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犬+おだてる=餌になる

『ウォォォォォォ』 思い物体が沼を叩く音が響く。


マッドゴーレムの両手による叩きつけを、ステップでかわしペンを走らせる。使う魔法は【マジックソード】。腹黒ヒーラーから教えて貰った魔法。


五十六文字つまり56MPも使う接近戦用の魔法だ。


刃渡り一・五メートルもある長剣が、俺から半径二メートル以内でなら自由に動かせ、持続時間も五分とかなり長い。威力もそこそこあり重くもないのでかなり使い勝手のいい魔法だ。


三匹いるマッドゴーレムの攻撃をジグザグにかわしつつ剣を振り回す、一匹の腕を斬り飛ばし、もう一匹の胴を切り裂く。先ずは一匹。


三匹目の腕の振り回しを避け切れなかった。


ギャン。


一撃で五メートルほど吹き飛ばされる、更に腕を斬り飛ばしたマッドゴーレムが残った腕を振り下ろしてきた。


咄嗟に転がり避けファイヤーを四連発お見舞いする、あたった場所から泥が固まり動きが鈍くなる。すかさずマジックソードの一撃をお見舞いしてこれで二匹め後一匹。


残り一匹なら後は単調な腕の動きを見切って後ろに回りこみ一撃を食らわせて終わりだっ!


マジックソードがマッドゴーレムの核を切り裂く 『ブォォォ・・ォ・・ォォ』 力尽き泥が弾ける。


ふう、これで今日十六匹目だ、できるだけ今日中に進化しておきたい。エスプレッソ山脈でワーボアを二十体ほど一気に倒したのでもう少しで進化できる。


何故今日中に進化したいのか。それは昨日の巨大蛇から逃げ切った後、フロッグマン達に囲まれた時まで遡る。



        ◆ ◆ ◆ ◆



《くそっ、囲まれている。リサはまだいけるか?》


「だめ~、さっきの蛇さんとの追いかけっこで寝ちゃった~」


マナナが目をつぶり、リサと言葉を交わそうとするが限界がきて寝ているらしい。


「くくくっ、これが俗に言う絶体絶命のピンチですね?」


《なんでミカエラはそんなに平気なんだよっ》


明らかに余裕のある態度だ。


「それは彼らから敵意を感じないからですよ」


《え?》


そう言えば囲まれているけど、そこまでいやな感じはしないな。【第六感】もぷすんともしないし。


「そちらの少女の言うとおりだゲロ」


囲いの中から一際ごつくマッチョなフロッグマンが進み出る。マッチョなフロッグマンって……血管が浮いてるし……


《どういうことだ?》


「む、念話と言うことは、そこの子犬が喋っているゲロ?」


俺が返事をする前にミカエラがそうだとばかりに口を挟む。


「ええそうです、この子犬が私たちのリーダーですよ」


ざわざわ……


子犬がリーダーときいてざわめくフロッグマン達。


「静まるゲロ!……失礼したゲロ、私はこの近くの集落に住んでいるフロッグマンの一族を束ねるケロード・ダジンというゲロ。この様に囲んでいながら申し訳ないのだが、我らの集落まで来て貰えないゲロ?」


どうやら俺たちを集落まで連れて行きたいらしい。さて、どうするかな……強行突破できなくもなさそうだけど……


《2人ともいいか?》


「マナナはワンちゃんと一緒に行くよ~」


「ええ、私もかまいませんよ、何かあれば生贄になってくださいね?」


一言多いな!


《あんた達について行くよ、案内してくれ》


「有難い、こっちだついて来てくれゲロ」


囲みは解かれたが遠巻きにしてついてくる。何なんだろう、警戒してるってわけでもなさそうなんだが。



        ◆ ◆ ◆ ◆


《これは……酷い》


俺たちは無残に破壊された集落の跡につれて来られていた。


「お家がボロボロだね~」


マナナの言うとおりだ、何かにひき潰されたように家らしき物が無残な姿をさらしていた。


「これは、土龍にやられたのですかね。巨大な物が引きずった後がありますよ」


ミカエラの言葉に答えたのは、ケロードだ。


「そうだ、これはググランダ……お前たちの言う土龍なる巨大蛇にやられたゲロ」


『ちくしょうケロ』『うぅぅぅぅ』『絶対敵はとるケロ!』


ケロードの言葉に反応して、周りから怨嗟や慟哭が聞こえてくる。


「俺たちフロッグマン一族は数百年をクルタクル沼で生きてきたゲロ。そのうちに何度かググランダの襲撃を受けた事もあるゲロ。それはググランダとて生きていくための捕食だゲロ。」


