブジェのような骨の体が現れる。


『ふむ……外気に触れるのは百年ぶりかな? ところで、君はもしや元子犬なのかい?』


なんなんだこいつは、不気味で得体の知れないどろりとした黒い圧力がじわりと這い寄ってくる。


ちらりとマナナを見る、目を瞑り身じろぎ一つしない。完全に気を失ってるようだ。


『進化したという事か、面白い……始めてあった時はフレイムドッグだったはず。それなのにもう魔狼にまで進化するとは異様な速さだ。ぜひその細胞を私の作品に移植したい』


《ふざけるなっ、マナナはお前に渡さない。お前はここで倒す!》


四脚に力を込め、戦闘態勢を取りネクロマンサーを威嚇する。


『カカカカカカッ、君では無理だ。何も守れず、苦しみぬいて死ぬがいい』


ネクロマンサーの手から黒い不気味な魔力がいくつも放たれる。魔法じゃない、ただ魔力の塊をそのまま投げ放つ。


速い!俺は右に左にと避ける、黒い魔力が地面に弾け辺りに生えていた草を腐らしていく。


ゾッとする、当たれば俺の体もそこから腐るのかもしれない。


このままじゃぁいずれ摑まる。どう見ても魔法系統の敵だ、だったら接近戦に活路を見つけるだけだ!


【マジックソード】【クイックアップ】【身体能力アップLv2】


出し惜しみはしない、全力だ!


まるで暴風のような速さでネクロマンサーの懐に滑り込む。魔力の凶刃を振り払う!


【シールド】


金属と金属がぶつかり合う耳障りな音を響かせ魔力の剣が弾かれる。


簡単にいくとは思っていない、俺はネクロマンサーの周りを走り回りながら攻撃を途切れさせない。


ゾンビやスケルトンが合間に襲ってくるが、疾風の凶刃と化した今の俺にゾンビやスケルトンでは近づくだけでバラバラになる。


『カカカカカッ、魔法を使える魔狼はここまで強くなるのですね。なかなか興味深い、君も私の作品にしてあげましょう』


【イービルミスト】


ネクロマンサーが魔法を唱える。黒いドロリとした霧があたりに立ち込めてくる。


《くそっ、なんだこれは》


あたり一面に広がる黒い霧を避けきる事ができない。


全身に黒い霧を被り、激痛が体を支配する。


《がぁぁぁあああああ》


『カカカカカッ、速いだけでは私には何の脅威にもならないということです』


【スポイルショック】


いくつもの黒い衝撃が俺の体を打ちのめし、傷口が膿み腐りだす。


《ぎぃぃぃいいいい》


痛みで悲鳴が漏れる。くそっ何か、何か手はないのかっ!


【アースランス】


いくつ物土でできた槍が地面から俺を跳ね飛ばす。


マナナの直ぐそばまで吹き飛ばされた。強い……まったく歯が立たない。


起き上がろうともがくが、体が言う事を利かない。


【ウィンドカッター】


風の刃が全身を切り刻む。意識が薄れる……俺はここまでなのか?


ブチブチブチブチ!


何かを引きちぎる音と共に恐ろしい咆哮があたりに鳴り響く。


『GIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』


マナナ……?そこにいるはずのマナナだった物が、雄たけびを上げてネクロマンサーに突撃した。




        ◆ ◆ ◆ ◆




骨の鎖に繋がれ、薬で体の自由を奪われた。リサも意識を失い体の奥で眠っている。


そして、わんちゃんがネクロマンサーに今殺されようとしている。


いやだ、やめてっ!その子は私に初めて優しい言葉をかけてくれたの、殺さないで!




マナナ・カプスは生まれたときから忌み子だった。


人属領と魔属領の境界に近いモカの森周辺にある人口百人にも満たない名もない村で生を受けた。


何も無い小さな村だからこそ、少しの異分子も許さない閉鎖的なところだ。


黒い髪に黒い瞳。黒は不吉の象徴としていい伝われ、悪魔の子として扱われる。


十六歳の誕生日に村の災厄を一手に引き受ける人柱、生きる意味はそれだけだと言われ育てられた。


村の大人からは煙たがれ、子供にはイジメの対象とされ、親からは虐待と何故生まれたのだと罵倒される日々。


体には無数の傷、とくに背中は何度も何度もうけた虐待の後が刻み込まれた。


日々腐りゆく精神……


そして十六歳の誕生日、村の大人に引きずられ一本の木にくくりつけられる。下には燃えやすい藁に手には松明を持っている。


火に焼く事で悪い物を浄化するらしい、全てを諦めきった私を皆が笑いながら火をつける。


これで村は安泰だと、いなくなって清々すると……


そのとき悪魔の囁き声が聞こえた。


『娘よ、愚かな娘よ。目の前の人間が憎いか? 虐待し生きる事さえ許さぬ親が恨めしくはないか? 求めよ痛みを、求めよ死を、求めよ破壊を。お前の体を差し出すがいい、さすれば全てを破壊しよう。』


