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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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97 てんぷれ

 周辺街の冒険者ギルドは、それなりの大きさをしていた。記憶にあるオーラドの冒険者ギルドよりは、明らかに大きい。

 入ってすぐ左に並ぶ2つの換金窓口、4つの依頼受注窓口、2つの依頼出願窓口。

 しかし、時間帯の問題なのか、そこまで並んでいる人はおらず、少し待ったら換金窓口が空いた。

 とりあえず、道中で手に入れた魔物の核と、少しだけ持っていた魚系魔物の核を提出。


「ギルドカードを拝見しますね。」


 猫耳を生やした美人受付嬢にカードを渡す。一度、かすかに目を見開いただけで、すぐに営業スマイルに戻った。


「Bランクに海の魔物の核ですか。珍しいですが、西の方から来られたんですか?」

「はい」


 話を広げるのを面倒くさがったリュウコは、スーパー日本人スタイルの肯定ぶつ切りを繰り広げる。

 これをすると、コミュニケーションが死ぬため、友達が減る。


「ちょっと良いかな?」


 換金の内容が少し特殊なためか、受付嬢が帳面とにらめっこし始めたところで、入り口側から声を掛けられた。

 こういう時、一番強く反応するのはエリサで、声を掛けてきた相手を強くにらみつける。


「ああ、君ではなくて、そちらの彼に話がある。」


 そう言われて、初めてリュウコは声の方向に視線を向ける。

そこに立っていたのは、今まで見た中で一番身長の高い女性?の姿。

 宝塚系というのか、イケメン系の美女で、スレンダーな体形にベリーショートの金髪。赤い瞳と泣きボクロが印象的。


「君、それは君と一緒にいた女の子たちが倒した魔物の核だろう?」

「……えぇ、まあ、そうですね。」

「それを君が売るのは、どうかと思うな。」

「……?」


 どういうことだろう?パーティで獲得した核や拾得物を代表者が換金するのは、別に珍しいことではない筈だ。

 というか、それ以前に


「道中、俺達を見ていたんですか?」


 女子3人は索敵のスキルを持っていない。リュウコも、魔物以外で特に周囲を強く警戒はしなかった。

 だから気づかなかったが、このイケメン女はリュウコ達を見ていたらしい。


「ああ、たまたま見かけてね。女の子3人に男が1人のアンバランスなパーティなのが気になったんだ。」

「で、どうしろと?」

「できれば、もう二人の子も連れてきてほしいかな。」

「何故?」


 イマイチ、要領を得ないことを言うイケメン女に、リュウコは怪訝な表情を向ける。

 そこで、突然リュウコの腹部に衝撃が走る。


「セイラ様に対して無礼よ!」


 そんな言葉を聞きながら、勢いに任せて入り口から一番遠い壁まで、等速直線運動で叩きつけられる。

 当然のように木製の壁が割れ、ギルド内がざわつき始める。


「なんだ?」「喧嘩か?」「おい、アレ大丈夫か?」

「ていうか、あの女もしかして」「ああ、気付かなかったけど」

「『白百合』だ……」「やべぇな、近づくなよ。」

「てか、飛ばされた方生きてるか?」「受け身は取ったらしい」


 野次馬の言葉を聞きながら、イケメン女が『白百合』と呼ばれているの確認。それが通称なのか、もしくはパーティ名なのかは分からないが、このざわめきは中々の情報源。

 そして、解決するべき問題は、リュウコを飛ばされた事にブチ切れているエリサ。


「……あんた、何してるのよ。」

「ふんっ!セイラ様に生意気な態度取るからよ!」


 堂々と腕を組み、仁王立ちをしている少女。イケメン女……セイラと呼ばれた女の隣に立っているから分かりにくいが、身長やスタイルの感じはエリサに近い。

 燃えるような朱色の髪に、ネコ科のような釣りあがった目が特徴的。


 リュウコはそんな彼女に『蹴られ』て壁に当てられたのだ。


「こらこら、暴力はいけないよ。」


 そんな呑気なことを言うセイラに、エリサの怒りが更に加熱。

リュウコが密に魔力で体を止めていないと、今にでも二人を殺しにかかっている。


「君も、彼のような男に貢ぐんじゃなくて、我々のように強く、誠実で、美しくならないかい?君の戦いも見ていた。ボクらのパーティには、君のような強者が必要だ。」


 エリサの顎に触れながら、そんなことを言う。

きっと、これまで色々な女性をそうやって勧誘したのだろう。

 となると、今度はリュウコの方の我慢が問題になってくるわけで。

気絶しているフリを辞め、換金窓口のところへと歩いて戻っていった。


「ほう、ミューの蹴りを受けたのに立ち上がれるのか。しかし、立っているのが精いっぱいだろう?」

「次は手加減しないからねっ」


 朱色の髪の女は、ミューと呼ばれているらしい。

壁が半損するほどの威力が、手加減できているとは思えないが。

 リュウコは殆どダメージを受けていない。蹴りそのものも殆ど見えて受けて自分から飛んで壁を割って衝撃も吸収したので、蹴られた場所がほんのり赤くなっている程度。


「で、先に手を出して来たのはアンタらで、俺達は被害者なんだけど。そこんところどう思うよ。」

「女が相手だからって威勢のいいことだ。そこまで言うなら、この場で実力の差っていうのを見せても良いんだけど。弱い者いじめは趣味じゃない。」


 セイラがそう言うと、朱色の髪のミューのように、セイラに妙に距離の近い女がぞろぞろと集まってくる。

 その誰もが、目を見張る程の美少女ばかりで、露骨に矢印を向けているのが分かる。

 どうやら、これはセイラというイケメン女を中心とした女だけのハーレムパーティということらしい。


「ではこうしよう、明日の昼、第一闘技場で決闘をする。ボクらが勝ったら君と一緒にいた三人はボクのパーティに入る。君が勝ったら、三人は君のパーティだ。」

「勝利報酬が対等じゃないし、明日の予定を埋められるのが鬱陶しい。決闘というなら今から。勝った方は負けた方になんでも一つ命令できる。それでいいだろ。」

「————ふっ、まあいいだろう。」


 突然決まった決闘。

 ミリとサティがウィンドウショッピングをしている間に、事は全て終わるのか!?

 一応、めぼしいモノが纏まったら冒険者ギルドに来るよう伝えてはいるが、リュウコ達の今後はどうなる!?


―――次回、サティ、欲しかったものを先に買われて涙

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