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炎帝+氷結=バトルウォー③

『ゲーム開始からすでに一時間がたっております。戦況は魔王レイファーの圧倒的有利よってここまでゲームが進んできました。しかしっ! 炎の貴公子アポロスがとうとう魔王レイファーを捉えました!! バトルの結果次第ではまだ逆転の可能性は残されております!超上級者同士の戦闘が今始まろうとしております!!』


「おおっ?あの野朗レイファーの奴を捉えたのか! くそっなんて羨ましい。本当なら俺があの無駄にエロい体をくんずほずれずしたかったのによっ! がははははは」


「へー……父さんそんな事考えていたんだ?」


独り言を言っていたつもりだったのに、聞きなれた声が、自分の娘の声が応えた……


「よっようフレイム……あーなんだ?シルヴィアには一つ内緒という事で……」


にっこりと笑うフレイア。


「エルメヌのバッグとオードミーの靴で手を打つよ?」


「ちゃっかりしてやがる。分かった買ってやるから内緒でな?」


「OK~~」


(もうばれてるんだけどね~~私との会話はすべてお母さんに繋がってるから)


続々と召還される炎魔王軍のユニット達、レイファーを抑えているこの状況だと、あと一時間あれば巻き返して逆転できる。


「あとは兄さんがレイファーを抑えきればこちらの勝ちね」


勝負の行方は魔王レイファーVS炎の貴公子アポロスのバトルで決まる。



        ◆ ◆ ◆ ◆



一際大きい建物の前に一人の女性が立っていた。


氷結の魔女、魔王レイファー。身長は百七十センチの豪奢な美女だ、細身の体からは彼女が皆に恐れられる人物とはとても思えない。


だが、実物を見ればその圧倒的な存在感に押しつぶされそうになる。ただ立っているだけ……それだけで俺は息をする事すらままならない。


ググランダも恐ろしい威圧感があった、あの巨体に睨まれれば恐怖で体が竦むだろう。


しかし、魔王レイファーの威圧感は違う、まるで極寒の地で丸裸にされたような心細さと恐怖が襲ってくる。この中で今動ける者は誰もいない、ただ一人を除いて……


「よう、レイファー直接会うのはひさしぶりやな? ちーとあんたに聞きたいことがあるんやがええか?」


まったくなんの気負いもなく、世間話でもするように気軽にレイファーに話しかける。


「あら、なにかしらアポロスの坊や。降伏するならお仕置きをするだけで許してあげるわよ?」


薄く微笑みながら更に威圧感を増すレイファー。


「あんたはいったい何を求めてんのや?半年前まではゲームに出るのすら億劫そうにしてたのに、いきなり汚い手も平気で使い出しゲームの勝利にこだわりだした……今回は闇討ちや毒まで使う始末や、返答次第じゃぁただでは済まさんで?」


いきなりアポロスからレイファーにも負けない威圧感が撒き散らされる。レイファーの氷に対して全てを焼き尽くす炎。


二人から薄っすらと魔力漏れによる青と赤のオーラが噴出す。


「私は全てが欲しい……私より若いものが憎い、力のあるものが妬ましい、美しい物が疎ましい、だったら……全て手に入れればいいと思わない?先ずは魔属領、次に人属領。そして世界全てを手に入れればもう私は何にも嫉妬することはなくなる……そうして初めて私は解放される、この苦痛から」


何を言っているのか分からない、まるで狂人の理屈だ。


「さよか……なにをとち狂ったんかしらんけど、逃げ出したいから全てが欲しいなんちゅう下らん理由で、これ以上お前に好き勝手させる気はわいには無いで!」


アポロスから大量の魔力が焔となり噴出す。


レイファーが手をさっと前に出すと、部下二人が盾となるたべく前にでる。


アポロスとレイファーの存在感が強すぎて、レイファーの後ろに控えていた部下の存在が目に入らなかった。

四人ともおそらくAクラス、別段隠れていたわけじゃない。それほどあの二人が別格すぎる。


「とりあえず逝っとけやああああぁぁぁぁぁ!」


【プロミネンスインパクト】スキル発動  


信じられないほどの魔力がアポロスの右手に集まる! 一瞬で百メートル近く離れていたレイファーたちの目の前に移動し右拳を地面に叩きつけた!