何を言っているのか分からない、分かった事は目の前で笑っている村の人間が、両親が死ぬという事。


私は悪魔の囁きに頷いた、壊してと。


村の人間が次々と死んでいく、苦しみながら。私を苛めた子供も、生贄として育てた大人も、両親も皆。


私が、悪魔を招きいれたのだ、確かに私は災厄の子だ。


私は村人達が死んでいくのを笑いながら見つめ、そして、心が二つに壊れた。


凶暴で、大雑把。だけど私を守ってくれる理想の友人……リサ。


壊れた心を継ぎ足して、何とか自我を残す事ができた……マナナ。


生きたままモンスターの細胞を埋め込まれ、激痛の中少しずつ秘術でゾンビにされていく。


壊れていたからこそ耐え切れた、そして、リサが隙を見て逃げ出す事に成功する。


直ぐ外に飛ぶ魔法陣によって外にでる、見覚えのあるゾンビ達が蠢いていた。


村の人たちだ、壊れた心には憎しみも何もなく、ただ寂しいという感情しか湧き出なかった。


私が泣いていると一匹の子犬が現れた、喋る子犬。とても可愛らしくゾンビとしての本能が刺激されるおいしそうな子犬。


その子犬はとても優しかった。どうしたんだと、大丈夫かと。


私が泣き止むまでそばにいて慰めてくれる。初めて聞いた優しい言葉、温かく私の隙間だらけな心を満たしてくれる。


私の優しいわんちゃん……私のわんちゃんが殺されてしまう!


<ドクン>


体の奥から鼓動が聞こえる。


<ドクン>   <ドクン>


私の中にある何かが、私の感情と繋がって暴れだす!


【キメラ細胞活性化(地竜)】発動


私の全身が膨れ上がり、一つの形を作り出す。戒めの鎖を引きちぎり吼える!


『GIGAAAAAAAAAAAAAAAA!!』




        ◆ ◆ ◆ ◆




あれは、マナナなのか?全身を土色の鱗で多い手には鋭利な刃物を思わせる鋭い爪、倍ほどにも膨れ上がった体を支える強靭で分厚い脚。


顔の見た目は変わらないが、口にはぎざぎざにとがった鮫のような歯が並んでいた。


極めつけは長くて太い尻尾、まるで人とトカゲ……いや、竜を掛け合わせたような姿だった。


『カカカカカッカカカカカカカ! やはりっ私の仮説は正しかった! 死した肉体であっても、精神さえ生き延びれば細胞の活性化は可能なのだ! しかも、活性化させたのは地竜の細胞か! カカカカカッ素晴らしいぞ!!』


『GOAAAAAAAAAAA!】


一声叫び、ネクロマンサーに突撃するマナナ(地竜)そのスピードと破壊力はアポロス並だ!


叩きつけられた地面が爆砕し周辺を巻き込んで吹き飛ばす。


爆風に吹き飛ばされ二十メートルは転がる。なんとか顔を上げたときマナナは凄まじい勢いでネクロマンサーを叩き潰していた。


一撃振り下ろされるたびに轟音が響き大地が爆ぜる。何度も何度も叩きつけ地面がクレーター状にすり潰れた。


そして、終わりは唐突にきた。まるでエネルギー切れを起こしたかのようにぱたりと倒れる。


いつの間にか見た目も、普通の少女、つまりマナナに戻っている。


ネクロマンサーは倒せたのか? もう意識が持たない、あれだけの破壊だネクロマンサーもただではすまないはず。


限界が来た俺の意識は、暗闇へと落ちていく。




        ◆ ◆ ◆ ◆




マナナによってできたクレーターから、ネクロマンサーが起き上がる。


『カカカカカッ素晴らしい破壊力だ、もし魔力を乗せた攻撃だったら一撃で消滅させられる所だ……さて、活動時間は約五分といった所か、意識もほぼなくしていた。次はこの欠点をどうやって無くすかという所か』


ネクロマンサーが倒れているマナナとシュンを念動で持ち上げ運ぼうとした時、東の方角から大量の光が溢れ出る。


『あそこは……確かもう一人の有翼人らしき者を追い込んだ場所のはず。なにがあった?』


「いえいえ、たいした事はしてませんよ?少し数が多すぎたので一気に殲滅させて貰いました」


真後ろから声がかかる。そこにはボロボロになった服を纏った無傷の(・・・)ミカエラが立っていた。


あそこからここまでの距離をどうやって渡ってきた。


『貴様……何者だ?』


「さて、何者でしょう。私としては回復系万能美少女ミカエラちゃんで通したいのですが」


『ふざけた事を……』


「そういう貴方の正体はリッチであってますか?」


lich リッチ、魔術を極めた魔道士がさらに力を求めて、自身をアンデット化した存在。


ミカエラの持つ本から光の波動が漏れ出てくる。


『………』


「その二人を持っていかれますと困るのでおいていって貰えませんかね」


『光の魔法か……本当に存在するとは思ってもいなかった……』


睨み合うミカエラとリッチ。


「そのお二人にはこれからがんばって貰う予定なので、邪魔をするなら消えてもらいます」


そういうミカエラの持つ本から自身に致命的なものがあると確信する。


『どうやら相性が悪すぎるようだ……私は諦めんよ、そう伝えていてくれたまえ』


「お断りします、めんどくさい」


苦々しい気配を漂わせて蜃気楼のように歪み消えていく。


「……ふぅ……行ってくれましたか、流石にリッチとなんて真正面からやり合いたくありません」


傷ついたシュンのそばに腰を下ろす。


「さて、先ずはシュンさんの治療をしますか、しかし、リッチなんて大物にも狙われているだなんて相変わらず物凄く運がないですねー」


ニヤニヤと笑いながら、先に服を着替えそれから治療に入る。


肉を打つ打撃音と悲鳴が平原に響き渡る。長い夜が明けようとしていた。


        

マナナの過去とキメラ細胞の活性化、そしてリッチとミカエラ。


どうなるのでしょう……風呂敷を広げすぎたかもしれません……

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