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黒犬異世界奇譚  作者: 黒い悪魔
黒犬、になる
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第十四話 その後①

ちょっと駆け足気味かもしれません…。


その後、アキツは降りてきたミズキに外傷の簡単な治療と魔力を僅かだが回復させる丸薬を飲まされた。


治療している途中に、ミズキが転移した直後に目を覚ましたセシリアがふらふらと覚束ない足取りでやってきた。空中にいたグリュプスを目印に来たという。


ぐったりとしているシンを見つけてセシリアは大いに取り乱したが、生きていることを確認すると、良かったとホッとした様子だった。


もう既に暗くなりつつあったので、3人と1匹はセシリアが寝かせられてい大木の虚で一晩明かすことになった。3人では少々狭い(シンは子犬なのでさほどスペースを取らない)のだが、寝るだけなら特に問題はなかった。アキツとセシリアの2人は特に疲れていたので、ミズキがまたもや、どこからとも無く取り出した毛布に包まりすぐに寝入ってしまった。


ミズキも、人攫いに追いかけられたり、兄が突っ走ったり、よく分からない畏怖を感じたりと精神的にかなり疲れていた。魔獣避けの魔術具を設置すると、自分も毛布に包まり眠りにつくのだった。





□ ■ □ ■ □





あー此処はどこだ?


なんか薄暗いし。


「おはよ、シン」

「わう」

『おはよう』


あれ?セシリア…だよな?


良かった!生きてたのか!


思わずセシリアの胸へ飛び込む。一応言っておくが、下心なんぞ無いからな。


「よしよし。シンには心配かけたね」

「わん」

『ほんとにだ』


わしゃわしゃと撫で回される。


「でも、シンも私が見つけた時はグッタリしてて死んでるかと思ったんだから」

「わぅ」

『面目ない』

「お互い様だね」


いたずらっぽく笑うセシリア。癒されるわ~


ふと、見知らぬ臭いがする。魔獣みたいな嫌な臭いではないけど…。


「…」

「どうかした?」


少し警戒していると、臭いのもとはすぐに現れた。


「準備はできましたか?」

「あ、はい。シンも起きましたし」


外に繋がっているであろう穴から顔を覗かせたのは黒髪の女の子だった。


セシリアに連れられて穴から出ると、外は鬱蒼と生い茂った森の中だった。どうやら昨日の森みたいだ。


俺とセシリアがいるってことは昨日のグリュプスとかいう化け物はあの時に見た男が倒したのだろうか。


外で待っていたのは、先ほどの女の子と顔付きの似ている男。兄妹なのかな。


女の子は、少しタレ目気味の目に艶やかな黒髪。足首まである黒いフード付きの外套を羽織っている。


男のほうは、さっぱりとした短髪で、結構鋭い目付きだ。眠そうに欠伸をしている。女の子と同じような外套を着ているが、腰までしか丈がない。そして、なんと刀を下げている。


この世界にも刀があるんだ!!きっと製造方法や細かな部分は違うのだろうけど(ひょっとしたらまったく別物かもしれないが)見た感じは刀そのものだ。


というかこの男、昨日見たグリュプスと戦っていた奴じゃないか!


「そっちの犬も大丈夫だったみたいだな。なら、すぐに森をでるぞ」

「はい。あ、この子の名前はシン、私の名前はセシリア・クレントです」

「わん」

『ども』


セシリアに紹介され、一声鳴いておく。


「…俺はアキツ・センジだ。こいつはミズキ。妹だ」

「宜しくお願いします」


アキツと名乗った男は俺のことを見ていた気がするんだけど…。気のせいか?なんか気になるな。


気になるといえば、昨日のアレだ。まるで体が誰かに操られたみたいな奇妙な感覚。そして急激に抜けていく魔力と思しき力。


気づいたら転生してこの体だったから色々とわからないことが多すぎて怖い。


「昨日は危ないところを助けて頂きありがとうございます」

「黒色体を狩ることが俺達の旅の目的だ。気にするな。それに今回ばかりは運に助けられた」


やっぱり、俺のことをチラッとみたぞ、この男。


「それでも助けられたことには変わりません。この御礼は必ず」

「いらん」

「ですが」

「くどい。俺らのことを黙ってくれるだけでいい」

「…わかりました」


ちょっと納得していないが、相手の要求をのんだみたいだった。


その後、特に会話らしい会話もせずに森を抜けた。昨日とは打って変わってグラドッグが湧いてくることもなかった。


森を出た所で2人とは別れ、俺達は村へと移動した。





□ ■ □ ■ □





「村長、ギルドの依頼にあった数よりも遥かに多い数の魔獣がいました。これはどういうことですか?」


今、俺らは村長の家に来ている。依頼よりも遥かに多かったグラドッグの件について問いただしているところだ。


「今回の依頼ランクはD。グラドッグの討伐であれば、5,6頭ということになります。しかし、昨日は森の浅部で10頭以上確認しました。どういうことですか?」

「あーいや…」

「随分と歯切れが悪いですね?」


セシリアさん、怖いっす。どこからそんなオーラが出るんだ!?


「ええい!五月蝿い小娘!大方貴様の連れている魔獣が仲間を呼んだのではないか!?そうだ!そうに決まっている!」


うわぁ、なにこいつ。村長の隣に座っていた男が急に叫ぶ。


「…ヘイゼルさんとおっしゃいましたね?」


セシリアさん、目が座ってますよー


「なんだ小娘!図星か!?」

「シンは私の相棒です。侮辱することは許しませんよ?」

「ふ、ふん!図星を言い当てられて何も言えないからって暴力に走る気か!!」


おっさん、腰が引けてるぞ。


「もう結構です。このことはギルドへ報告します」


そういって家から出る。俺も後ろをついていく。戸が閉まるとき、何やら怒声が聞こえたが、気にしない。


「DとCでは掛かるお金はだいぶ違ってくるから、節約したい気持ちは分からないでもないんだけどね。でも、こっちは命かかってるんだから」

「わう」

『確かに』


門番も、昨日の人でお疲れ様などと声をかけてくれた。


「さ、デリアンまで気を抜かないで行こう!」

「わん!!」





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