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出会い+絶壁=犬鍋

深い森の奥、そこに一つの集落がある。


集落の中央は広く開けており、今そこに二人の人物が拳を交えていた。


一人は百九十センチほどの引き締まった体躯をした男。もう一人は百六十センチほどの小柄な女性だ。


肉を激しく殴打した音を鳴らせ女性のフックがボディに突き刺さる。


「グオッ」


「おらっどうした、それで終わりかっ!」


方膝をついた男が雄たけびを上げ女性に飛び掛る。


「甘いんだよっ!」


目で追えないほどのスピードで繰り出されたハイキックが、こめかみを打ち抜いた。そのまま意識を失い地面に崩れ落ちる。


「勝負はあたいの勝ちだっ、これでこの集落のリーダーはあたいだ文句のある奴は掛って来い!」


二人を遠巻きに囲んでいた人垣の中から老人が前に出てくる。


「いいや、掟にしたがってお前が今日からこの集落のリーダーだ、皆の物我らの新しき長が決まった宴の用意をするのじゃ」


『おおっ』『宴だっ鹿を狩りに行け』『女子供は料理だ、豪勢な物を作れ』


住民達が思い思いに宴の用意に奔走しだす。


……ふぅ、ようやくか、これでいつでも約束を果たしにいける。


「リッジ、朗報よ」


いきなり背後から声をかけられ素早く警戒態勢をとってしまった。


「ちっ、ミフィーかよ、くそー毎回後ろを取られるな」


「ふふ、まだまだ修行不足ね」


「これでも今日集落一になったんだけどな。それで、朗報ってのはなんだ?」


「あら、丁度よかった。十日ほど前にマリアちゃんがゲームで勝ったわよ」


「まじかっ、あのちびっこおっせーんだよ、ははっ!」


掌と拳をぶつけ軽快な音を鳴らす。


「それで?行くんでしょう?」


「当然!流石に集落の連中は直ぐにとは行かないが、あたいだけ先行していくさ。今日は宴会だミフィーも参加するだろ?」


「そうね、参加させて貰うわ」


次の日二人の女性が集落から旅立つ、ポルトランの街にある城に向かって。



        ◆ ◆ ◆ ◆



暗い……暗闇の隅に……誰かが泣いている。


あれは……五年前の自分……


これは夢だ、そう理解しても目が覚めることはなく夢は五年前の別れを映し出す。


「どうして? どうして行っちゃうの、行かないでおねーちゃん」


当時七歳だったわらわが泣いて引き止めている。何をしても変わらないというのに……


「すまねーマリア、あたい達は掟には逆らえねー。それがあたい達の誇りだから」


「いやだっ行かないで、私を一人にしないで!」


五年前まではこんな口調だったかや……今思い起こせばおねーちゃんも泣きそうだったかもしれん


「マリア、お前がゲームで一勝する間に、あたいも集落の長に成ってみせる。その時は絶対に戻ってくる、約束だ」


「嫌だよ行かないで、行かないでよー、うわああああああああ、リッジおねーちゃんの裏切り者!」




ん……目が覚める、最近ずっと見なかった夢。どうして今みたのだろう……


いや、もう昔の事なのじゃ、それにわらわにはシュンがおるのじゃ。


「ん? そういえばシュンは何処じゃ?ベッドにはおらぬが」


もしゃもしゃもしゃもしゃ、何かが物を食べている音がする、下?


そこには三十センチほどの柴犬のような子犬が美味しそうにケーキを食べていた。


あれ?そのケーキはわらわが棚の奥に隠していたカップケーキでは……


「シュン?」


目と目が合う。


《「………」》


ガツガツガツガツガツ、ケプ 【ステップ】×5


ケーキを全て食べつくし逃げ出す犬。


「まつのじゃっ、シュン貴様わらわが楽しみにしていた、ペイルン菓子店のカップケーキを食べおったな!!」


《ふははははは、あんなところに隠したぐらいでは今の俺の鼻をごまかす事は出来ん!》


むっきぃぃぃぃぃ、主のおやつを勝手に食べるとはお仕置きじゃあああああ!


そうして今日も一日が始まる。



        ◆ ◆ ◆ ◆



「またぬかー!!」


むう、今日は一段と粘るな。だがもう俺はスライムとは違うのだよ!


四足動物のスピードを生かし、城の外へと逃げ出す。外にでてしまえば俺の勝ちよっ。


「またぬかー! お仕置きじゃー!」


はっはっはっ待てと言われて待つ盗人など居ないのだー。


「おっと、そこまでだワンコ」


なっ、いきなりそれまで居なかったはずの人影が、目の前をとうせんぼする。


だがっ【ステップ】で真横に跳び【ジャンプ】でかわす、今の俺は5m級のジャンプが可能だ!


