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敗北+戦力外=旅たち

いきなりだが、今俺は鍋で煮られている。


《すみませんでしたー許してくださいー!!》キャインキャイン


「ははは、真夏に鍋ってのもおつなもんだなーおい」


《マリアーマリアー俺が悪かった、もうお菓子を勝手に食べないから助けてー》キャンキャン


ばたばたとマリアが走り寄って来る。


「にょわわ~、シュンを食べてはだめなのじゃー!」


慌てて鍋から救い出してくれる。マリアがこんなに頼もしく見えるだなんて。


「あ~わりいわりいーついカッとなってな。本当に食べる気はなかった……ぞ?」


《嘘だー食べる気満々だったよっ、【第6感】がギュンギュン警告発していたよっ》ギャンギャン


「うう~シュンはわらわの従者なのじゃ、リッジなんて嫌いなのじゃ!」


そういってもと来た道を走り去っていく。


「あ……」


「ふふふ、嫌いって言われちゃいましたね」


後ろからミルフィーアが声をかけてくる。


「ちっ、見てたのかよ」


「はい、ある程度は覚悟していたでしょ?」


「ああ、だけどああもはっきりと拒絶されるのはきついなー」


「本気で嫌っては居ませんよ、ただどうしていいのか分から無いだけ」


そうかな~と呟き落ち込む。この少女がこんな姿を見せるのは五年ぶりね。


二人とも素直じゃないから、でも時間が解決してくれるでしょう。



        ◆ ◆ ◆ ◆



犬鍋から俺を救い出してから少し。マリアはぶつぶつと呟きつつ自分の部屋へと向かう。


《なーマリア、さっきのリッジさんだっけ?あの子とどういう関係なんだ?》


知り合いみたいだけど仲があまりよくないような?どちらかと言うとマリアが一方的に嫌っている感じだが。


「リッジは裏切り者なのじゃ、お母様が亡くなられた五年前に城から出て行ったのじゃ」


五年前に去って行った部下の一人か~、そんな事するような子に見えなかったけどなー


「とにかくリッジは裏切り者だから要らないのじゃ、わらわにはシュンがおるから平気なのじゃ」


俺とマリアがそう話していると、後ろから声がかかる。


「姫様、そういう訳にもいきません」


真後ろからいきなり声を掛けられ、二人同時にからだがびくりと跳ねる。


「にょわわわっびっくりしたのじゃ。ベアーチェ、後ろからいきなり声を掛けるでないのじゃ」


いやこのメイドさん絶対わざとだよ、だって嬉しそうだもん。


「姫様のこれからの為にもリッジ達の協力は必要不可欠です」


「ふんっ、嫌な物は嫌なのじゃ!」


おおっ何時になく強気だな。


ガシッ、メキメキメキメキ。


メイドクローがマリアの顔にめり込んでいく……あれ痛いんだよなー。


「痛っいたたたたたた、やめっやめるのいたたたたたた」


ひぃぃぃ。マリアの顔面をそのまま持ち上げてるよっ!


「姫様、あまり我侭を言ってはいけません」


「わっ分かったのじゃ、分かったから放すのじゃー」


ぽいっと放り投げられるマリア、本当に主従の関係なのか?


「ひぐっ、顔が潰れるかと思ったのじゃ、ぐしゅっ」


「それでは姫様ブリーフィングルームを食堂の横に作りましたので移動をお願いします。あと犬も」


そう言って歩き去るベアーチェさん。


《おーい、大丈夫かー?》


「どっどうして助けてくれなかったのじゃ」


《いやベアーチェさんに逆らうなんて無理》


「うう~」


それで納得しちゃうんだな……


《とにかく行かないとまたアイアンクローされるぞ》


「にょわわ~、いっ急ぐのじゃ」


バタバタと慌てて走り出す、うん、怖いもんね俺も急ごう。



        ◆ ◆ ◆ ◆



食堂の横に今までなかった部屋ができている。どうやって作ったんだ?


