最初の授業
「マガツ様のもとへ
連れて行け!」
正門に立っていた男が近づき、
私の手を乱暴に掴んだ。
抵抗する間もなく、
私は建物の中に引きずり込まれた。
何も言えなかった。
男の握りが、
次第に強くなる。
…それでもここは、
これから私が生活する学校だ。
初日から、
怯えているわけにはいかない。
勇気を振り絞って、
尋ねた。
「あの、
マガツ様という方は…
校長先生ですか?」
先を行く男の足音が、
止まった。
次の瞬間、
手が私の首へと移った。
息が詰まった。
「校長…?」
男の目が、
鋭く光った。
「マガツ様は
校長なんかじゃない!」
荒い息遣いが、
耳元を裂いた。
「マガツ様は神だ。
全知全能であり、
我ら全ての道を導く存在」
「我ら全ての…
父上である」
その雰囲気に押され、
知らず知らず口が開いた。
「マガツ様は
父上…」
その言葉に、
男の顔が瞬時に緩んだ。
手が離れ、
再び歩き始めた。
「二度と
そんな妄言を吐くな」
『ここは学校だ。
学校に違いない…
たぶん』
巨大な門の前に、
到着した。
男が何度か門を叩くと、
激しい音と共に
門が開き始めた。
「おお、
お前がジョディか」
部屋の中から、
響く声。
柔らかく荘厳で、
聞くだけで
安心すべき声だった。
しかし、
何かがおかしい。
理由はわからなかったが、
どこか気味が悪く
響いた。
「待っていたよ。
ジョディと話をするから、
皆、下がってくれ」
男は頭を下げながら、
退いた。
その瞬間、
見えた。
彼の動作の一つ一つから
放たれる青い光。
そして――
服が隠れて見えないほど
絡み合った
無数の赤い糸。
「本当に…
あの方と同じ目を
しているんだな」
「え?」
「いや、
独り言だ」
男は、
笑った。
「あの…
何と呼べば
よろしいでしょうか?
先生と呼ぶべきでしょうか…?」
「父と呼べ」
相変わらず、
微笑みを浮かべていた。
緊張をほぐすための
冗談だろうと、
思った。
「はい!
父のように従います。
では…
本当はなんと
お呼びすれば—」
瞬間、
笑みが消えた。
部屋を掻きむしるような
不快な声が、
響いた。
先ほどの穏やかさは、
跡形もなかった。
「これからは
お前の父は俺だ」
「いや、
元々お前の父は
俺だった」
彼の体を包む
赤い糸が、
蠢いた。
「見えるか、
ジョディ」
「私の体の糸が」
「…はい」
「お前だけが
見ているのではない。
私にも見える」
「私たちが
家族だからだ」
理解できなかった。
頭の中が、
真っ白になった。
「…あの、
授業は
いつ始まるのですか?」
勇気を振り絞って、
彼の言葉を遮った。
「ああ、
授業か」
彼は、
うなずいた。
「そう。
授業を始めよう。」
『やっぱり…
学校だったのか。』
「最初の授業だ。」
彼の視線が、
赤い糸へ向かった。
「私の体を包む
この赤い糸を—」
口元が、
ゆっくりと上がった。
「食い尽くせ。」
「…え?」
「早く。」




