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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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86 悪鬼羅刹

 『サテライト』と読んだ星。それが、リューとミリを囲んで十数個。

その正体を見極めて、リューは静観を貫く。


「『ストライク5』!『ジャイロ3』!『レボリューション7』!」


 ミリの構えたロッドはまるで奏者のタクト。

リューに向かって突撃する星、その場で回転する星、一定の距離を取って旋回する星。

 

「『レイ2!』」


 合図と同時に、2個の星がリューに向かってレーザービームのようなものを放つ。

 威力の程を確かめたいが、条件に触れるため様子見の回避。


「『ドライブ』!」


 『サテライト』の様子を見ていたら、サティが戦線に復帰してきた。

 旋回していた星を足場にしつつ、三次元的な動きでリューの周囲を飛び回っている。

 

「うん、悪くない。イイね。」


 そんなことを口に出しながら、リューは横に手を伸ばす。

まるで、棚の上の物を取るくらいの気軽さで掴んだのは、サティの足。


「けど、仕掛けるなら目が慣れる前、そうだね。5歩目かな。」


 そう呟くと、アッパーのような軌道で腕を振り、サティを旋回する星のいない真上へと投げる。


「きゃぁあああ!!?」

「サティ!!」

「はい、仲間がやられてもよそ見しない。」


 上空に放り投げられたサティに注意を向けてしまったミリの一瞬の隙を見逃さず、旋回する星の内5つに当たりを付け殴る。

 硬質のプラスチックくらいの強度で、簡単に砕くことができた。


「ぐっ!?」


 どうやら、『サテライト』へのダメージは本人へフィードバックするらしい。

 ミリの体に、細かく広いヒビのような傷が走る。


「おっと、壊すのはダメだね。ごめんね。」

「大丈夫ッ!リューにはもっと痛い目を見てもらうから!」


 そう宣言するミリの言葉で、リューは破壊した星の他に、旋回していた星の数が少ないことに気づく。


「『スーパードライブ』!!」


 エンジンの駆動音が響き渡り、轟音がリューの耳を刺激する。

同時に、ミリの体の傷は更に広がり、流れる血の量が増えた。


「ィィィイイイイイイッッ!!!」


 複数の星を足場に上空に飛ばされたサティが戻ってくる。

脚力と、強化スキルと、重力と、恐らくは『サテライト』による未知の助力が存在して、サティの落下速度は凄まじい。

 すべてを込めた渾身の一撃というものを体現している。


 だからこそ、避けるつもりは無くなった。


「やぁあああああ!!!」

「—————ッ」


――――ドォオオオオオッッッ!!!

 

 十字に交差させた腕にぶつかるサティの拳。

リューの全身を貫いて地面に流れるパワー。

 クレーターが弾け、大地が揺れる。


「つぇぇえええええい!!」

「ぉぉおお!」


 サティは掛け声と共に、反対の手を突き出す。

それは予想外の一撃、無言で悠然と耐えようとしていたリューも、つい声を出してしまう。


「『フルドライブ・バースト』!」


 覚醒に次ぐ覚醒。リューという異次元のキッカケを糧に開く華。

ミリに追いつくために、サティの『魔法少女化』はより深く進化する。




◇◆◇


 サティとミリ、二人は地面に倒れ、空を見上げていた。

リューに攻撃を与えたという実感と、達成感を反芻しながら、無想する。


「ステップで言えば、もうほとんど残ってないね。」


 服が破れ、赤くはれ上がった両腕をさすりながらリューが呟く。

魔力で強化すれば明日には治っているであろう傷だが、リューは一つの勲章として少しの間残すつもりでいる。


「続きは、また明日?」

「うん、もう完全に体力が残ってないみたいだからね。」


 二人の状態は、疲労だけでない。魔力の過剰使用による疲弊と、魔法少女化の副作用のようなモノ。

 そして、【固有スキル】に目覚めたことの反動。


 これに慣れ、回復するには、実際のところ一週間以上もの休息が必要になる。


「どう?今の私達、リサよりも強い?」

「いや、それはまだだね。」


 リューは二人に、リサと自分の強さの指標を示す。


「俺とリサを100としたら、君たちは合わせて1くらい。」

「「えぇ!?」」

「ねぇ?リサ。」


「えぇ、まったく問題なく対処できるわ。アンタも、遊びすぎだから舐められるのよ。」


 リューの声かけに、リサは簡潔に答える。


「……いつから?」

「最初から。アンタたちみたいな泥棒猫候補と三人っきりにするわけないでしょ?」

「……全然気づかなかった。」

「当たり前じゃない。アンタらに気配を悟られることなんてしないわ。それに」


 前置きと共に、リサは指を鳴らす。

それと同時に、二人の見上げている空に幾本もの線が入る。

 それは、ひし形の集合体のように見え、空の色が薄く赤みがかる。


「あんだけ大暴れしておいて、村人が全然見に来ないのに、違和感は無かったの?」

「まさか、結界?」

「そ、周囲への音と視覚の阻害。魔力の流れもこの中に収めて、野次馬対策もした。」

「レベルが違う……」


「やっと理解したの?ちなみに、リューの全力は私よりもヤバいから。」


 そうとだけ告げると、リサは結界を解除し、すたすたと森の奥へと消えていった。


「……まぁ、気を落とさずに。二人の成長速度はかなりのものだから、俺達にもちゃんと追いつけるって。」

「リューは、どうやってその力を身に着けたの?」

「それは、えっと……あれ?」


 ミリの何気ない質問に、リューは答えられない。

それもそのはず、リサによって記憶を上書きされ、リューに以前の記憶はない。自分が何者なのか、以前は何をしていたのか。

 しかし、今のリューは二人との闘いによって闘争本能を刺激され、戦闘によって記憶のささくれに指が掛かっている状態になっている。

 だから、


「俺は、だから、えっと、勇者の……」

「え?」

「悪魔、魔物を倒す……勇者を?ぁああ?」

「だ、大丈夫?リュー?」

「オレ、俺、俺、俺、俺は、悪鬼……」


 頭を押さえ、目を血走らせながら、リューは、リュウコは、その記憶を引き起こそうとする。


 錯乱した状態のリュウコは、二人を置いてどこかへと消えた。

 

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