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黒犬異世界奇譚  作者: 黒い悪魔
黒犬、亡霊に出会う
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第十話 森の異変➀


 シェイラに弄ばれていると、今回の依頼の纏め役であるジェスが集合をかけた。


「名残惜しいけど、これからお仕事だから我慢しなくちゃね。また触らせてもらえるかな?」


 最後にさらりと撫でると俺と目を合わせて聞いてくるシェイラ。


 あまり撫でくり回されるのは好まないが、そんな潤んだ目で見られると断りづらい。 


「ワウ」『仕方ない、いいよ』


 そう言って頷くと、俺が了承したことを雰囲気から察したのか、笑顔になった。




「さて。これで今回の調査隊のメンバーは集まったな」


 集合をかけたジェスの元には俺らを含め20人弱が集まっていた。いくつかのグループに分かれているようだ。


「皆、ギルドから詳細を聞いているとは思うが、もう一度確認する。


 今回の依頼は『第3採掘場の調査及び討伐』だ。先のA級魔獣の影響かはまだはっきりしていないが、その日を境にちょくちょく魔獣が目撃されるようになった。ここ、第3採掘場でも近くの山林でフォレストファングの群れと思われる集団がギルド警戒網に引っかかっている。


 森の深層から表層にフォレストファングの群れが移動してきた可能性があり、現在の森の状況、及び原因の調査が主な目的だ。討伐に関してだが、採掘場に近い表層部で発見されたフォレストファングは順次討伐してくれ。


 報酬は銀貨5枚、フォレストファング1体につき銅判5枚だ。フォレストファングが移動してきた原因の有力な情報を持ち帰ったものは、情報をギルドが査定して報酬を出す。


 最後になるが、注意事項だ。仮に何らかの魔獣が原因で元の住処を追われていた場合だが、フォレストファングとはいえ、それなりの数の群れを追い出すような魔獣だ。深追いは厳禁だ。また、A級の件で現状ツェンタットの鉱山にいる魔獣の分布が今までより乱れている。思いもしない上級の魔獣が出てくる可能性があることを頭に入れて行動してくれ。


 依頼については以上だ。質問ある奴はいるか?……いないようならそれぞれの班に担当してもらう地区を伝えるので班の代表者は俺のところへ集まってくれ。それ以外の奴らは装備の点検なりなんなりして待機だ」


 ジェスの説明が終わると皆話し合いを始めた。どうやら班の代表者を決めているようだ。


「俺らの班は等級が一番上のセシリアさんでいいっすかね」

「うん、分かった」


 こういった班長なんかを決めるときは慣例的に一番上の等級の人間が選ばれる。B級ぐらいになってくると、ちょくちょく班長をやったりするのだ。


 他の班もすんなりと決まったようでジェスの所へと集まってくる。俺とセシリアもすぐにジェスのところへ行き、担当地区の詳細を聞く。


「よし、全班来たな。今回は全部で5つの地区を各班で受け持ってもらう。まぁ、基本的に何処の場所も難度に差があるわけじゃねえから適当に決めさせてもらったぞ。深部に近い」


 そうして集まった代表者たちに羊皮紙を配っていく。


「今渡した地図は『管理局』とギルドが把握しているここいらの周辺地図だ。といってもそこまで詳細な地図じゃねけけどな。まぁ、この人数で山狩りってのも無理があるからそこまで血眼になって探さないでも大丈夫だ。ざっと哨戒して見つけ次第順次討伐という形をとってくれ」


 セシリアが渡された地図をのぞき込む。採掘場を中心に大雑把に周辺地形が書かれた地図のようだ。水場があるところや目印となりそうな地形が書かれている。そして薄く赤い線で囲われた場所がある。


「渡した地図に囲われた部分があると思うが、そこがそれぞれの班に担当してもらう地区だ。その地区をざっと見まわって特に魔獣の巣が見つからなかった場合は一旦この場所に戻もどってきて、担当のギルド員がいるからそいつに報告、指示を貰ってくれ。あと、調査の進捗に拘わらず2刻(4時間)たったら此処に集合だ」


 その後軽く質疑応答を行うと、皆自分たちの班へと戻っていった。俺達もラッツ達の元へと戻る。


 さぁ、戦闘もあるだろうから気合を入れますか!




□ ■ □ ■ □





 俺を先頭にラッツ、ブェットが少し後で左右を固め、真ん中にシェイラ、そして殿をセシリアという陣形で森のなかを進んでいく。


 今回俺らが割り当てられたのは山林の表層なかでも割りと深部に近い地域だ。鼻が利く魔獣を連れたB級のセシリア、そして、ジェスもよく知るC級でも実力のあるジェス達のパーティということで他の地区よりも少々深い場所を担当することになったようだ。


 丈夫な俺の体を活かして文字通り露払いをしていく。


 派手に音を立てないように鬱蒼と茂る木々や下草を踏みつけ、払い、後への道をつくる。討伐目標のフォレストファングは縄張り意識が比較的薄いが、あまり大勢でぞろぞろと縄張りに侵入すると問答無用で、自身の隠密性を活かして気配を消しながら1人ずつ殺しにかかる。逆に少数で侵入すると、縄張りを奪いに来たかどうかを見極めてから手を出してくる。

 見極めている際は結構な近距離までやってくるため、その習性を利用してフォレストファングたちを誘い出して討伐するのが定石だ。


 もっとも、そこそこの範囲でかなりの精密探索が出来る俺からしたら相手よりも早く探知できるのでどんどんさくさく森をかき分けてもいいのだが……。


「ウォン!」


 左側に顔を向け小さく吠え、尻尾を一回転させ三度地面を叩く。


「左から、ゴブリン3匹来るよ」


 如何せん、音を立てすぎるとゴブリンやらコボルトといった頭が悪く好奇心旺盛な魔獣を呼びよせてしまう。


「っち、またっすか」


 全員すぐさま戦闘態勢に入る。俺の合図によりセシリアがすぐさま察知し周りに伝える。この連携で不意打ちを受けることはまず無い。この合図を決め、セシリアが分かるように伝えるのにどれほどの苦労があったか……。


 それはさておき。


 C級であるラッツたちにとってはゴブリン3匹など何ら壁となる魔獣では無い、鎧袖一触といった様子で即座に殲滅させる。


「しかし、フォレストファングもそうですが、ゴブリン達もよく出てきますね」


 ラッツが仕留めたゴブリンを脇に退けつつ、シェイラが不可解そうに眉を寄せている。


 現状、ゴブリン、コボルトを14,5体。フォレストファングの小規模の群れを2つ殲滅している。担当地区を探索し始めて1刻程しか経っていないでこの数はかなり多い。


「フォレストファング以外にも表層に溢れてきてるんじゃ、強い魔獣が深部で出たと見て間違いないっすね」

「うん、間違いないと思う。もし私達の手に負えないような魔獣が出たら速やかに採掘場に戻るよ」

「了解っす」「承知した」「分かりました」


 この間のようにいきなりロックドラゴン級が出てこないとは限らない。


 いつも以上に気を張って探索しなければ。



何気に今年初投稿です。


遅筆ではありますが、今年もどうか宜しくお願い致します。

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