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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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71/85

71 今日から裏乃キミトは!!

 ひと騒動あったキミトは一人医務室で横になって震えていた。


 あれだけ必死になって走って逃げたというのに、当然のように捕まって死にかけ、偶然にも騎士団長が来てくれたおかげでギリギリ助かったという奇跡。

 ミサキ先生を始め、偉い人達に接近禁止とは言われてはいるのだが、あの狂人シオンがそれを守るとは思えない。

 目が覚めてから数時間立つが、手足に力は入らず節々が痛い。

 それが、スキルの長時間使用の後遺症なのか、氷漬けになったせいなのかは分からないが、とにかくキミトは未だに苦しんでいた。

 

「よっす。見舞いン来てやったぞ」


 雑に扉を開けて入ってきたのは、佐藤タツミチ。

佐藤三兄弟とは別の佐藤で、回りからは三兄弟の四男扱いされている。


 スポーツをやっていたということでガタイが良いのだが、如何せん身長が低めで目立たない。この異世界でも物理組に埋もれて隠れていた。

 

 ヤンキーや不良というわけではないが、素の粗雑さが異世界という環境の変化でモロに出ている。

 

「これ果物。やっぱ異世界だなぁ。なんだこれホント。」

「わぁ、城下町とかに売ってたの?」

「おぉん。お前へのお見舞い代を巻き上げて買ってきたぜぇ」


 やはりこの男、性質の悪いヤンキーかもしれない。


「アレルギーとかあったか?ま、この世界の食べ物なら大丈夫かもだがな。」

「食べ物は甲殻類だけかな。柿は苦手。」

「じゃあこのバナナもどきを食え。」


 差し出されたのは本当にバナナに見える緑色の果物。

赤い斑点が毒々しいが、露店が食べ物として売られていたらしい。


「来がけに一本食ったけど、まあ食えた。」

「もはや土産ですらなくなってる……」


 既につまみ食いされていた事実に困惑している。

机の上に置かれた、本当に見たことが無い果物の籠。


 普段の食事では特に気にしていなかった、異世界の食材の現物は意外とショッキングで、無い方の食欲が更に失せた。


「まぁありがとう。なんか話していく?」

「んー、暇なら何か話すか。」


 タツミチは自分たちの班の受けた依頼の話をした。

街道沿いに出てくる熊獅子の討伐を受けたらしく、勇者のセイヤを含めた3人で行ったらしい。


 話を聞く限りでの勇者の活躍というのも上位冒険者がいないと危険とされた魔物を一人で倒したということらしい。

 問題は、十五分程度で倒した熊獅子のことはタツミチ達に頼んで、そのまま次の依頼場所に向かったということ。

 

 勇者セイヤは複数の班をハシゴしているらしい。

そうすることでオーバーワーク気味ではあるが、実力を高めているとのこと。


「あいつ、生き物に対する攻撃なのに容赦が無さすぎるんだ。普通もっと、こう躊躇うだろ?」

「あぁ、うん。確かに少し覚悟がいるよね。」

「噂じゃ、盗賊の討伐も簡単に終わらせたらしい。十人以上を皆殺しにしたって。」

「殺してはいないよ。」

「「どぅうえ!!?」」


 突然後ろから声が聞こえて、タツミチは大きな声を上げて振り返る。

それだけではない。タツミチを見ていたはずのキミトすらも、突然の声に驚く。


「やぁ、大丈夫かい?」


 そこに立っていたのは、噂の勇者セイヤ。

ニコニコと人慣れしたような笑顔をたたえて、先ほどの陰口なんて気にもしていないような態度をしている。


「大丈夫。ケガは魔法で治癒してもらったし。暇はタツミチ君が解消してくれてる。」

「そっか。僕も依頼の合間に寄っただけだから、気にしないでね。」


 本当に複数の依頼で様々な場所を駆け回っているらしい。

い疲労感を醸し出していながら、その様子はむしろ生き生きしている。


「セイヤ君こそ休んだ方が良いんじゃない?」

「あっ……」

「いや、僕は休まなくていいよ。絶対、休まない。」


 キミトの声に、鋭く返事をするセイヤの声と視線は、先ほどとまるで変っていた。


「僕はこの世界の悪の全てを消滅させる。そのためには昼夜も構っていられない。」

「悪?」

「聞いただろ?この世界に蔓延る魔物たち。その上に立つ魔女や魔王なんかと、魔族と呼ばれる敵。そういうやつら全員、僕が滅ぼして、皆を無事で元の世界に戻す。」

 

 セイヤの圧に負けて何も言い返せない。

その話自体はキミトも知っている。

 魔物とは別であるが、この世界には21人からなる魔女と呼ばれる人種がいて、更に7人の魔王と3人の魔神が存在するということ。

 また、魔王国では魔族と呼ばれる人の魔物が人間のように生活しているとか。

 

「……そう。」

「キミトも、タツミチも、僕が守るからな。」

「俺ァ要らないな。自分の事は自分で守る。」


 驚いた顔をうまく隠したタツミチは、セイヤ相手だろうと強く睨んで凄む。

 少し頭が足りないのか、それとも理性が足りないのか。たまにすごい目をしていることがある。


「いいか。キミトも俺も、お前の助けなんて要らねぇ。」

「そうかい。でも、僕はやる。嫌がられてもね。」


 二人の視線、気配、魔力は爆発寸前に見えて、キミトは冷や汗を掻く。

しかし、数秒の睨み合いの末、二人は何事も無く部屋を出ていった。


「あ、あ、焦ったぁ。」


 一人の時間に安心感を覚えることになるとは、数秒前なら思っても見なかった。

 一息ついてからタツミチのおいて行った果物を一つとって食べる。


「ぶげばぁっ!!?」


 どうやらソレは、キウイのように外皮が刺さるタイプの果物だったらしく。口内の痛みに噛みついた果物を吐き出すことになった。


 

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