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黒犬異世界奇譚  作者: 黒い悪魔
黒犬、亡霊に出会う
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第八話 事前準備はシッカリ行ないましょう

お久しぶりです。黒い悪魔です。今回は短めとなっております。



 翌日、ロックドラゴンの出現で中断してしまったガランさんのツルハシ探しを再開するため、再びミスリル坑道へ向かった。


 ……何故かキザ男ことイライアスとその連れの魔狼・カリンを伴って。


「いやぁ、まさか貴女と同じ宿になるとは運命を感じます!これも愛と運命の女神・グロインツィの思し召しかもしれませんね」

「は、はぁ」


 んなわけ無いだろ、このスカポンタン。大型魔獣を泊めていい宿屋がツェンタットに一件しかないんだから、運命でもなんでもなく、ただの必然だ。というか、セシリアの反応見ろよ。明らかに戸惑っているというか、嫌がってるだろ。


『何だ、ヤキモチでも焼いているのか、シンよ』

『うっせ』


 どこかからかうような声色で話しかけてくるのは、蒼い毛並みを持つ魔狼のカリンだ。体躯は俺よりも少しばかり小さい位だが、溢れ出る覇者のオーラが存在感を高めている。まぁ、それが無くとも普通の獣よりは大きいので威圧感はある。そして黒い巨を持つ俺。

 さっきから通りを歩く人達の視線が痛い。めちゃくちゃ怯えられている。


「と、ところで何故私達と一緒に坑道まで?」


 またぞろセシリアに対しての大仰な褒め言葉を並び立てていたイライアスを遮るように質問を投げかけるセシリア。いい加減ウンザリしているんだな、時折手のひらをグーパーしている。あれはセシリアが苛ついている時の仕草だ。


「私が貴女についていく理由は1つ。それは貴女が我が姫であり、私が貴女の騎士であるから。まぁ、ギルドからの依頼であの坑道の調査を請け負ったというのも――」

「……ッチ」


 あ、ヤバい。割とキレてるよ、この子。かなり小さく舌打ちしちゃいましたよ。イライラゲージが上がってる証拠だ。


『カリン、うちの相棒がキレかけている。アンタのご主人をどうにかしてくれ』

『すまんがこればっかりは私にもどうにも出来ない』


 申し訳無さそうに、しかし無慈悲な宣言をするカリン。

 そしてセシリアは再びベラベラとくっさいセリフを吐き始めたイライアスを遮る。


「命を助けていただいた方にこういう事を言うのは忍びないのですが。そのような物言いで私を形容するのはやめていただけませんか?」

「星の煌きにも似た――え?」

「もう一度言います。そのような物言いで私を形容するのをやめてください」


 立ち止まり、再度イライアスに向けて言うセシリア。流石に命の恩人だけあって配慮はするんだね。いつもならもっと辛辣な言い方なのに。


「あ、あぁ。このように万の言葉を尽くして褒められることに慣れていないのかな」

「いえ。諸々の事情で世辞には慣れています。そしてそういった鬱陶しい美辞麗句を並べ立てる男性はあまり好ましくありません」


 拒絶の言葉を放つセシリアに面食らったイライアス。さらに追撃までかましますか、お嬢さん。


「……」


 あーあ、イライアスがフリーズしちゃったよ。


『なぁ、カリン。イライアス固まっちまったぞ』

『何、偶にあることだ。狙っていた女子おなごに袖にされたり、既に男がいたりしたのを知った時に良くこうなっている』

『……そう』


 しっかりしろよ、A級冒険者。


「行こうか、シン」

「ワン」『分かった』


 フリーズしたアホを放置し、さっさと坑道へ出向くことにした俺たち。


『悪いな、カリン。なんかセシリアがお前のご主人凍らせちまって』

『何、気にするな。私のご主人はタフネスだから。暫くすれば元に戻るよ。変に根に持つこともしないだろうからな』


 そう言いながらカリンは往来の邪魔にならないように路地の端へと移動する。イライアスは右手首に巻きつけられた尻尾によって引っ張られながらフラフラとした足取りで移動していった。


「さて、ガランさんのツルハシ探し頑張りますか」


 そんな様子を全く気にせずにいるセシリア。幾分かスッキリした顔をしている。


「そうだ、坑道に行く前に剣買っておかないと」


 『管理局』へ向かっている途中ふと思い出したように呟いた。確かに、昨日のロックドラゴンとの戦闘で完全に剣がオシャカになってしまったのだ。

 でも、そんな大事な事なんで今頃思い出すかな?普通は真っ先に片さなきゃいけない用事じゃないか。


 やっぱりセシリアはどこか抜けている。依頼中にそういったお間抜け発動しないだけいいけどさ。




□ ■ □ ■ □




 そういう訳で、やってまいりました『ジィゼル武具店』。


 前回来た時は材料不足のため、お目当ての品が買えなかったが今回はそんなことは無いだろう。だって買うのはミスリル武器じゃなくて普通のブロードソードだし。


「いらっしゃい。おや、アンタは昨日の……」

「どうも。昨日、あの後の依頼中に武器が大破しまして。新しいのを買おうかと」

「昨日の今日でぶっ壊れるたぁどんな使い方しやがった?嬢ちゃんは武器の手入れを怠るようなやつじゃあなさそうだしな」


 む。中々見る目があるではないか!セシリアは物を大事にするいい子なんだぞ。自分が使う魔法のせいで普通よりも武器の消耗が早いが、手入れは欠かさず行ってるし、壊れた武器は毎回教会で供養してもらってるしな。

 ちなみに、この世界では色々な神様が信仰されている。最高神は太陽と光の神と月と闇の女神の二柱らしい。名前は忘れた。確かグリなんちゃらとアラなんちゃらだったはず。

 

「全力の炎纏を使ったら魔力が尽きるとともに砕け散りました」

「そりゃあ、一日でぶっ壊れるわな」


 納得がいったと頷いてみせるジィゼル。


「ひょっとして、昨日のロックドラゴン騒ぎでか?」

「ええ。A級のイライアスさんに助けて頂いて何とか生きながらえました」

「ほぉ、"蒼翠そうすいの狼騎士"にか」


 え、何そのカッコイイ二つ名。あの男こんな大層な二つ名持ちなのかよ!


「私もいつか二つ名持ちになりたいものです」


 二つ名持ちというのは冒険者ならば皆憧れるものらしい。


「二つ名は冒険者の憧れかつ大変な名誉だからな。二つ名持ちを目指すお前さんのためにもいい武器を紹介してやらねばな」


 勿論こいつはいただくがな、とニヤリと笑い親指と人差指で丸を作った。



 その後今まで使っていたものと同じようなブロードソードを購入し、武具店を後にした。


 次に向かう先はギルドだ。さて、お仕事と行きますか。昨日みたいにヤバいもんと合わなきゃいいけどな。




指で○をつくるジェスチャーがお金を意味するのは日本ぐらいだという話を聞いたことがあります(アメリカなどでは指をこする動作らしいです。お札を数える仕草ですね)

黒犬の世界では硬貨が基本なので気にしないことにw


次はなるべく早くお届け出来るよう頑張ります!

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