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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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91 深海よりの使者

 高台から見る魔物は、目算で100メートル以上の体長をしていて、まるで青いウミヘビのような見た目をしていた。


「リヴァイアサンみたいなやつだ。」


 厨二経験者ならだれもが見たことのある、悪魔だかの姿。

しかし、それは殆ど当たっている。


 その魔物の名前はディープロクス。深海種の最上級。階級だけで言えば、昔に戦ったエンペラーウルフの一つ下。深海種の超級になるとリヴァイアサンになる。


 しかし、舞台は海で、相手は超巨体。

強さの階級と、討伐の難易度は時に入れ替わる。

階級と種族をちゃんと把握しておくことが、冒険者が長生きする秘訣である。


「……」


 数瞬、何かを考えていたリュウコだが、それでも即座に切り替えて、海に向かって走り出す。

 それを追いかけるように、エリサとサティ、少し出遅れてミリが走った。


村を一足で飛び、一気に海へ。

 足元に膜を張って、水上歩行も可能にする。


失踪前のリュウコには存在しなかった発想。

 海という新天地、記憶喪失という新鮮。それによって、リュウコの戦闘スタイルには新たな風が吹いていた。


その一つが、


「『足場生成・乱』」


 六角の盤が出現し、リュウコを中心として広範囲の海面に浮かび上がる。

 幅は足の幅よりも少し大きいくらい。

 海に浮いていると言っても、リュウコ達の体重で沈むこともなく、激しく揺れてもその位置から動くこともなかった。


「これ、何枚くらいあるの?」

「だいたい5000枚。界力の応用だから、もっと大量にも出せるけど。」

「空間を使う力、よね?え?どうなってるの?」


 海上でありながら、力強い足場を生成する。

それを応用し


「『足場生成・空』」


 似たような大きさの多面体が、空中に出現する。

ゆるやかに暴れるディープロクスの周囲を囲むように配置されたそれは、立体機動の足場。


「三人とも、見ていてね。」


 その場で全力の跳躍をぶちかます。

宙に浮く多面体に向かってぶつかると、まるでメジャーリーガーのスーパーボール暴投。

 残像だけが見える反射でディープロクスの体に体当たりする。


―――ビシィイイイイッッ


 当たった箇所から、噴水のような血が噴き出すと同時に、別の多面体に跳ね返ったリュウコが、更に加速しながら跳ね回る。

 多面体、魔物、多面体、魔物と、とにかく乱反射しながら、浅くないダメージを与える。

 大体30秒ほど、全身傷だらけになって力なく横になったディープロクスと、真っ赤になった水面。

 やはり血によって赤くなることが無い足場の上で、その様を見守る三人。

しかし、最上級の魔物が、ただそれだけで倒れることはなく。


『GIIIOOOOOOO!!!』

『『『『AGYAGYAGYA!!!』』』』


 大量の傷口から飛び出して来たのは、白い紐のような生物。

それは、ディープロクスの体に寄生する虫。アニサキスのようなもの。

 分類で言うと寄生種の上級、名前はロクス・パラサイト。


「「『メルトスティグマ』!」」

「【展装・滅】」


 しかし、襲い掛かる相手はか弱い女の子ではない。

リュウコによって鍛えられた強力な女戦士。

 いや、ここまで来たら美少女戦士と言った方が良いかもしれない。


変身したミリとサティはそれぞれで一体ずつパラサイトの相手をしつつ、エリサは何故か自身に寄ってきた複数体のパラサイトを相手取る。


 エリサの【展装】も、この数ヶ月で成長していた。

手に纏っているのは漆黒の炎。以前であれば、手に炎を纏おうものならそのまま手が溶けて消える程の熱を発し、自滅していた。

 しかし、この炎はエリサに牙を剥かない。


「破技・千手刀」


 リュウコがたまに使う創作武術を使いだす。

簡単に言えば、無数に見える手刀の嵐。

 千というのは八百万のように大きさの象徴的な単位でしかなく、手刀そのものの回数は100回程度。

 しかし、目にもとまらぬ高速攻撃によって、パラサイト達は細かな肉片に様変わりした。

 

「私の方が脅威と判断したのかしら。魔物にしては見る目があるわね。」


 魔法少女二人、特にサティの方を意識しながら、そんなマウント台詞をぶつける。

 こればっかりは、リュウコがどう言おうと、誰に何を言われても、止まることは無いだろう。


 そんな、女の戦いの最中にも、リュウコの討伐は終わりに向かっていた。


『GYAAAAAEEEEEE!!?』


 暴れ狂う体力も削られ、大量の出血と身体の損壊に苦しんだディープロクスは、そのまま力なく倒れる。

 寄生虫を放つ余力も無い。そんな死に体に、リュウコは毛ほども警戒を解かず、ただひたすら、ジッと見つめる。


 その先に何が起きるのか、理解しているかのように。



――MWMWMWMW




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