スケルトン+ゾンビ=ネクロマンサー
リサ、ミカエラから引き離されてさらに二十体ほどのスケルトンに囲まれる。
《くそっ一体一体は弱いのに、ここまで集まるとどうにもならないぞ》
【マジックソード】
魔力の剣を生み出しそばにいる骨を叩き切る。
スケルトンの動きはそれほど速くなく、また大昔の死体らしく骨も脆い。
だけど、三体倒す間に四体増える。数は減るどころか増える一方だ。
《くそっくそっ、どうにか……どうにかっ》
すでに何体倒したか分からない、二十? 三十? どんどんと増え続けるスケルトンに押し流されて、リサに近づくどころか離される。
覚悟を決め、一気に突破を図る。魔力の剣を振り回し突進する。
一斉に振り下ろされるスケルトンたちの武器。錆びたり折れたりしていても子犬の体では一撃で吹き飛ばされる。
この小さな体じゃだめだ、もっと大きく力強い体がほしい。速く、強く、大きい体が!
《うおおおぉぉぉぉぉ!》
さらに三体のスケルトンを切り伏せた時。まるで俺の願いが通じたかのように体に変化が起きる。
黒と白の不思議な光が体を包み込み、そして入ってくる。熱く、力が漲る。進化だ!
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【魔狼(少年)】
【HP280】
【MP350】
【攻撃力170】
【防御力230】
【魔法力102】
【必要経験値3500】
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種族スキル
【捕食】(13)【第六感】
【火炎無効】【耐氷】
【ジャンプ】【ステップ】【身体能力アップLv2】
【火炎力アップ】【氷結力アップ】
【リジェネ(微)】【速度アップ(小)】
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ユニークスキル
【速書き術Lv8】
【ペン習字】
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進化の光が収まり、そこにいたのは全長一・五メートルほどのシべりアン・ハスキーに似た、獰猛な狼の姿があった。
力強い四脚、精悍な体、獰猛な顔。今までとは違い体格もかなり出来上がっている。
力が漲る。これならいける、こいつらを蹴散らしてリサの元に!
俺は吼える!
『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
空気がビリビリと震える、脚に力を込めスケルトンたちに襲い掛かる。
体重の乗った前足の一撃でスケルトンを粉砕する。こいつら如きにもう魔法はいらない。
俺は襲い掛かるスケルトンたちをなぎ倒し、リサの元に走り出した。
◆ ◆ ◆ ◆
ゾンビ鳥たちとミカエラの空中戦は圧倒的な数のゾンビ鳥に襲われ、反撃する事もできず防戦を強いられている。
「くっ、数が多すぎますね。叩き落しても叩き落してもどこからか増えてきます。まるでミスターGのようです」
まだ余裕はあるようだが、体のあちこちに傷を負っている。綺麗な白い翼も所々血で染まっていた。
「二人と随分離されてしまいましたね、さてどうしましょうか」
そう呟いている間にもどんどん数が増えていく。
そして、あたり一面はゾンビ鳥の群れに覆われていた。
「これは……流石に無理です!」
一気に襲い掛かるゾンビ鳥。
【シールド】
ミカエラの周りに不可視の丸い壁が出来上がる。
全力でシールドの維持に力を込める。百近くのゾンビ鳥が潰れるのも構わず突撃し、【シールド】ごとミカエラを地面に叩きつけた。
二十メートル上空から一気に地面に叩きつけられ、さらに地中からゾンビの群れが這い出て【シールド】にへばりつく。
「……っ!!」
【シールド】の持続時間が切れる、それを待っていたように大量のゾンビがミカエラに襲い掛かった。
◆ ◆ ◆ ◆
「おらっ!」
襲い来るスケルトンやゾンビの群れを力任せに粉砕していく。
リサの一撃で二から三体の敵が粉々になる。
「くそー、シュンとミカエラから随分と放されちまった」
蹴りで目の前のゾンビを吹き飛ばし、左右の拳でスケルトンを破壊する。
『いい加減諦めたまえ、お前は私の作品だ。作り主の元に戻るのは自然な事だろう?』
百メートルほど先に緑色のボロボロになったローブを着込んだネクロマンサーがいる。
「ふざけんじゃねぇ、村の奴らをゾンビにしたのはどうでもいいが。あたし達までゾンビにされてはい分かりましたーってついていく馬鹿がいるか!」
『ふむ……困ったね、お前を破壊してもって帰るわけにも行かないし……そうだな、あの犬を使おう。どうもお前はあの犬がお気に入りのようだ』
リサの顔が憤怒に歪む。
「てめぇ……ぶっ殺す!」
周りのスケルトンやゾンビをなぎ倒し、ネクロマンサーに向かって突進していく。
ローブに隠れているネクロマンサーの顔が笑ったように感じた……
急制動をかけて止まろうとする。だが、少し遅かった。
あらかじめ仕掛けられていた魔方陣が発動する。ここまでリサを誘導するのがネクロマンサーの目的だった。
魔方陣から骨でできた鎖がリサに巻きつき、三体のゾンビが針のような物をリサに突き刺す。
感覚がないので分かりづらいが、何か液体のような物が流し込まれている。
鎖から逃れようと、全力で引きちぎろうとするがびくともしない。そうしている間に体に変化が現れてきた。
「あっぎっ……かっかららがふごからい」
さっき体に注がれた液体か!?
ネクロマンサーが笑いながら種明かしをする。
『カカカカカッ動けないか?ゾンビたちを保管し長持ちさせる為の薬を流し込んだ。特殊な薬でね、ゾンビになったものにしか効かなく、ただ腐らせず動けなくするだけの薬だよ』
さらに骨でできた鎖にぐるぐる巻きにされ、まったく身動きができない。
『生きているものには何の効果もない、ただ体に悪いだけの薬だが君には丁度よかったようだ。それでは帰ろうか、研究の続きをしなくてはね』
ネクロマンサーが近づいてくる。このまま摑まればまたあの洞窟に監禁され実験動物のような生活に逆戻りだ。
いやだいやだいやだいやだ、もうあんなところにマナナを戻したくない。体を弄くられてゾンビにされて、苦しくて辛いだけの生だったのに、死んでもまだマナナを苦しめるのか!
誰か……シュン助けて!
リサとしての時間の限界がくる。戦闘行為を行い大量の魔力が消費されリサとしての意識が消えようとしている。
ネクロマンサーがこちらに近づき触れようとしてくる。
そのとき、一匹の狼がネクロマンサーの背後から奇襲をかけた。
『なにっ』
ネクロマンサー自体の運動能力はそれほど高くないみたいだ。ギリギリで避けたが、ローブをばっさりと切り裂かれ、姿を現す。
……人ではなかった、魔族とも違う。それは骨だった、だけどスケルトンとはまったく違うもっと生々しいどろりとした雰囲気を纏わりつかした不気味な何かがそこにいた。
《リサっ大丈夫か!》
……シュンなのか?今までの子犬とは違った獰猛で野生的な力強さが、その狼からは見て取れた。
《俺だ、シュンだ、見た目は大きく変わったけど。どうした?……喋れないのか?》
シュン、すまない……マナナを頼む。
リサとしての意識が……そこで途切れた。
主人公が(子)でなく(少年)になりました。
(子)=8歳前後
(少年)=16~8歳ぐらいです