その瞬間、暴れ狂う極限の炎の柱が吹き上がり、まるで一匹の獣が全てをなぎ倒し破壊するがごとく周囲を蹂躙する。


【極寒の障壁】スキル発動


しかし、アポロスの破壊をレイファーは受け止めきった。部下二人がアポロスの攻撃を一瞬防いだ間に氷の壁を作りだす。アポロスの攻撃を受け流した、ただの氷じゃない。


「うふふ、やっぱり貴方も突進馬鹿ね。【氷結捕縛陣】展開。全てを捉え凍りつかせなさい!」


アポロスの真下にあらかじめ構築していた魔方陣が発動する。氷でできた鎖がまるで蛇のような動きでアポロスに巻きついていく。


「ちぃぃ、魔方陣を張り巡らしとったか。どこまでもこすい奴や」


「うふふふ、あははははははは、死になさい!」


【フリージング・コフィン】


高速詠唱でレイファーの魔法が発動する。


アポロスの周りに氷の結晶が舞踊る、それは幻想的でいて死を誘う永久の眠り。


一瞬でアポロスを包み込む氷の棺が出来上がる、五メートルは有りそうな分厚さだ。


《あっアポロス!》


俺の焦った声を、ミザリーさんの忠告がかき消す。


「殿下ならばあれぐらいで死にません、それよりも残りの二人が来ます!」


そうだ、二人の超絶者に気を取られてる場合じゃない。二人をアポロスが倒したが残り二人がこちらに襲い掛かる。


上級氷雪精霊、Aクラス一人とフロストギガンテス、Aクラス一人だ。


「貴方はナンナ、チチルアと強力してフロストギガンテスの相手を。やつは大きすぎて小さい貴方を捕まえきれないはずです」


そう言って振りかぶり投げつけられる。


《別に投げる必要ないよねぇぇぇぇぇぇ》


俺を投げ飛ばしたミザリーに氷のムチが襲い掛かる。素早く反転し同じく炎のムチで氷のムチを叩き落す。


激しいムチとムチの打ち合いが始まる、どちらも同じクラスの精霊だ、氷結の精霊はレイファーの魅了で限界を超える能力で襲い掛かる。


しかし、指揮するはずのレイファーが手が放せない状況ではその能力も空回りしている。冷静にしかし熱い思考で能力の差を埋めるミザリー。


ムチとムチが周りの瓦礫を凍らせ、熱で熔解させながらこの場を離れていく。



        ◆ ◆ ◆ ◆



『ゴアアアアアアアア』


五メートはある巨体から繰り出される鉄斧の一撃、轟音と瓦礫や地面が弾け跳びあたりに撒き散らされる。


俺、ナンナ、チチルアは三方向に別れ三角形を作りフロストギガンテスに遠距離攻撃を仕掛ける。


ナンナとチチルアは炎の魔弓を作り出し、俺はファイヤーを単発で使い的を絞らせない。


こちらも魅了されて能力事態は上がっているが、思考が奪われて効果的な攻撃をしてこない。これなら時間を稼ぐぐらいなら何とかなる。あとはアポロス次第だ。




        ◆ ◆ ◆ ◆



「うふふ、坊やはこれで終わりなのかしら?」


レイファーがそう呟いた時氷の棺から声が響く。


『あほ言うたらあかんで、これぐらいなんともあるかあああああ!』


氷の棺が小刻みに揺れ動きだす、ガラスの割れるような音と共にひびが入り弾けた!


レイファーの拘束から抜け出したアポロス、だが、無事というわけでもない。炎の魔人でもあるアポロスが数秒とはいえ氷に閉じ込められたのだ、大量の熱が魔力として奪われてしまった。


「そう、でも私は煩わしいのは嫌いよ【氷獣召還】私の敵をかみ殺しなさい」


レイファーの召還陣から次々と全長三メートルほどの氷でできた虎のような獣が襲い掛かる。


「わいをあんまり舐めるな!」


アポロスの両手両足から激しい炎が噴出す。


【獄炎武道】死滅の型!


襲い掛かる氷の獣を炎を宿した手足で叩き潰していく。激しく、力強く、死の炎が猛り狂う。


「ちっ、あの炎は駄目ね……」


見た目に反して素早く後ろに跳ぶレイファー、アポロスも逃がすつもりは無い、一気に距離を詰める。


【アイスランス・スコール】


数百といった氷の槍がアポロスを襲う。


「無駄やっ」


振ってくる氷の槍を傷を受けながらも全て無視して突破する。


「なっ」


服が引き裂かれ、全身傷だらけにしながら迫るアポロス。足止めの魔法を無茶な突破で突き破るとは想像すらできなかったレイファーの動きが止まる。


「捉えたでっ、くらっとけやあああ!!」


アポロスの炎の拳がレイファーの腹部に突き刺さる!


