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黒犬異世界奇譚  作者: 黒い悪魔
黒犬、亡霊に出会う
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第九話 採掘場の調査依頼

ようやく第九話投稿です。



「え?ガランさんのツルハシが見つかった?」


 新しい武器を購入して意気揚々とギルドに向かった俺達だったが、どうやら受けていた依頼が無くなってしまったようだった。


「ええ。昨日のロックドラゴン出現の後片付けで見つかったようです」


 受付嬢の話によると、ロックドラゴンがぶち開けた穴の後処理の際に瓦礫に埋もれたガランさんのツルハシが発見されたそうだ。


「ツルハシが見つかったのは良かったですけど、この場合って依頼はどういう扱いになるんですか?」


 セシリアの懸念は最もだ。というのも、ギルドの依頼を失敗するとペナルティが与えられるのだ。依頼の重要度によっては一発で級の降格もあり得る。まぁ、今回のような探しもの程度なら一発降格は無いだろうが、それでも依頼失敗の記録は残るだろうし、冒険者としての信頼も多少なりとも下がるだろう。


「今回の件に関しては例外的なことですので、依頼失敗という扱いにはなりません。ただ、成功ということにもなりませんのでご了承ください。不慮の事態による依頼続行不可ということになりますね」

「罰則の対象にならないということですよね?」

「そうですね。探しものの依頼にはままあることですのでご安心下さい」


 どうやら今回はこれといったペナルティは無いようだ。


 ただ――


「今日のお仕事がなくなっちゃたね」


 と、いうことなのだ。新しい依頼を探せばいいだけなのだけれど。


「セシリアさんはB級でしたよね?」


 受付嬢が手元の資料を見ながらセシリアに訪ねてくる。


「そうですけど……」

「でしたらこれなんてどうでしょうか」


 そう言って一枚の依頼書を出してきた。


「『第3採掘場の調査及び討伐依頼』――ですか」

「はい。先日のA級魔獣の出現から魔獣がよく出るようになってしまって。第3採掘場でもフォレストファングの目撃情報があり、閉鎖しているんです。現在もギルドの警戒網でフォレストファングと思しき反応が度々ありまして、C級からB級の冒険者の皆さんにその調査を依頼しているんです」


 フォレストファングは森林を主な住処とするC級魔獣だ。一体一体は然程強い魔獣ではない。ただ群れで行動するので襲われた時に結構な被害がでたりする。セシリアがC級だった頃に何度か依頼で狩っている。


「討伐は分かりますが、調査というのは?」

「第3採掘場は山林の側にあるのですが、今までフォレストファングが出たことがなかったんです。ただ、こうもギルドの方で反応が出ていると森の深層から表層に住処を移した可能性が高いので、その調査となっています。セシリアさんの使役している魔獣は鼻が効きそうなのでピッタリだと思うんですが」

「なるほど。シン、どうする?この依頼受ける?」


 フォレストファングは何度もやり合っているので特に問題はない。住処も受付嬢が言うとおり俺の鼻を使えば見つかるだろうし。


「ワン」『受けよう』

「うん、了解。この依頼受けます」


 しかし、セシリアはいい子だなぁ。魔獣使いにおいて、使役している魔獣は基本従えている存在だ。本来なら一々了承を取る必要なんて無いのに、この娘はいつでも俺をあくまで“相棒”として見てくれている。





