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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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85 衛星の魔法少女

「「ぜひぃ、ぜひぃ……」」


 滝のような汗を流し、地面に手とついて荒い息を整える二人。

対するリューは一切汗を掻いておらず、二人に目を向けることも無い。


『リューに触れる』それだけの条件に、二人はここまでで4時間を要している。

 そして、未だにそれは達成していない。


 二人が倒れ、美少女にあるまじき顔をしていることも、リューの配慮によって見ないことになっている。


 4時間の鬼ごっこの間、少しずつ『メルトスティグマ』の練度が上がっているのか、二人の髪色と目の色は更に彩りが深くなり、サティのピンクの髪には緑が差し、ミリの水色の髪には黄色が差している。

 仮称『魔法少女化』が進んでいると見てよいだろう。

 そして、4時間もの間変身をし続けていることから、エネルギーの残量みたいなものは存在していないのかもしれない。


「なんで、そんなに疲れてないの……?」

「ごひゅうぅうう」


 とにかく呼吸に集中して、喉が鳴っても構わないとばかりに豪快に息を吸う音が響くが、リューは特に答えない。

 人にものを教えるという初めての体験に、考えを巡らせている。


「そ、そろそろ休憩……」

「休憩は無いよ。俺に触れてないからね。」

「そんな……」

「本当に無理そうだなって見極めたら、そこで訓練は終了するよ。その場合は俺はもう訓練には付き合わないけどね。」


 涼しい顔のまま、リューはそう告げる。

これは脅しではない、ただの事実。ここで諦めるのなら、二人の訓練に付き合うつもりはない。


「「……」」


 二人は荒い息を整えながら、気合の入り直した目をリューに向ける。

その目を見下ろしながら、リューは少し微笑む。

 普段のリューなら想像もしない、少しの高揚。

二人の体に力が戻ったのを視たら、手を向けてくいッと一度だけ甲を見せる。


「……ドライブ!」

「……ストライク!」


 サティは、一度強めの振動音を発した後、見るからに動きのキレが良くなった。今まであった、運動神経の弱いぶきっちょなムーブが薄まり、練度の高い体の連携から攻撃を繰り出すようになってきた。

 ミリは腰に、扇風機のファン部分のようなものが出現、周囲の空気を巻き上げているのか吸っているのか、轟音を鳴らしながら稼働するソレは、今のところただの飾りだ。

 

「……良いね。」


 サティは、小回りの利く動作ができるようになった。緩急のある動きで、次手の想定が立てにくい。

 ミリの腰にあるファンは、加速と回転の両方の駆動を可能にする補助具で、バレエダンサーのような回転力のある動きをしはじめ、意識の攪乱に良い効果を見せた。


「———ッ」


 攻防は1分に満たないものだが、今までの4時間を超える体感時間を要するほどに集中し、思考し、欺き動いた。

 だからこその結果と言える。


 避けることに注力していたリューの意識の隙、肘のほんの2ミリ程度に、かすり傷を負わせた。


「よし、じゃあ休憩しても良いよ。」

「——まだッ!!」

「————やる!」

 

 流れるような二人の連携も、少しずつ滑らかに、そして鋭く速くなっていく。

 休憩しても良いという言葉に甘えず、力強く地面を蹴る姿は、木漏れ日に照って美しい。


「ドライブにストライク。イイね。もっと他にはある?」


 獰猛な、それでいて輝くような目で二人を見るリュー。

その視線に、二人は今までの違和感のようなものを理解した。


 リューは、この瞬間まで二人の事を見ていなかった。

視界に入っていないとか、存在を認識していないとかではない。

 端的に言うと興味が無かったのだ。


 それに気づいた二人は、リューに失望したか?

逆だ。

 違和感が解消され、リューの視線が改めて自分を見ていると理解した時。


「「————ッ」」


 二人の体に、衝撃が走る。


「「オーバーブースト!!」」 

「ぉお、じゃあ、勝利条件は攻撃一発ね。」                                                      


 それぞれのメインカラーと同じ色のオーラを滾らせ、更に数段階の速さで駆けまわる。

 しかし、速さに振り回されている印象は無く、それぞれの強みは更に強化されて活かされている。

 そして、それを見て尚リューの提示する条件は『攻撃一発』

 かすり傷ではない、クリティカルな一撃を求めている。


「スッと一回転」


 『天地』をひっくり返す。そんな錯覚を覚える程、滑らかに上下を反転させられた二人。

 やったことは簡単、地面から片足が離れている瞬間に、地面に触れている方の足を掴んで頭上目掛けて動かすだけ。

 当然のようにやってのけるが、リュー自身にこの技術の知識は無い。全ては反射。


「ずぁ!?」

「てぃやぁ!!」


 サティは転げたが、ミリは腰のファンによって空中に力場を展開。上下反転の状態でもバランスを崩さずに、腰の入った拳をリューに向ける。


 しかし、距離を取ってしまえば手は届かない。この反転した状態で自由に移動できるほどの練度は無く、地面は依然リューの味方。


「そのまま、もっと行こう。」


 獰猛な笑みに魅せられ、ここまで二人三脚のように成長してきた二人の歩幅に差が出る。


「ぁぁぁああああッ!!」


 腹の底から声が吹きあがり、脳の髄がパチパチと弾ける。

ユニークでスペシャルなバースをエクスペリエンスして、ミリの中の『可能性』が産声を上げてはじける。


「『メルティ・ロッド』!!」


 召喚したのは、魔法少女のステッキ。『メルト・スティグマ』が正式に、ミリを魔法少女として認めた印。


 つまりは、【固有スキル】の萌芽。


「『サテライト』!」


 リューは、大量の星に囲まれた。

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