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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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66 裏乃キミトボール

 スキルには大きく三つの区分があり、常時もしくは自動発動の『パッシブスキル』と、任意発動の『アクティブスキル』。

 そして、その人特有の珍しい【固有スキル】の三つ。


 キミトが持つ【裏スキル】は、分類的には【固有スキル】ともとれそうではあるが、その実態はまるで不明。

 特に、【固有スキル】は例が無くマニュアル化もされていないほど希少なため、使用方法はどうしても独学に近くなる。


 そんなスキルについて、まだ周りに教えていないキミトにとって、外で監視無く過ごせ、自由に実験ができる機会というのも、非常に貴重で重要なものだった。


 だから


「おっしゃぁ!!オーク相手でも勝ったぞ!!」


 ゴブリンの依頼を完了し、多少の自由時間があったため、キミトは佐藤(兄)と共に街の外に遊びに出ていた。


 自分がどれだけ強くなったのかを試したい佐藤と少し離れた場所で、自分のスキルの実験を始めた。


裏スキルの発動は全て同じで、スキル名を唱えるだけ。

 しかし、それはつまり口を使えない状態だと無力ということ。


実験はそこそこに、実践を想定した備えに力を入れる。

 きっと裏スキルというチート能力はそこまで長く秘匿できない。身内なり、これからの敵なりにバレて対策される。

 そうでなくても、スキルや魔法の詠唱を妨害するのと同時に妨害されてしまうというのは致命的だ。


「シュート!!ショット!!やあああ!!」


 作戦1、別単語を使ってスキルが発動するかどうかを確認。

結果は不可能。正式な名称でなければ発動する気配は無かった。


「いでででで!!解除解除解除!」


 作戦2、【裏スキル:虚飾】によって、体の別部位に口を発生させる実験。

身体をそのまま膨張させることや縮小させることはできたが、部位や器官などは難易度が高く、手に口を作ろうとしたけっか、手が裂けてしまって痛い思いをした。


 同じように変形させて見た目は戻したが、中の方がまだじくじく痛い。


少し涙目になりながら、別のスキルの実験を始めようと気を取り直す。


 キミトの持つスキルの数は、日に日に増えていき今では詳細を把握していないスキルも多い。


「タイトルをつけるなら、『毎日ログインボーナスでチートスキル!クラス転移で陰キャな僕が最強勇者になっちゃった!?』だな。」


 などと調子に乗っていたが、ここまで頻繁にスキルが増えていくと覚えるのも一苦労だ。

 そして、当然のようにキミトにとって都合のいい能力ばかりではないようで


「【裏スキル:社会的不公正】———ィィィイイイイイイ!!!?」


 ヘソから四肢に、電流と火と毒と、苦痛を煮詰めたような何かが這い回る。

皮膚の下を、ムカデやゲジゲジのような節足の虫が這いまわるような、不快感。

 あまりにも苦しい1秒間を経て、キミトの感覚は正常に戻る。


「おいっ!?大丈夫か!!」


 キミトの悲鳴を聞いて駆けつけてきた佐藤の顔が、歪んで見える。

視界が歪んでいるのは、涙が流れているからか、それとも眼球にダメージがあるからか。

 まるで分からないが、とにかく今は息を整えるので精いっぱい。

 実は苦痛のあまり死んでいたと言われても、疑えないほどの落差。


「ちょ、おま、大丈夫か!?拭くもの、とにかくなんか持ってくるから!!」


 そう言って遠ざかる佐藤の気配と声を横目に、何故か湿っていくズボンの感覚を感じて、キミトは気絶した。



◇◆◇


「ごめん、色々ありがとう。」

「気にすんなって。誰にも言わないし。」


 新品の服を着ているのに、全身が気持ち悪いまま、佐藤の顔も見れずにうつむいている。

 街中の噴水、その縁に座って気を紛れさせるための雑談に、花を咲かせる。

道行く人は特に気にしていないが、キミトは羞恥心から、後ろの噴水に飛び込みたい気分でいる。


「【固有スキル】ってやつだろ?スゲーじゃん。」

「……使ったら苦しいだけのスキルなんて絶対要らない。」

「……それはそうだな。」


 前向きな佐藤も、流石にお手上げらしく、しばらくは少し重い沈黙が続いた。


「相手に使えたら強いデバフになるかもだけどなー。」

「デバフって……佐藤君ゲームとか好きなの?」

「ん、まあ、普通くらい。黄色いネズミとか、笑顔のスライムとか、そういうの」

「アレを敵にぶつける……試していい?」

「え、絶対に嫌なんだけど。」


 それから十分ほど、他愛のない会話をしてから、二人は今日泊まる宿に戻ることに、まだ日は高く、そこまで時間は経っていないが、キミトは疲れ、佐藤は何となくついてきた。


 宿泊予定の宿には先に調リンが戻ってきているらしく、どうやら1人部屋で寝ているらしい。

 佐藤とキミトにゴブリンの処理を任せてすぐ、街をぶらぶらするわけでもなく戻ってきたようだ。


「金も持ってきたから、てっきり買い物でもしてるかと思ったんだけどな。」

「友達がいないから、そういう気分じゃなかったんだろ。」


 男子二人は同じ部屋で、キミトは改めて綺麗な水で体を拭く。

この世界に来てからというもの、湯浴みや水浴び程度で湯舟に浸かっていないのが数少ない異世界の不満点だ。


「どうする?着替えてからまた、街に買い物でも行くか?」

「剣とか、魔法の道具みたいなのもあるって。行く?」


 主体性の無い男二人、何も言わずに着替え終わってからも、30分ほど、それぞれのベッドで横になっていた。

 静かな昼間、外の喧騒もうっすら聞こえる、防音はそこそこ良い部屋の中。

疲労感と涼しい気温が相まって、ベッドの柔らかさが極上に感じる。


「ぐす……すん……えぐ」


 そんな室内に、うっすら響くのは女の泣き声。

それが誰のものであるのか、見合わせた二人の顔から、どちらも同じ人を想像しているのが分かった。


「「シラベさん?」」

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