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


咄嗟に氷の結界を張り幾分かは威力を殺したが、激しい痛みと熱がレイファーを襲う。


「まだこんなもんやないでっ」


ハイキックからローキック、右拳の打ち降ろし。すかさず左に回りこみもう一度腹部に左フックが突き刺さる。


「止めや!」


アポロスの踵落としがレイファーに決まる寸前、レイファーが仕掛けていた魔方陣が発動する。


「まだこんなもん仕掛けとったんかい!」


十センチほどの氷がアポロスの足元にある魔方陣から激しい勢いで体を殴打していく。


「くそがああああああああ!!」


防御体勢を取り全身を炎で纏身を守る。


数百発にもなる氷の弾丸にさらされて全身から血を流すアポロス、対するはアポロスの猛攻に何とか耐えたという体のレイファー。


どちらも後一度の攻撃が最後だと感じ取る。


レイファーから青い冷気のオーラが立ち昇る。


アポロスから赤い火炎のオーラが吹き荒れる。




        ◆ ◆ ◆ ◆



ミザリーと上級氷結精霊の戦闘も佳境を迎えていた。


舞台は外から建物の中へ、思考が鈍くなっている氷結精霊では遮蔽物を巧みに使うミザリーを捉える事ができない。


ミザリーは部屋の真ん中に氷結精霊を誘い込むと、周りの柱を全て破壊し外に飛び出る。


崩れ落ちる建物の崩壊に巻き込まれ、瓦礫の下敷きになる氷結精霊。


しかし、能力を限界以上に発揮している氷結精霊は瓦礫の下からよろけながらも這い出てくる。


「あのまま気を失えば楽でしたのに」


【クリムゾンウィップ】


ミザリーの炎の鞭がさらに赤くなり高熱を発する。容赦なく振り下ろされる真紅の鞭は氷結精霊を無常に叩きのめす。


『ヒィァァァァァァァァ』


青い光となり、消えていく氷結精霊。


「この一戦のためだけに使い捨てにするだなんて……殿下、必ず勝って下さい」


シュン、ナンナ、チチルアがいる方向へ走り出す。間に合ってくれと願いながら。




        ◆ ◆ ◆ ◆




シュン達とフロストギガンテスの戦いも終わりを迎えていた。


たとえ思考が鈍っていても、圧倒的な力の差から来るプレッシャーは三人を精神から蝕み体力を奪っていく。


一撃食らえば死んでしまう。その圧力から最初に崩れたのはチチルアだった。


瓦礫に足を取られ、後ろに倒れこむ。そこにフロストギガンテスの一撃が振り下ろされた!


「チチルア!」


ナンナの悲痛な叫び声が響く。チチルアは……生きていた、咄嗟に横に転がりなんとか避けたようだ。


しかし、直ぐ近くに落とされた一撃は近くにいただけでも深刻なダメージをチチルアに負わす。


動けなくなった獲物に興味が無いのか、次にナンナが狙われる。動揺しているナンナの動きが鈍い。


《ナンナ、駄目だ今は避けることに集中しろ!》


【フレイムランス】×四


気を引こうとして【フレイムランス】をぶつけるがまったく効いていない。


フロストギガンテスの一撃はナンナをかすめ吹き飛ばす。これで後俺一人か……無理。


せめてここから離れないと!


全力でこの場所から走り出す。動く物を自動で攻撃するかのようにこちらめざし走り出すフロストギガンテス。


《うおおおおおおぉぉぉぉぉ!》


体の大きさが違いすぎる。あれだけ鈍い走り方なのに簡単に追いつかれた。


振り下ろされる一撃、咄嗟に前に跳び間一髪避けるが、凄まじい一撃は瞬の小さな体を吹き飛ばした。




        ◆ ◆ ◆ ◆



レイファーとアポロスはお互いにらみ合い動けない。


レイファーの遠中距離魔法。アポロスの近距離スキル。


どちらも必殺の威力を込める。


レイファーの魔法をアポロスが避ければアポロスの勝ち。レイファーがアポロスを捉えきれればレイファーが勝つだろう。


一瞬の攻防、そこに全てが掛っている。


緊張が最高潮まで高まった時に一匹の子犬が二人の間を通り過ぎる。


レイファーは一瞬気を取られた、アポロスは最後までレイファーの隙を見逃さなかった。


戦闘を得意とするアポロスと搦め手を得意とするレイファーの差がここに出た。


一瞬で間を詰めるアポロス。


苦し紛れに魔法を発動させるレイファー。


【プロミネンスインパクト】スキル発動


【オーロラ・レイ】


レイファーの放つ極寒の光をかすりながら、アポロスの繰り出す太陽の炎が衝撃となって熱と振動をレイファーに叩き込む!


