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黒犬異世界奇譚  作者: 黒い悪魔
黒犬、になる
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第七話 依頼


ギルドの2階は休憩室みたいになっていて、部屋の半分にはイスやテーブルが並べてあり、本棚も見受けられる。もう半分には衝立が並んでいて、いくつもの紙が張り出されていた。きっと依頼の紙だろう。

部屋の隅には受付があり、厳ついスキンヘッドのおっさんが座っていた。


「なぁ、ゼルさん、この依頼ってさ、なんでランクB以上対象に引き上げられたの?」

「あん?あぁ、それか。最近そこらへんでグリュプスの目撃情報があってな」

「うぇ、まじかよ。グリュプスって炎が苦手だっけか」

「あぁ。まぁ、お前が挑んだところで取り巻きのガルバードに八つ裂きにされるのがオチだ」

「失礼だな、ガルバートなんて俺でも倒せるよ」

「甘ぇよ、馬鹿。最低でも10羽はいるはずだ。やつら、群れになると厄介だぞ」

「うわぁ、キッツ…」


どうやら、依頼について話しているようだ。


2階にはルイのほかにも何人か、依頼を選んでいる人やイスに座って談笑している人たちがいた。


と、ルイがこちらに向かって歩いてくる。どうやら俺たちに気づいたようだ。


「セシリアさん、登録の方どうでした?」

「今、やってもらってます。指輪に登録が終わったら知らせてくれるそうです。それまで、依頼とかデリアン付近の情報でも見ようと思って」

「でしたら、ゼルさんに訊いてみたらいいですよ。デリアン周辺につてはギルド一詳しいですし、依頼の方もいいの出してくれますよ」


ということで受付のおっさんに話を聞くことになった。





□ ■ □ ■ □





「とりあえずは、今言ったことを気をつけてりゃ、ここでの仕事で困ることはないだろうよ」


デリアン周辺でよく見かける魔獣や気をつけた方がいい魔獣、実力がないうちは近づかない方がいい場所などについて詳しく教えてもらった。

ちなみに俺は受付の机の上に座っている。セシリアに上げてもらった。


「そういや、お前は魔獣使いなんだってな」

「はい。まだ登録してもらってる最中ですが…」

「そんなら、こんな依頼はどうだ?いい戦闘演習になるとおもうぞ」


ゼルさんは一枚の紙をセシリアに渡す。


「グラドッグの群れの討伐依頼…」

「最近、グラドッグの群れがここの近くの村に現れてな。そいつの討伐依頼だ。ランクはD」

「ちょうどいい難易度ですね」

「あぁ。お前一人でもこなせる依頼だ。まだ、その犬は戦うには弱すぎるからな。まぁ、ちょっとした演習だと思っていい」

「なるべく早く向かった方がいいですよね?」

「そうだな。長くても明後日には行ってほしい。村までは歩いても半日かからない」

「わかりました。依頼受けます」

「んじゃ、指輪を…ってまだできてないのか」


ちょうどその時、あの時のエルフの職員が2階に来た。


「セシリアさん、登録の方、終了しました。指輪をお返しします」

「どうもありがとうございます!」

「これからのご活躍を願っていますよ」


指輪を受け取ったセシリアは、指にはめると文字を浮かび上がらせた。

たしか、冒険者証ライセンスとかいうやつだ。


「おぉ!ちゃんと魔獣使いって書き込まれてるよ、シンの名前もあるよ!」


と、はしゃいで俺にその文字を見せるが、サッパリ分からない。


「おう、きたな。冒険者証はもう出してるみたいだな。依頼の登録をしちまうぞ」

「お願いします」


ゼルさんは冒険者証をざっと読むと、


「問題なし。依頼は責任をもって果たしてくれ。幸運を」

「はい!」


無事に依頼を受けることができたみたいだ。


「ゼルさん、俺にもいいのくれよ」

「ルイか…」


そういえばルイも依頼を探しに来たんだっけ。

ゼルさんが何やらパラパラと紙の束を漁っている。


「あったあった。どうだ?こいつ行ってみる気はあるか?」


ゼルさんが、一枚の紙を取り出す。


「え…これって…」

「おう。コイツを達成すれば晴れてランクCだ。そろそろお前も受けていい時期だ」

「やった!!!」

「ルイさん、おめでとうございます」

「まだ喜ぶには早えぞ。依頼内容を見てみろ」


ニヤリと凄味のある笑みを浮かべるゼルさん。


「シエンの森に自生している、アミラ草の採取だ」





□ ■ □ ■ □





外に出ると、もう夜だった。明かりが少ない分、夜空には輝く星が空一面に散らばってる。日本じゃまず見られらない星の量だ。


「はぁ、受けるとは言ったものの、受かるかなぁ…」


さっきの依頼を聞いた時から何やらテンションが落ちているルイ。

聞いた感じだと、そんなに難しそうな依頼内容じゃないと思うんだけどな。


「そんなに難易度の高い依頼なんですか?」

「いいや、依頼自体の難易度はCです。ただ…」

「ただ?」

「アミラ草をシエンの森で採取するのが問題なんです」

「どういうことです?」

「アミラ草ってデリアン周辺じゃよく見かける薬草なんですけど、ぱっと見、どこにでもある雑草と大差ないんですよ。ただ、見分けるの簡単なんです。魔力を流せばほんのり光るんです。けど、シエンの森じゃ、それができない」

「どうしてです?」

「シエンの森には吸魔コウモリにドレインワームとまぁ、ごっそりいるんですよ」

「あぁー確かにそれじゃ魔力をちょっとでも出した瞬間、根こそぎ吸い取られちゃいますね」

「だから、肉眼で確認するしかないんですよ…。何気にあそこの森の魔獣、そこそこ強いから、時間かけて探している暇もないんですよ」


それって、難易度かなり高いよな…。


「まぁ、森の入り口付近にもあるはずですから、なんとかなると思いますよ」


そんなこんなで話をしているうちに目的地に着いた。


「ここがギルド指定の宿屋です。ここなら魔獣使いが割引されますよ」

「見た感じは普通の宿ですね」

「中が普通の宿よりも広かったりするらしいですよ」


ぬ…良い匂いがする…。

腹減った。繁華街には、時間が遅いからって行けなかったから、腹が極限に減ってる…。


「中には食堂もあるから、そこでご飯を食べるといいですよ」

「わざわざ案内までしてもらってありがとうございました」

「わん!」

『あざーす!』

「じゃあ、僕はこれで」

「はい。今日は本当に助かりました」


ルイが帰り、早速案内してもらった宿に入る。


ようやっと、ご飯が食べられるっ!




3月19日改変

細かな点を編集いたしました。

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