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冬祭りの妖精と人間

「…ゴクッ」

 ロニはまじめな目で俺を見て話す。

「やっぱり下着無いからちょっと変な感じ」

 バタン―。…ちなみにこれは俺がこける昭和の漫画で出そうな演出の効果音。

「いきなり話し変えるな!つーかそれが大事な話?」

「うん。だから下着出せ」

「何が出せだ!今度は下着かよ。あるわけないだろ。ってかいい年の女の子が下着下着言うな」

「何よ。そんなのも無いの?じゃ、買ってきなさい」

「命令するな」

「じゃ、このままノーパンツでいる?」

「……」

 クオオオオ!何を想像するんだ、俺!

「分かった。買ってくりゃいいんだろ。いや、待て」

 アニメとかで見ると下着を買おうとする男の主人公が変態に思われることが確かに多かったな。そんな有り触れたパターンは避けたい。

「だから一緒に行こう」

「アタシも?ノーパンで?」

「……」


 てなわけで結局折れ一人で買いにきた。コンビニの店員さんが眠気に負けて半分寝かけていたおじいさんで助かった。ってか、何でも売ってんなコンビニって。

「ほら、これ」

「ありがとう。じゃ、着替えてくるね。覗いちゃ駄目よ」

「見るか!」

 怒鳴る俺を見てロニは面白そうな顔をしてキッチンへ行き、部屋とキッチンの間のドアを閉めた。

「……」

 にしても、これからどうなるんだ?あいつここで住む気なのか?はぁ…。マジで?もしそうなるとしたら山田とじゅんにはどう説明すりゃいんだろ。っていうか、この部屋で二人が、しかも男女の二人が住むには狭すぎる。ベッドがあるから一人は床で寝ればいいけど…。いや、あいつを押し入れで寝かせたら?いや、彼女は宇宙人でも死神でも天使でもないただの妖精だから無理。仕方ないか。俺が床で寝るしか。このまま追い出すのも可哀想だし。本当に大変なことになっちまったな…。

 それよりあいつ、いったい何だ?奴が妖精ってことはさっき見たから分かったとしよう。でも何で時間の妖精が俺のところに来たのかその理由が分からない。彼女は俺が連れて来たとか言ったけど、秋葉原でフィギュアの状態では彼女も俺を呼んだんじゃなかったのか?それに妖精って人間の姿?もっとこう…小さくなかったっけ?羽は?光る粉は?時間の妖精なら他の妖精もいるってこと?なら、その妖精達も人間の姿?聞きたいことが山ほどだ。さっきも聞きそびれたし。とか考えているうちに着替終わったロニが入ってきた。

「ちょっぴり大きい感じはするけど…いいわ。これで我慢してやる」

「はいはい。それは何よりですな。それより聞きたいことがあるんだけどさ」

「は~~あ~ん。眠い。もう寝る。そんなことは明日にしましょ」

「って、人の話聞け!それにそこは俺のベッドだ!つうかやっぱりここで寝る気か?」

「仕方ないじゃん。行くところの無いんだから」

「いや、それはそうだけど…」

「じゃ、おやすみなさい」

「話聞けっつーの!」

「スゥ…スゥ…」

「……」

 もう眠ったか。早いわ!

「たく…。いったいなんだ?」

 でもおかげでやっと静かになった。

「…はあ…」

こう見ると結構可愛い顔だ。肌も白いし、何だかいい香りもする。…って、そんなの考える場合じゃない。もう、どうすりゃいいんだよ。

「……。もういい。疲れた…。俺も寝よう…」

 俺は床に敷いた布団の上にそのまま倒れた。…明日は土曜日だから遅くまで寝れるだろう…。いや、この変な女のせいでゆっくり寝るのは無理かも。とか考えながら俺は眠りに入った。


 眩しい朝の日差しが窓から入り、俺を照らしている。おかげさまで自動的に目が覚めた。

「うぅ…。ん?」

 ここはベッドの上。部屋の中はおれ以外誰もいない。何だ…昨日のあれはやっぱり夢だったのか…。そりゃそうさ。だいたい妖精なんているわけが無いじゃないか。悪夢だったよ、悪夢。

