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ネジレン  作者: yoii
5/10

呪い

「なぜ

 躊躇う?」


 男の声が、

 次第に大きくなった。


「初めてじゃないだろう」


 彼は、

 私から視線を外さなかった。


「お前は

 死にかけていたカズヤを

 救った」


「カズヤは

 有能な聖者だ。

 いずれ我が家に

 大きく貢献する人材だ」


『…我が家?』


「強い力を持つ聖者は

 短命だ」


「我々は

 その理由すら

 未だに知らない」


 彼は、

 ゆっくりと部屋を歩きながら

 言葉を続けた。


「これまで

 短命に終わった者たちは皆、

 訓練中に死んだ」


「一つ

 共通点がある」


「死ぬ直前、

 誰にも見せられなかった

 強い技を使った

 ということだ」


「…偶然ではない。」


「だが

 原因はわからない。」


 彼の視線が、

 再び私に向いた。


「どんな治療薬も

 効かなかった。」


「我々は

 短命の呪いにかかった者たちが

 死んでいくのを

 見守るしかなかった。」


 一歩。


 また一歩。


 彼が、

 次第に近づいてきた。


「私は

 この地で

 誰よりも強い魔力を持つ

 セイシャだ。」


「毎夜、

 死んだ聖者たちが

 夢に出てきて、

 私を連れ去ろうとする」


 その声には、

 執着が滲んでいた。


「私は

 誰よりも強い」


「だからこそ…

 いつか

 短命の呪いは

 必ず私を狙うだろう」


 彼は、

 微笑んだ。


「だが

 私は打ち勝つ」


「短命の呪いを克服した私は、

 やがて

 保安局の長となるのだから」


 そして—


 指が、

 私を指した。


「その鍵は

 私の目の前にある」


 息が、

 止まった。


「早く」


「お前の目に見える

 赤い糸を、

 全部食べろ」


『食べてはいけない』


『食べてはいけない』


『食べてはいけない』


 頭は、

 はっきり分かっていた。


 これは——

 絶対に

 食べてはいけないものだと。


 それでも


 私は、

 手を伸ばしていた。


 口の中に、

 糸が入った。


 胸が、

 締め付けられた。


 前回より、

 ずっとひどかった。


 糸は喉に引っかかり、

 簡単には

 飲み込めなかった。


 息が詰まり、

 胃がひっくり返った。


「うっ——」


 唾が、

 垂れた。


 中心を失い、

 よろめいた。


 その瞬間、


 男が近づき、

 私の頭を撫でた。


「ゆっくりでいい」


「ゆっくり

 食べてもいいんだよ、

 息子よ」


 糸を飲み込むほどに、

 彼の顔は

 次第に明るくなっていった。


「フハハッ…!」


「こんな爽快感は

 初めてだ」


 彼は、

 恍惚とした表情で

 呟いた。


「呪いなんて…

 もう怖くない。」


「私は

 選ばれし者だ。」


「彼らとは

 違う道を歩むんだ。」


 ついに


 目の前の

 赤い糸が

 全て消えた。


 手が、

 震えた。


 体が、

 言うことを聞かなかった。


「1限目は

 無事に終わったようだな。」


 彼は、

 うなずいた。


「では—」


「2時限目を

 始めようか?」


 彼は、

 上へ手を上げた。


「お前たち」


「連れて行け」


 扉が、

 開いた。


 人々が、

 入り込んだ。


 彼ら全員が──

 全身が

 赤い糸に覆われていた。


「さあ」


「2時限目を

 始めてみようか?」


 その時、

 初めて


 悟った。


 ここは──


 学校ではなかった。

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