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憧れ+目標=強さ

バトルウォーが久々の勝利で終わり、炎魔王軍別邸ではどんちゃん騒ぎの宴会になった。


一番の功労者であるアポロスには、炎帝の息子というブランドとも合わさって、美女美少女に囲まれ顔をだらしなく緩ませている。


ナンナ、チチルア共に怪我のため宴会にはでず部屋で療養をし、ミザリーさんはアポロスのそばを離れないので、必然最後の一人である俺のところに注目が集まるはずだった。


だが、俺の周りに集まったのは、おっぱいソムリエを称える会というむさ苦しい男の集団だけだったのだ!!


『彼こそ漢の中の漢』『魔王と魔王の娘を敵に回しても己を貫く……最高だぜ』『おっぱいソムリエバンザーイ』


今回の件で俺は炎帝の息子アポロスと友情を結び、魔王レイファーと炎帝の娘フレイアの怒りを買うことになったのだった。


差し引きするとマイナスな気がするが、気のせいということにしておこう。


そして……翌日。




        ◆ ◆ ◆ ◆



「シュン、もう行くんか?」


《ああ、一昨日から逸れた仲間も探さなきゃいけないし。待ってる奴がいるから》


「そうか、お前とならこれからも面ろいことがぎょーさんできると思ったんやがな」


《いつかまた会いに行くよ。今度はゲームで》


ゲームと聞いて少しきょとんとするアポロス、それも仕方が無いゲームで会うということはSクラスに登るということだから。


アポロスはにやりと笑うと楽しそうに俺に言う。


「そやな、まぁ五年ぐらいまでやったらまったる。だからはよー登ってこいよ?」


しゃがんで拳骨を俺の顔の前に出す。


《そこまで待たさないよ》


そういって俺も前足を拳骨にぶつける。


ヘルハウンドの子犬がSクラスまで上がるチームを作るだなんて妄想も甚だしい。


もしかするとアポロスは信じていないのかもしれない、だけど俺は今回の事で大きく変わったことがある。


何故俺がこんなとこに居るの? と最初はそう思った。


でも、いつの間にか俺は最強という頂に登りたいと、誰かの為にじゃなく自分の意思で、魔王たちに近づきたいと思うようになっていたんだ。


アポロスとレイファーの戦い、最後まで見れた訳じゃない。けど、あの場所で受けた衝撃は俺の体の中を駆け巡って価値観をひっくり返すには十分だった。


もしかするとアイドルに憧れるような気持ちだったのかもしれない。


だけど、俺にはその道へと進むことができる可能性がある。進化に転生……だったら登るだけだ、何度落ちたって諦めるまではその道は続いていると信じて。


《「またな」》


アポロスは炎魔王軍の居場所に戻り、俺は旅を続ける為にマナナとミカエラを探しに都市の中央へと歩き出す。


俺は、必ず、登ってみせる!


        ◆ ◆ ◆ ◆



「おや? マナナさん。ほら、来ましたよシュンさんですよ」


これは、ミカエラの声、それにマナナってことは。


「わんちゃーーーーん」


マナナが俺めがけて飛びついてくる。


《ちょっ体格差考えてーー》


マナナに飛びつかれ潰される俺、毎回大なり小なり酷い目にあう。


「うわーーーん、よかったよーーーー」


そういって力いっぱい抱きしめてくるマナナ。気持ちは凄く嬉しいが、せめて力をセーブしてくれ!