「はぁ。夢でよかった」

 そうほっとしながら窓の外の太陽を見上げた。妙に眩しい太陽だな…。

 眩しい…。眩しい…。眩しい…。


「眩しい…。眩しい…」

 眩しい朝の日差しが窓から入り俺を照らしている。おかげさまで自動的に目が覚めた。

「眩し…ん?」

 …何だ今の夢。ん?夢?じゃ、あれが夢で…昨日は…現実?夢が夢じゃなかった?……残念。

「はぁ…」

 でも静かだな…。まだ寝てんのか?俺は体を起こしてベッドの上を見た。

「いない…」

 そう。ベッドの上には誰もいなかった。布団が散らかっているだけ。

「どこか出掛けたのかな、こいつ」

 そのうち帰るだろ。帰ってこないならそれもそれで悪くない。それよりトイレトイレ…え?

「トウアアアアッ!」

 何故俺がこんなに驚いてるのかその理由を説明しよ。一言で言うとトイレの前の床で寝ている奴がいたからだ。それに俺はその奴を踏むところだったのだ。

「何でこんなとこで寝ているんだ、この女は?」

「うう…。何よ…。煩いわね」

 俺の声にロニが目を覚ました。

「もう。せっかく美味しいおかかのおにぎりを食べていたのに…」

 夢で食べるのがおにぎりってちょっともったいなくないか?

「何でここで寝てるんだ、お前」

「あんた、いちいち声大きくない?」

「誰のせいた!」

 俺の大声にも関わらず、ロニは上半身だけを起こして座ったまま俺に向かって両手を伸ばした。

「な、何だ?」

「起こして」

「はぁ?」

「起こしなさい」

「……」

 何で俺が。あ―でもこのままじゃいつまで経ってもこの状態のままでいそうだから仕方がなく、俺は彼女の手を捕まえた。

 柔らかくて暖かい手だ。…いや、何考えてるんだ。俺はそんな考えを振り飛ばして腕に力を

入れ、ロニを起こした。

「ほら。これでいいのか?」

 だがロニは答えずに俺の目をじっと見て喋る。

「…ドキッとした?」

 何っすか、この女。

「寝ぼけてんのか?」

「赤いよ、顔」

「くッ…」

「それよりお腹空いた。朝ご飯まだ?」

 話の切り替え早いなー。俺としてはよかったことだけど。

「…今から作るから部屋でおとなしく待っていろ」

「うん」

「で、何でそんなところで寝てたんだ?」

「ん?あーそれね。朝早く起きてトイレ行って、戻るがのメンドくなっててそのまま寝ちゃったの」

「…はあ?」

 もう、いちいち突っ込むのも疲れる。

 俺はため息をしながら冷蔵庫のドアを開けた。ふむー、卵か。よし、朝はレトルトのみそ汁と目玉焼きにしよう。

「ねぇーまだ?お腹空いた」

 みそ汁にお湯を注いだあと、目玉焼きを焼いている俺にロニはがベッドに寝転がって話した。ああ、むかつく。何もしないくせに煩い!

「おとなしく待っていろ。コンロが一つしかないから仕方ないだろ」

「何それ。自慢?」

「違う!どんな自慢だ!ってかお前の少しは手伝え!」

「ええ?面倒くさい」

「いいから手伝え、この居候妖精」

「あ、酷いこと言った」

「酷くありません」

 ったく、朝っぱらからいったい何の騒だ。

「仕方ないね。分かった。何手伝えばいい?」

 何だ。以外に素直じゃないか。なら最初から手伝えよ。

「ん?何か問題でも?」

「いや、何でも。そこの皿運んでくれ」

「これね?」

 そういや、妖精のくせに日本語上手だな。

「なぁ、お前言葉はどうやって覚えた?妖精語が日本語って訳ではないだろうし」

「当たり前でしょう。3年間も秋葉原にいたんだもん」

「は?3年間?あのUFOキャッチャーの中で?」

「うん。あぁ見えてもあれ、結構古いマシンだから。あ、もう支度は済んだの?食べてもいい?」

「あ、うん」

「いっただきまーす」

「いただきます」

 そっか。3年も…。寂しくなかったのかこいつ。

「あそこで3年間も何してたんだ?」

「待っていた。…あら美味しい」

「そりゃ美味しいさ。レトルトは基本美味しいし俺の卵焼きも基本うまい。で、待っていたって…何を?」

 ロニは食事に集中したままで答えた。

「アタシを取ってくれる誰かを。そしてそれがあんたなの。」


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