95 異世界道中愛憎劇
リュウコ、エリサ、サティ、ミリの四人。ほとんどリュウコのハーレムパーティは、漁村を飛び出して旅に出ていた。
目指すのは大陸の中央側。一度、王国のどこかの都市に辿り着くように歩いて行った。
地図は無い。辺境の漁村では近場の地図しかなく、それは暗記して近くの街に行こうとしているが、最大目的地は王都ではない都市部。
つまりは、国境都市。
中央大陸と呼ばれるこの土地で、王国の持つ土地は多くない。
北半分の内、4分の1程度しか国土は無く、北半分の残りは『帝国』と『魔境』が占めている。
南半分は『聖国』や『公国』や『魔王国』などがせめぎ合っている。
リュウコはそれなりに地理についても学んでいた。王都で勇者たちに混ざっていた時は、それが重要な情報だったから。
半年ほど前の記憶だが、体感的には1か月前の記憶のため、それなりに詰め込まれた物を使いこなせる。
一月ほど歩くか、移動手段を手に入れればそれが半分に縮む。
そのためにも、最寄の街で物資の調達が必要。
長旅になることはわかっているのに。
「キィィイイ!!アンタはなんでそんなにうるさいのよォ!!」
「アンタの方がうるさいわよ!リューからも何か言ってよ!!」
「リューはこっち来て……二人は放っておいて。」
互いにリュウコの近くを独占しようとして、似た者同士で争い合うサティとエリサに、隙あらば横からかすめ取ろうと虎視眈々のミリ。
三人寄れば姦しいとは言っても、これではあまりにも煩すぎる。
十歩歩けば口喧嘩、百歩歩けば殴り合い。
千歩目で殺し合いが始まる。
「『メルトスティグマ』ぁ!」
「【展装:滅殺】ぅ!!」
「『サテライト』!!」
広大な草原の一角で行われる過激な殺し合い。
しかし、どんなに激しく無制限に暴れたとしても、最終的にリュウコが止めることになるため、危険は殆どない。
それでも、ちょっとのことで殺し合いに発展してしまうというのも、すこし、いや、かなり問題があるというもの。
「第一回、旅の道中規則成立会~」
「「何それ?」」
「パチパチ~」
疑問符を浮かべる二人と、ノリの良いミリ。
ノリが良いのは良いことなので、リュウコポイントを進呈1点。
「1つ、仲間内の戦闘は、一日一回。もちろん、全員に一回ずつではなく、どんなパターンでも1回だけ。」
「はい!二人が戦って余ったら、リューと戦うの?」
「別に戦う義務ってわけじゃないから、そこは自由にして。基本的に俺は拒否しないけど。」
「はーい!」
リュウコが本気で望む場合、三人はそれを強引に拒むことは無い。
多少、我を通そうと工夫したり、ある程度強引には進めるが、この時のリュウコにはそうしなかった。
なぜなら、それ以上の利益があると感じたから。
(((他二人が潰しあえば、リュウコを独占できる)))
リュウコの予想とは違う形で、予定外の協定が完成した。
互いに気に食わないことがあっても、残り一人になる事を目的とした我慢で、戦闘は劇的に減った。
結果として、良いようになったとは思っているが、リュウコにとってそれは薄氷の上の平穏でしかなく、本質的にはまるで解決していないことに気づかない。
鈍感系というよりは、現実逃避をしているだけの弱い男である。
◇◆◇
「『メルトスティグマ』『ドライブ』!」
「『メルトスティグマ』『サテライト』」
道中、やはりというべきか、魔物の数はかなりの量になる。
というのも、この大陸の中心部は魔境と呼ばれる無法地帯。
そこに近づけば近づくほどに、魔物の数は多く、質が高くなる。
今の地点は以前、コロポの里から脱出した際にいた平原と比べて、もう少しだけ中心部に近づいている。
つまるところ、国境は近く街の近くに来ているということ。
「こんな化物がうじゃうじゃいる場所に、人が住んでるものなのね。」
「ええ、魔物が強いからこそ高位冒険者なんかが集まるのよ。」
「冒険者の聖地って、話は聞いたことある。」
そんな雑談をしながら、上級の魔物を殴り殺す。
それなりに強い程度の魔物なら、簡単に殺せるだけの経験を積んでいる。
特に、魔法少女二人はリュウコとの特訓に加えて実戦経験を積み、少しずつその実力を開花させつつあった。
「あのゴリラくらい強いやつが出ないかな。」
あの草原ほどではないが、草木の生い茂った林の中。
人間が通った形跡が見える浅い獣道を歩きながら、手元でロクスの核を弄る。
久々に開いた『異界』の魔法。
普段は回収した核なんかをそこに入れているのだが、色々なことがあって現在、リュウコは魚たちとロクスの核しか持っていない。
その事実を除いても、ロクスの魔核は美しく、何度見ても飽きない。
つまり、リュウコは高位の魔物の核が、もっと欲しいのだ。
「コロポソードはまだまだ本調子じゃないし。」
リュウコの記憶USBと化していたコロポソードは、その形状を取り戻し、リュウコの手元に収まってはいるが、それはあくまで剣としての形がそこにあるだけで、魔力なんかはまだまだ回復していない。
魔物武器の魔力を回復させたいのなら、上位の核を食わせるしかない。
まだまだ分からないこともあるが、このすっからかんの状態のコロポソードでは、紙を切るだけでへし折れ、その修復にも核が必要になることだけはわかる。あれだけ硬度と強度に全振りしていたのに。
「次の街までに、何が取れるかなぁ」
そう言いながら、リュウコは三人が倒していった魔物の核を集めるために、とにかく動きまわった。