《マナナ、ギブギブ、また骨がはずれる!》


「そのときはまた治療して差し上げますよ? なに御代は結構、すでに貰っていますから」


何気にすっきりした装いだな。二人とも基本的に服装は変わっていないが所々が微妙に違う。


《どうしたんだよ、その服》


「勿論買いました、モンスターの部位を売って」


《食料とかは買ったの?》


「ええ買いましたよ」


《なら、そろそろ行こうか 》


「おや?キリマン名物を回ったりするのではなかったですか?」


《今は早く進化して先に進みたいんだ》


「……なるほど、分かりました。それでは都市を出ましょうか。そうそう、シュンさんにはぜひとも魔王レイファーの話を聞きたかったんですよ」


《いいぜ?まぁ……恐怖体験ばっかりだけどな。マナナ、もう行くから放してくれ》


「は~い、えへへ~~わんちゃんと一緒~~」


マナナ、ミカエラと合流して俺は魔都キリマンを出て行く。次に来る時はバトルウォーを制覇する為に来てみせる。



        ◆ ◆ ◆ ◆



それから十日ほど魔都キリマンから南へ旅を続け、俺たちは今ブルマン平原へたどり着いた。


ミカエラの移動速度がほぼ人族と同じなので少し時間が掛ったが、この大平原を抜ければポルトランまではもう目と鼻の先だ。


ブルマン平原は七百年ほど前までは激しい戦争がよく行われていて。一部魔族の亡霊たちがうろつく大変危険な場所になっている。


俺たちは夜は安全な場所を探しキャンプをし、無駄な戦闘は極力起こさないように進む。


そして、平原に入ってから二週間が経った。後もう少しで平原も抜けそうだ。


俺のLvも9まで上がり、魔狼まであと少し。どうやら目的には余裕を持って達成できそうだ。


夜になりキャンプの準備を始める。


食事の用意をしながらミカエラが、うんっと伸びをする。


「んーーもうすこしで平原をぬけますね」


《だなー、この平原はスケルトンやゴーストばっかりで一度も捕食できなかったなー》


「シュンさんは魔都キリマンから少し変わりましたね。なんといいますか欲が出たような気がします」


《む、分かりやすいか?》


「いえ、それでも普通よりは欲が薄いですね」


むむ、俺としてはギラギラした目をしているつもりなのだが。


《んーなんていえばいいのかな、少しでも早く、強くなりたいんだ。前まではこれぐらいでいいよって言う目標を提示されてさ、俺もそこを目指してたんだけど。今はそれじゃぁ駄目なんだ、もっともっと強くなりたくて》


「いいんじゃないでしょうか、この世界の住人は皆さんギラギラとした欲望を持っているのが普通ですよ、異世界から来たシュンさんが今までこの世界になじまなかっただけです」


《え……?今異世界って……》


なぜミカエラがそれを?俺が聞き返そうとしたとき、聞きたくもないあいつの声が聞こえてきた。


『やぁ、お話中失礼するよ』


首筋がゾクリとする、この声は聞き覚えがある。マナナと始めてあった洞窟で聞いた声だ!


だとすればこいつは……


俺とミカエラが戦闘態勢をとる。それまでニコニコと笑っていたマナナが恐怖に顔を歪め体を小さくして震えだす。


《ネクロマンサー!?》


『覚えていてくれたのかい?それは話が早くて助かる。なら、私の目的は分かるね?作品を返して貰いに来た』


《ふざけるな! 誰がそう簡単にマナナを渡すか!》


『ふむ……なら、力ずくで行こうじゃないか』


ネクロマンサーがそう言うと、地面の中からスケルトンがわらわらと湧き出してくる。


「リサ!」


俺の呼びかけにリサが応える。


「大丈夫だシュン、あの糞ネクロマンサーしつこいったらありゃしないな」


リサが戦闘態勢をとる。両手にキリマンの武具屋で買った棘のついた手甲を嵌める。


「シュンさんと一緒に居ると退屈だけはしませんね」


ミカエラが旅袋から一冊の本を取り出す。


《こんな戦場跡の平原にいたらネクロマンサーの思う壺だ、どうにかして突破しよう》


「りょうーかいっと、あたしが先頭を走る一気に行くよ!」


そういってリサがスケルトンの群れに突っ込んでいく。スケルトンたちの攻撃は全て無視して手甲でなぎ倒し道を作る。


そこを通り更に近づくスケルトンをファイヤーで牽制、ミカエラが【ヒールアタック】で骨を浄化していく。


何気に強いな【ヒールアタック】


俺たちは真っぐに平原の出口に向かわず、遠回りをして脱出する。


罠が有った場合の用心だ、だけど、そんな物は全てお見通しのようだ。


前から後ろから左右から、どんどんスケルトンが沸いてくる。


「くそっ無理やり突破するのはむずかしいぜっ」


「私が空から援護します」


そういって翼を羽ばたかせ空を飛ぶミカエラに、数羽の鳥が襲い掛かる。


こんな夜に鳥!?良く見ると足がなかったり、目がもげているような鳥ばかりだ。


「くっゾンビ(ちょう)という所ですか」


あとからあとからゾンビ鳥が現れて、ミカエラを囲み俺たちから遠ざけていく。


《ミカエラ!》


スケルトンの持っている錆びた剣が一斉に振り下ろされる。くそっ俺もだんだんとリサから引き離されていく。


「あーーっうっとおしい!」


必死になって合流しようとするが、敵の数が多すぎる。俺たち三人は見事に分断されたのだった。

流されっぱなしだった主人公が始めて自分で強さを求めだします。


主人公はSクラスまでいけるのでしょうか、どうか応援してやってください。


そしてネクロマンサーが再登場しました……



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