 □ ■ □ ■ □





 依頼を受理してもらい指定の場所まで案内されると、既に幾人かの冒険者が集まっていた。案内してくれたギルド職員が責任者らしき人物に俺達の事を紹介してくれた。


「すみません、飛び入りの参加でB級冒険者のセシリアさんです」

「おぉ、飛び入り参加か。もう少し人手が欲しかったところだ。感謝する」


 そう言ってセシリアに握手を求めてきたのは軽装備に身を包んだ壮年の男だ。2m程あると思われる大柄な身体で、背にはこれまた大きい斧が装備してある。


「今回の調査隊の纏め役を任されたB級のジェスだ。よろしく頼む」

「B級のセシリアです。こちらこそよろしくお願いします。この子は相棒のシンです」

「ワン」『よろしく』


 紹介されたので軽く吠えると、ジェスは少し驚いたような顔をすると笑顔で俺の頭を撫でてきた。


「おう、随分と頭の良い奴だな。犬型なら鼻は効くんだろ、頼りにしているぞ」


 正直、いきなり会ったオッサンに頭を撫でられるのはあまり好かないのだが、荒いが乱暴な手つきでもないため大人しくしていることにする。あまりつっけんどんな態度を取ってセシリアへの心象を悪くするわけにもいかないしな。


「今回は班に纏まって行動してもらおうと思う。というのもだ、C級の奴らはそこそこいるんだが、B級の冒険者が意外と集まらなくてな。ここ最近不測の事態が続いてるもんだから、C級だけで行動させるのも拙い気がしてな――お前らちょっと来い」


 そう言うと、近くで装備品の点検をしていたらしい一団に声をかけ集合させる。


「今回セシリアが入ってもらう班だ。丁度この班だけB級がいなくてな」

「ども、C級のラッツです。こっちは同じーパーティーのメンツっす」

「ブェットだ、宜しく」

「あ、あの、シェイラと言います!よ、よろしくお願いします!」


 軽鎧に身を包んだ細身の男がラッツというようだ。長めのくすんだ金髪を後で縛っている。ブェットと名乗った無表情な男は浅黒い肌をした小柄ながらもがっしりとした体付きをしている。緊張で顔を赤くしている背の高い女がシェイラ。杖を持っているのでおそらくは魔術師ってとこだろう。


「B級のセシリア。こっちは相棒のシン。相棒ともどもよろしくお願いね」


 やはり大型の魔獣は気になるのか、ちょっと警戒している感じだ。特にシェイラなんかはプルプルと震えながら後ずさっている。……オレはそんなに恐ろしい外見をしているだろうか?


「あ、あの、この子ってセシリアさんの魔獣ですよね?」

「そうだけど」


 皆より一歩下がったところからおずおずと訪ねてくるシェイラ。セシリアは、今さっき説明したばかりの内容を訪ねてきたシェイラに不思議そうな顔を向けている。


「さ、触ってもいいですか?」


 その一言にラッツは「あちゃ~」と言わんばかりに顔をしかめている。


「シェイラ、セシリアさんにもシンにも迷惑だと思うからやめておけ」


 あいも変わらず無表情なブェットがシェイラを止める。


「シンが良いっていうんだったら別に構わないよ」


 ね?と隣で大人しく座っている俺の頭を撫でてくるセシリア。

 その優しい手つきに内心ご満悦な俺。どっかのでかいオッサンとは大違いな手つきだ。


「ワウ」『別にいいよ』


 そう小さく鳴き、シェイラの方へゆっくりと近づく。急に近づいたら驚かれるかもしれないしね。


「わぁ……」


 シェイラは目を輝かせながら撫でてくる。

 最初はおっかなびっくりの手つきだったが、段々と遠慮が無くなっていき、ナデナデからワシャワシャもふもふといった手つきになってくる。


「わぁぁぁ!」


 ワシャワシャもふもふワシャもふ……。


「あーすみません、シェイラはこういった毛並みのいい動物に目がなくて」

「あはは、シンも大きくなってからはあんまり私以外の人になでられる機会がなかったからなのか、嬉しそうにしてるから気にしなくてもいいよ」


 流石セシリア、俺のことをよく分かってらっしゃる。特にこういうお嬢さんなら撫でるのは大歓迎だよ。



 でもね、シェイラさん。撫でるのはいいけど抱きついて体全体で俺のもふもふを堪能するはちょっと苦しいから遠慮して欲しいんですけど。




 結局シェイラの撫で繰り地獄は、ジェスさんが今回集まった冒険者を招集するまで続いたのだった。



なんとか、年内に投稿することが出来ました。

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