「はい、ここまで」


そう言ってもう一人が俺の着地地点で待ち受ける。まったく気づかなかった。


ぼよん。


そんな効果音が聞こえてきそうな場所に着地、抱きしめられる……これはっ九十二のG!!


適当だがおそらく近いに違いない、そう思わせるほどの巨乳に受け止めて貰いました!


「なっ、おっお前たちは」


「よう、マリア久しぶりだな」


そういって先ほどとうせんぼした少女がマリアに片手を上げる、知り合いか?


「なっ何しにきたのじゃ!」


マリアと話している赤い髪の少女が肩をすくめる


「約束しただろう?マリアがゲームで一勝したら戻ってくるってな」


マリアが睨み、赤い髪の少女が少し悲しそうな顔をする。俺は前足でぼよんぼよんしていた。


「やん、こらっいたずらしないの」


長い金髪を緩やかにウェーブさせ青い瞳に整った顔立ち、夢中になってしまう大きな胸。旅に適した上着にミニスカート、むき出しになった太ももが眩しい、そして長い耳……エルフ。


そんな美人エルフの胸を俺は前足でぼよんぼよん叩いていた、理性が崩壊していました。


「なっなにをしておるシュン!」


マリアが俺を美人エルフから掻っ攫う。


《なにをって、マリア、エルフだぞ! 巨乳美人エルフ! あんなところに挟まれたら理性も崩壊するわっ》


「ばっばか者! わらわの従者のくせに、他の女にデレデレするでない!」


俺とマリアがぎゃいぎゃい騒いでいると、先ほどの赤い髪の少女が声をかけてきた。


「おいおい、マリア、そのワンコが従者ってことはそいつでゲームを勝ったのか?」


そういって、呆れた顔をしている。


赤い髪をシャギーカットにし、少し赤みの入った茶色の瞳、目鼻顔立ちは整っているが綺麗や可愛いというより男前な風貌。

ホットパンツに膝まである赤い革のブーツ、そして胸を、太くしたベルトのようなもので覆っている。

頭にはネコ耳、お尻にはネコの尻尾、獣人、おそらくワーキャットだ。


「シュンを馬鹿にするでない! きちんとした従者の契約をわらわとしておるのじゃ」


「てことは契約が出来る知性があるのか。ワンコ、あたいはリッジ・レザー、あっちのエルフはミルフィーア・エプソだよろし……何処を見ている」


俺はリッジの胸を見ていた……ないのだ……何がだって?あれだよあれ……胸。


「どうしたのじゃ?シュン」


《どうしたって、無いんだぜ?あれだけ絶壁なのもすごい。マリアよりも無いぞ》


ビキッ


《あの胸に抱きとめられていたらもしかしたら怪我をしていたかも知れないな》


ビキビキッ


《しかし世の中には貧乳スキーも居るからな、それはそれで需要があるかもし……あれ?》


いつの間にか俺を放り投げて避難するマリア、目の前にはどす黒い何かを撒き散らしているリッジ。


「おい、くそ犬……さっきから思念がダダ漏れなのを分かってるんだろうな?」


《………》


全力ダッシュで逃げる犬。「まてやごらあああああああ!」


通路を全力で走りぬける、ちらりと後ろを振り向くとそこには、阿修羅のような顔した鬼が追ってきていた


《ぎゃあああああああああ》ギャンギャン


「はははははっ久しぶりに堪忍袋が10本ほど切れたぜ!」


《それは切れすぎだああああ》ギャワンギャワン


「はっはー叔母からは良く切れる子ねーて言われて育ったからな!」


《それは迷惑がられてるんだよ!》キャンキャン


「ひゃっはー、今日は犬鍋だあああああ」


《ごめんなさぃぃぃぃぃぃぃ》キャンキャンキャン




「にょわわわわ、どっどうしよう」


「マリアちゃん、早く助けに行かないとリッジの事だから本当に鍋にしちゃうわよ?」


「だっ駄目なのじゃ~シュンは食べてはいかんのじゃ~」


あわてて追いかけるマリア。


一人になったところでベアーチェが声をかける。


「久しぶりですね、ミルフィーア」


「お久しぶりです、ベアーチェ将軍」


「いまはメイドです、将軍はいりません」


「ふふふ、似合っていますよ」


「それで、獣人族の一部とエルフ族の一部が力を貸す。という解釈でいいのですね?」


「はい、今すぐとは言いませんが、いずれは」


「では、姫様も次の段階に行って貰いましょう」


そう言って薄っすらと笑むベアーチェだった。



主人公が本性を現した!


へタレで助平だなんて・・・


ばっちりお仕置きされます。

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