レイファーは五十メートルほど吹き飛ばされ、わずかに残った建造物にぶつかり止る。


そして、ここで勝負が決まった。

  


        ◆ ◆ ◆ ◆



『きまったー!氷結の魔女レイファー対炎の貴公子アポロスのバトルは炎の貴公子アポロスが勝ちましたー!!戦闘時間約十分、数々の超絶スキルと魔法が乱れ飛ぶ激しく熱いバトルでした!』


『『『『『『うわあああああああああああ!!』』』』』』


観客席は狂喜乱舞していた、中には涙を流す者や、興奮しすぎて倒れる者までいた。


そして……


「がははははっ、どら息子のや勝っちまいやがった。時間稼ぎできればいいと思ってたんだがな」


「そうね、さて、兄さんがキチンと仕事をしたんだからちゃんと勝たないとね」


そういってフレイアは周りの者に指示を出していく。


レイファーという指揮官がいなければ能力は上がっても、キチンとした思考ができない烏合の衆にしかすぎない。


残り四十分、炎魔王軍は全てのマジックストーンを制圧し、ここでバトルウォーの勝敗は決した。




        ◆ ◆ ◆ ◆



「あーしんどかった」


そういって地面に座り込むアポロス。


そこにナンナとチチルアの治療をしたミザリーが戻ってくる。


「お疲れ様でした殿下」


「おうミザリー、どうや? きっちり勝ったで、ほれなおしたか?」


「そうですね、少し見直しました」


「なんや少しかい、相変わらずきっついのー」


そう言って顔を見合わせ笑いあう二人。


「あ、そうそう殿下、忘れていました。シュンを知りませんか?こちらに吹き飛ばされた様な気がしたのですが。」


「あ……忘れてた」


慌てて立ち上がり瞬が飛んでいった方に走り出す。


廃墟の壁にめり込み目を回している瞬を発見した。


「おおおお?大丈夫かシュン、ほれ、おきい」


軽く瞬の頬を叩くと薄っすらと目を開ける。どうやら命に別状は無いみたいだ。


《うぅぅ……死ぬ……》


「しっかりせい、勝負はわいらの勝ちやで、ほら起きい」


よろよろと立ち上がる瞬、だが、彼の災難はまだ終わっていなかった。


ゆっくりと地獄の死者、魔王レイファーがよろめきながら近づいてくる。


「なんやレイファー、バトルウォーはわいらの勝ちやで。これに懲りたら卑怯な真似は止めとくんやな!」


アポロスが勝ち誇り、レイファーに言い放つがレイファーは虚ろな目をして瞬を見つめるだけだった。


「ふっふふ犬……そう全てはその犬が悪いの。私の居場所がばれたのも、最後の瞬間気を取られたのも。全てその犬があんな言葉を最初に広めたのが悪いのよ!!」


あれだけ威厳と美しさに溢れていたレイファーが、今瞬を鬼のような形相で睨む一匹の獣になろうとしていた。


《ひぃぃぃぃ、アポロス、逃げて、にーげーてー!》


「わっわかっとる、レイファーのやつ目がいっとるで」


レイファーの周りがどんどん凍りだしていく。その迫力は今までの比じゃない。


「まぁぁぁぁぁてぇぇぇぇぇ!」


《たーすーけーてーーー!》


なんでいっつも俺ばっかりこんなめにー!!




        ◆ ◆ ◆ ◆



―――炎魔王軍控え室入り口


「はぁはぁはぁ、こっここまでくれば流石にレイファーも追ってこれんやろ」


《たっ助かった……》


息も絶え絶えに座り込む二人。


そこに軽快な足音を響かせて一人の少女が現れる。


「兄さんお疲れ様」


「おうフレイアか、お前も後の指揮ごくろうやったな」


「気にしなくていいよ、それよりゲームが始まる前にした約束覚えてる?」


フレイアから獄炎のような怒気が膨れ上がる。


《「あっ」》


「まてまてまてまて、あれはシュンが言った事や、わいは一言も言ってない」


《ぬあーひどいぞアポロス、お前だって涙流しながらうんうん頷いてたじゃないか》


二人の醜い争いを顔だけは穏やかな笑みを浮かべて近づいてくるフレイア。


「そんな事はもうどうだっていいの、どうせもう取り消せないから。だからね?二人だから二で割って一人八割殺しで許してあげる」


《十割を二で割って五割じゃないんですかーーー!》


俺の叫びは聞き入れてもらえず。地獄のショーが幕を開ける。



ようやくバトルウォーが終わりました。


そして死刑執行されました。


南無。

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