何かを思い出しているのだろう、怒りにケロードの筋肉が膨張する。


「だがっ、今の奴は違うゲロ!生きるためではなく、食べたいが為に俺たちを蹂躙したゲロ!!」


周りのフロッグマン達にも怒りが伝播していく。


「この半年で、奴に食われたフロッグマンの数は二百名にもなるゲロ。もう限界だゲロ。だから俺たちは奴と戦う道を選んだゲロ!」


『そうだケロ』『ググランダを殺せゲロっ』『子の、親の、仲間の仇討ちだケロッ』


さらにヒートアップしていくフロッグマン達。だけどそれに俺たちが何の関係が?なぜ【第六感】が警報を発しているのだろうか……


「わっわんちゃん~」


「くくくっ面白くなってきましたね?」


マナナが泣きそうな表情で俺を抱き上げ、ミカエラがニタニタと俺を見る。


「本当ならこれは俺たち一族だけで奴と対峙したかったゲロ。だが、一月ほど前に最後の詰めをするための援軍を雇い入れるはずだった弟が、ポルトランの街で誰かに殺されたゲロ」


あれ?なんだか聞き覚えのある街で死んでない?


「旅人たちよ、無茶な頼みだとは分かっているゲロ。しかし、ググランダから見事逃げおおせたその脚力をどうか貸して欲しいゲロ」


そういってフロッグマン全てが地面に額をつけて頼み込んでくる。


『『『『『お願いしますケロッ』』』』』』


……【第六感】役にたたねー……回避できなきゃ意味ないじゃん。


俺たちは一先ず協力する事を承諾し、土龍をどうやって倒すのか聞く事にした。



        ◆ ◆ ◆ ◆



あれから、集落の南1キロ先にある燃える黒い水が沸いているという場所に来ている。


《くっ臭いっ……犬の嗅覚があああああ》


燃える水は日本でいえば石油のような物だった。あの独特な臭さが犬の嗅覚になることで数千倍に感じ取れるんだ。


「この燃える水は大量に使い火をつけると、爆発の魔法にかわるゲロ」


「おやおや、これは珍しい水ですね」


「うわー真っ黒だねー」


《頼む、そこは臭すぎる少し離れてくれ》


俺たちは近くのコケがびっしりと生えた、五メートルほどの岩影で話をする事にした。


《つまり、あの黒い池に土龍を引き寄せて火を放ちたいと》


「そうだゲロ、だがググランダはスキル【第六感】を持っているらしく、普通におびき寄せる事ができないゲロ。餌を追いかけて我を忘れるぐらいでないと」


《そこまで引っ張る餌役を俺たちにしろと?》


押し黙るケロード、はっきり言えば土龍に途中で捕まる危険。黒い水とやらの爆発に巻き込まれる危険がある。


「くくくっやってあげたらいいじゃないですか」


ミカエラが無茶な事を言い出す。


《無理言うなよ、こんな危ない事いくらなんでもリサにだってやらせないぞ?》


「いえいえ、これはシュンさんならやり遂げれますよ?」


《疑問系でいうなよっ! それに俺はリサにスピードで負けるぞ?》


「シュンさんは面白い使い方で魔法が使えますよね? 世界に直接文字を書き込む方法で魔法を使いこなせる犬が居るとは思いもよりませんでした。流石です! 凄すぎます! おそらくその方法でしたらどんな魔法も魔力さえ在れば使いこなせます。まさにアーズマース一の魔法使いになれるといっても過言ではありません!」


突然ミカエラが俺を褒めだした。


《えっそっそうかな~》


ほほが緩んでしまう、こちら(・・・)に着てからへタレだの弱いだのとけなされ続けた俺はこんなみえみえの褒め言葉でもその気になってしまう。でへへ。


「そして、何と私は【クイックアップ】なる魔法を知っていまして。この魔法を使えばシュンさんならリサさよりも速くなれます! この役目はシュンさんにしかできません! いいえシュンさんのためにあるといっても過言ではないのです!」


ミカエラは手振り身振りを使い熱く語る、そこまで……そこまで俺のことを評価してくれているのか!


《俺やるよっ! 土龍をここまでつれてくる囮役、このシュン・ハットリが引き受けた!!》


「おおっ有難いゲロ」


俺の言葉に感激するケロード。


《まかせてくれ、必ずやり遂げてみせる!!》


「わんちゃんがんばれ~」


感激するケロード、ニコニコ笑うマナナ、気勢を上げる瞬、そして……


(いやいやなんとも単純ですねー、これは面白い出会いをしました)


くくくっと笑う腹黒ヒーラー、ミカエラだった。



主人公はマリア以外初めて褒められたのかもしれません。


なんて不憫な子。

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