メイド+S=ベアーチェ
瞬が異世界へと召還される34日ほど前
---ベアーチェ城---
ボブカットにした美しい黒髪にカチューシャ、少しつり気味の黒い瞳、中世ヨーロッパ風のスカートの長いメイド服を着込んだ人物が通路で物思いに耽っている。
アデーレ様が死んでから5年経ちます、そろそろ姫様も成長して貰わなければいけませんね。
さて……どうするか……
「ベアーチェ。見るのじゃーなんと一万ディナールも無利子で貸してもらったのじゃ」
輝く銀髪を黒いリボンでツインテールにし、水色のチェニックとしろのペチコート、黒いブーツ姿の姫様が嬉しそうに言います。
おや?街の住人には、姫様に現物以外渡してはいけないと注意しているのですが。
「借用書を拝見しても宜しいですか?」
「うむ、これなのじゃ、ふふふーわらわもこれで大人の仲間入りなのじゃ」
……人を騙す気があるのか分からない借用書ですね。端に一月返済が遅れた場合一億ディナールの賠償義務があるなどと書いていますが。一ヶ月どこか見つからない所にいってしまえば支払う事が出来ませんね。
ふむ、直ぐに処理してもいいのですが……騙されたと分かった時の姫様が見ものですね。これはこのまま利用しましょう。
「姫様、お返しします。なくしてはいけませんよ?」
「分かっておるのじゃ、爺、ついてまいれ」
「姫様ー爺は何処までも付いて行きますぞ」
姫様と鳥が元気よく走っていきます……少し調べましょう。
「ミシェール」
私に影で使えている猫の使い間を呼ぶ。
《お呼びですか?ベアーチェ様》
「街に行きケロッグ・タジンという商人を調べてきなさい」
《承知いたしました》
素早く窓から外に出て行くミシェール。
あとはどう利用するかですね。
◆◆◆◆◆◆◆◆
一ケ月後
「なっなんじゃと!そんな馬鹿な話があるものか!!」
「ケーロッケロッケロッ、しかしですねーきちんと契約書には書いております。一月返済が遅れれば一億ディナール賠償すると」
「こっこんな小さく書いては分からんのじゃ!」
「ケロッケロ、それはマーセリア様の注意不足ですねー」
「ぐぬぬぬぬ、一億など払えんのじゃ、ないそでは振れん」
「困りましたなー、払えないとなればマーセリア様には奴隷として自分を売って貰うしか在りませんなー」
「んなっ、わらわを侮辱するかや、ベアーチェこの痴れ者を殺してしまえ!」
おや、相当頭にきていますね、まさか姫様がそんな事を言うとは……成長しましたねいいことです。しかしまだこの不細工には利用価値があります。
「残念ながらそうしてしまいますと契約を破ってしまう事にもなりかねません」
ふむ、こんな事で焦って居ますね……小物ですね。
「そっそうだケロっ、そうなったらマーセリア様もただではすみませんよ?」
「うぬぬぬぬぬ」
「ケロッケロッでしたらこうしましょう、二週間後にあるバトルコロシアムで一億の借金とこのお城を賭けてゲームをしようではありませんか」
「げっゲームじゃと?」
「ええ、もちろん魔王様の娘であるマーセリア様に万が一にでも従者がいない、なんてことはありませんケロ?」
「あっ当たり前なのじゃ、そっその勝負受けて経つのじゃ!」
「それではこの契約書にサインをお願いするケロ」
なるほど、最初から城を狙っていましたか。
「はいっ確かに、それでは私は帰らせて貰います、ケーロッケロッケロッケロ」
早く掃除をして消毒しなければいけませんねカエル臭くなります。
「べっベアーチェどうしょう……わらわはまだ従者がいないのじゃ」
ああっ姫様……なんて素敵なお顔するのでしょう。ミシェールを簡易契約させれば万事解決ですがそれでは姫様の為になりません。ギリギリまで楽しみましょう。
◆◆◆◆◆◆◆◆
四日後
! これは……召還魔法の波動?まさか姫様が召還を成功させたのですか?