「ようっ」


部屋にはすでに他の3人がいた。片手を上げて陽気に挨拶してくるリッジ。やっぱり薄いな~


「そんなに死にたいのか?」


《すいませんでしたー》キャインキャイン


「ったく、聞いたぞお前異世界の元人間だってな」


《そうだけど誰に聞いたの?ベアーチェさん?》


「うんにゃ、梟から聞き出した」


おっ?そういえばあの五月蝿い梟がいないな?


《あの爺さんは?いつもならマリアにくっついているんだけど》


「さっさあ?疲れたんじゃねーの?」


なんで目を逸らすんだ?


「リッジが少し乱暴に聞き出したから、クロッカスは部屋でダウンしているのよ」


ミルフィーアさんがそう教えてくれる。じとーとした目で見ていると開き直った。


「とにかくだ、俺はリッジ・レザー、歳は17でお前の1つ下だリッジでいいぜシュン」


「私はミルフィーア・エプソよ、皆からはミフィーと呼ばれているわ、よろしくねシュン君」


《俺はシュン・ハットリだ、二人ともよろしくな》


リッジは少し乱暴だけど悪い奴じゃなさそうだ、今十七って事は五年前は十二か。たぶん城から出て行かなきゃいけない理由があったんじゃないのか?


《ミフィーの歳はいくつなん……ひぃぃぃぃ》


ミフィーの周囲から何かどす黒オーラが見えるっ。


「シュン君、レディーの歳を聞くだなんてマナー違反よ?」


笑い顔が余計に怖いです!


《失礼しました!》キャイン


「それではブリーフィングを始めましょう」


俺たちの紹介が終わったの見計らってベアーチェさんがブリーフィングを始める。


「姫様もゲームで初勝利しました。これによってゲームのランキング戦に登録する事ができます」


《ランキング戦?》


「うむ、わらわの目的の為にもランキング戦には出ねばならんのじゃ」


「姫様の目的はゲームによる魔属領の統一です、しかし誰もが簡単に魔王達の争いに参加できては収拾がつきません。よって魔王達が居る場所に行く為にゲーム内のランキング戦によってSランクに昇るのが今後の目的になります」


なるほど、日本でも似たような事は色々あったな。


「ランキング戦登録する条件は特別マッチやその他のランク戦以外で1勝以上すること。これは前回のコロシアム戦でクリアしました。ですので次はバトルタクティクスに進む為の準備を致しましょう」


「む……それでリッジ達がいるのかや?」


「はい、タクティックスに進む為の条件は2つです」


一つ、マスターランクがC以上であること。


一つ、Cランク以上の従者又は契約者がいること。


「この二つをクリアすればタクティックスのランキング戦に出ることができるようになります」


「ならばリッジ達は必要ないのじゃ、わらわとシュンが二人でCランクに行けば良いのじゃ」


む、マリアの奴少し意固地になってないか?


ちらりとベアーチェさんが此方を見て


「犬ではEランク戦すら勝ち抜けませんので却下です」


《「んなっ!」》


「馬鹿なっEランクなぞ最低ランクではないか、シュンは日々強くなっておる。それにルーンマジックもあるのじゃ、あれはベアーチェだってほめてたではないか」


なっなんだと、あのベアーチェさんがほめてくれたのか?


「犬のルーンマジックは有用とは言いましたが、ただそれだけです。犬自体が弱すぎます」


ベアーチェさんの言い方に少しむっとなる。


《待ってくれ、確かにスライムでいた時は動きも遅いし、ルーンマジックがあっても勝つのは難しかっただろうけど、子供とはいえ魔犬の素早さがあったら良いとこまでいける自信はあるぞ》


キャンキャン吼える俺をベアーチェさんは冷たく見下ろし。


「仕方ありません、現状を理解して貰いましょう。リッジと一度対戦してもらいます。いいですね?」


「ん~あんまり気は乗らないけどしゃーないな、このままじゃシュンは死んじまうだろうし」


流石にその言い様はカチンときた。


「うぬぬぬぬ、分かったのじゃ、その勝負受けてたつのじゃ。シュン、負けるでないぞ!」


《おうっ》


ぎゃふんと言わせてやる!



        ◆ ◆ ◆ ◆



訓練所も兼ねた城の中庭に出る。


「それではリッジ対犬の勝負を始めます、勝敗は私が公平にジャッジいたします。それでは始め」


俺は素早く戦闘体勢を取るが、リッジは両手を腰に当てたまま動こうとしない。


その態度にますます俺の頭に血が上る。


「にょわ~、なめられておるのじゃ、シュン遠慮はいらんやっつけるのじゃー」


分かっている!俺は素早く【ステップ】でフェイントを入れルーンマジックを発動させる。


まずは牽制【ファイヤー】×四だっ。


四っつの火の玉がリッジに襲い掛かる。当たるっとおもった瞬間リッジの姿が消えた!


気づいたときにはすでに真横に!急いで【ステップ】で逃れる。だけど……


「ほいっと、これでルーンマジックは使えないだろう?どうする?」


ペンが奪われたっ、あれがなければ魔犬とはいえ実質は子犬みたいな物だ。


俺は愕然とした、実力差が在りすぎる。少しは強くなったと思った俺が馬鹿だった。


「勝負は決まりましたね、それでは犬には外にいってもらいます」


え?たったしかに圧倒的に負けちまったけど、追い出されるほどだったのか?


「にょわっだっ駄目なのじゃ、シュンはわらわの従者なのじゃー」


「外に行ってもらうのは最後のチャンスを与える為です」


《ちゃっチャンス?》


「姫様とリッジが組んでCランクに上がるのはおそらく三ヶ月ほど掛ります。その間に犬は魔狼に成長しなさい」


《魔狼に……成長できるのか?》


「魔犬の進化の先に魔狼が在ります、犬が三ヶ月で魔狼になることができたなら、ゲームを戦っていける資質があると判断します」


「そっそんな、シュンと離れるのはいやじゃ。どうしてもシュンの進化が必要ならわらわも一緒に行くのじゃ」


《マリア・・・》


「犬、どうしますか?もしも姫様が犬について行けばゲーム参加資格の一つ、一月に一度以上のゲーム参加がクリアできません、一度資格を没収されれば二度とゲームに復帰できませんが」


「そっそんな……」


このままじゃ俺は役に立てない。俺はマリアの助けになりたいと決めたんだ。


かといってマリアと一緒に行くわけにも行かないんじゃ、俺にできることは一つしかない。


《マリア、俺独りで外に行くよ、絶対に魔狼になって帰ってくる。だから待っててくれないか?》


「嫌なのじゃっ、シュンと離れるのは嫌なのじゃー。ぐしゅっ、それならシュンはゲームに参加しなくてもいいのじゃ、だからわらわと……」


《マリアっ!お前は魔王になるんだろう?自分で言うだけじゃなくて回りから認めてもらえる王に。その魔王の従者が戦えないただのペットでいいのか?》


「でも、でも~」


《俺は絶対帰ってくる、だから信じて待っててくれ》


「……絶対じゃぞ、三ヶ月で戻ってくるのじゃぞ」


《ああ、約束だ三ヶ月で魔狼になって戻ってくる》


「だったら……我慢するのじゃ……」


「決まりましたね。でわ犬、これをつけていきなさい」


そう言ってベアーチェさんは革でできたベルトを着けてくれる、脇にはペンを差し込むカバーがついていた。なんだかんだいってこのひと面倒見はいいんだよな……怖いけど。


《リッジ、ミフィー、マリアの事を頼む》


「言われるまでもねー、お前はさっさと進化して戻ってきな」


「ふふふ、がんばってきてくださいね。ここから西に向かうと人間族との国境があります、その付近にあるモカの森が丁度いいLvのモンスターが居ますよ」


俺はリッジとミフィーに礼を言い外に歩き出す。


「シュン、絶対、絶対帰ってくるのじゃぞ!」


任せろ……魔狼になって戻ってくる、それが最低限の条件。リミットは三ヶ月!


俺は覚悟を新たにし、モカの森目指して駆け出した。



前回ゴブリンに勝てたのもまぐれですのようなものでしたから。


3ヶ月の制限時間でどれだけ強く成れるのか。


主人公を応援してやってください。

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