いけませんね、今の姫様のLvで召還できたとすればろくな者では在りません。
私がそう思案していると姫様が嬉しそうに報告してきます。
「ベアーチェ、やったのじゃ召還が成功したのじゃ」
「それは宜しゅうございます」
「それでな、初めての従者にはダークナイトになって貰いたいのじゃ」
いけませんね……ダークナイトはAランクの魔族です、おそらく最高でDランクの者の為に使うのはいただけません。
「転生の秘儀をするかも知れぬのじゃ、ベアーチェは用意をしていてほしいのじゃ」
「分かりました」
「あっ、あと召還の間の掃除もお願いしたいのじゃ」
「はい」
「では、わらわはあの者のところに行くのじゃ」
元気な事はいいことです、元気が無いときに弄っても楽しくありませんし。
さて、先ずはダークナイトの偽者を作りますか。材料は……そこらのゴミでいいですね。多少もったいないですが魔力のこもった宝石も使いましょう。
それと……この汚物が召還された者の成れの果てですね。めんどくさいのでゴミ捨て場に捨てましょう。
---転生の間---
「姫様、それがあの汚物の魂ですか?」
これは……想像していたより酷い、おそらくGランクの魂ですね。
ダークナイトを隠して正解でした、この魂では器に耐え切れず破裂する所です。
魂はどうでもいいですがダークナイトの素体がもったいなさすぎます。
◆ ◆ ◆ ◆
スライムですか……しかもステータスが相当酷い事になっていますね。
「スライムには発声器官がありませんから、魔法は使えませんね」
「びええええぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ふふふっやはり姫様は愛らしいですね。
「汚物からゴミに転生お疲れ様です」
◆ ◆ ◆ ◆
「ベアーチェ、初心者ダンジョンを解放するのじゃ」
「それは……どちらにしろ姫様がダメージを負うのですが……いいですね」
となればスライムの移動に時間などかけていられません。
ゴミ取りトングで摘み、ダンジョンに放り投げます。
結果は……
「びええええぇぇぇぇぇぇ」
ああっ姫様、泣きながら走り去るなんてなんて愛らしい。ゾクゾクしますね。
おや?あのゴミもいませんね。
「ミシェール」
《ここに》
「あのゴミ……スライムを追い込みなさい」
《ともうされますと?》
「ギリギリまで追い込んで恐怖を与えなさい、もしそれでなんらかの特殊能力が出なければ処分します」
《承知しました》
◆ ◆ ◆ ◆
《ぎゃああああ猫にまけるううううう》
ガリガリガリガリガリ
……駄目ですね。
「ミシェール、もういいです戻りなさい」
《はっ》
あのゴミは処分いたしましょう。
逃げ込んだ倉庫の扉を開けます。
バンッ
《ひゃっこぅぅぃぃぅ》
「こんな所に居たのですか、なんですか変な声をだして、変なのは存在だけにしてください」
ん?……あれは
「書ける君ですか……」
ユニークスキル……
《【ペン習字】は綺麗に字が書けて【速書き術】は字が早く書けます……》
たしかそういってましたね。
「ひとつ賭けてみますか……」
処分は少し見送りましょう。たしか人族の魂でしたね、でしたらスライムとして生きていけるようにすこし思考を弄りましょう。
ペンを拾い上げて突き刺します。 ドシュッ
魔力波長が思考を書き換える……これで死やゲテモノ食いに忌避感が薄くなったはずです。
次は姫様ですね……
---マーセリアの部屋---
「ぐしゅっ、ひっく、ぐしゅっ」
居ました、まだお泣きになっていらっしゃるのですね。
「姫様、少しよろしいですしょうか」
「なっなんじゃ?」
「あのゴ……スライムのことで少しお話しがあります」
ついゴミと言ってしまいますね、素材がゴミですから……
「あやつのはなしなぞ聞きとうない」
「ですがあのスライムは姫様のために書ける君の練習をしているのですが」
「なに? ……わらわのためにかや?」
「はい、姫様のためにでございます」あとは生きていくためが5割と言った所でしょうか
「……」
「姫様の初の従者でございますよ?」
「何処に居るのじゃ?」
ああったったこれだけで説得されるだなんて……寂しかったのでございますね。
「今は書庫に居ます」
「いってくるのじゃ」
素直で扱いやすいですね、さてこれで結果がでなければ処分いたしましょう。
◆ ◆ ◆ ◆
---コソン&マスターケロッグ戦から一週間
あれから一週間経ちますがこのままスライムで居て貰っても困りますね。
「ミシェール」
《ここに》
「スライムをギリギリまで追い込みなさい」
《承知しました》
---食堂---
《もうスライムはいやだ~~~》
分かりやすい思考をしているので動かしやすいですね。
「姫様、もう一度転生の秘儀をなさってはどうですか?」
《なっなに!?転生って何回も出来るのか!》
「フハハー、我に掛かれば造作もないのじゃー」
さて、なにに転生するよう誘導しましょうか……
進化しゲームに勝ったことで魂のランクもFにあがりましたし……所詮Fですが。
魔狼が住んでいる森に魔狼の遺骸を拾いに行って貰いましょう。ランクDの魔狼ならギリギリ耐えれるでしょう。
「ミシェール、万が一のために姫様の護衛は任せました」
《承知しました》
◆ ◆ ◆ ◆
ズドドドドドドド
「……どうやら帰ってきたようですね」
おや?あれは魔犬の骨では……丁度いいですね。
失敗した時の姫様の顔もまた愛らしいものです。
◆ ◆ ◆ ◆
スライムが犬になってからもう五日ですか……そういえばそろそろあの二人が来てもよさそうですね。
「まつのじゃっ、シュン貴様わらわが楽しみにしておいた、ペイルン菓子店のカップケーキを食いおったな!!」
《ふははははは、あんなところに隠したくらいでは今の俺の鼻をごまかす事はできん!》
平和ですね……ろ何かしないといけません……また姫様の泣き顔がみたいものです。
ベアーチェさん視点だとこういう風になりました。
読みづらかったでしょうか?
ご意見ご感想を聞かせてもらえるとありがたいです。