06 自由な点
いけそうなのでまた後五話、行っときましょう
一つの個別指導室に移動して、魔法の実演を見せてもらう。
そこそこ広々とした空間だが、数人の人がいるだけでかなり窮屈に感じてしまう。
「ここでは、あなたたちに覚えてもらう基本的な魔法を教えていきます。」
シータ副団長が杖を振ると、杖の先には水の塊が浮き出す。
「こういう【属性】魔法はそれぞれの資質に応じて難易度も変わってくるのだけど」
次に、杖を持っていない方の手をかざすと、そこには光の塊のようなものが浮き出す。
「この【無】属性魔法はどんな人でも練習すれば使いこなせるようになるとても良い魔法なんです。その分、上達するための距離が長く、他の【属性】魔法に比べると難易度も高いことがあります。」
光、つまりは魔力の塊なのだろう。
白と透明の間のような色味をした塊。
先ほどの授業でも触れられた魔力というものは、どんな物質にも変換可能で、属性魔法とは魔力の変換反応の事を差す、と言っていた。
その変換のための【属性】も、ステータスに記載があるから、リュウコは自分の適正もやはりわかっていない。
「では、手のひらに魔力をかき集めて、私と同じくらいの大きさにしてみてくださいね~」
魔力の操作に関する授業が始まり、各々自分の思うままのやり方で手のひらに魔力を集めていく。
どうやら、最初にステータスを見た水晶のお陰で魔力の存在は肌で感じたことがあるらしく、みんな形や大きさに差はあれど、簡単に魔力を集められた。
「これが、超能力ッ!漲る!スタ〇ドパワー!!ふはははは!」
テンションがやたら高いのはキミト。
魔力を器用にこねくり回して、人型まで作り始めている。
「キミト君は魔力の扱いが上手ね。けど魔力量が少ないから気を付けて」
「ふぁ……」
そんな忠告の直後には、力が抜けて倒れ込むキミト。
どうやら説明にあった魔力切れというものを起こして気絶したようだ。
リュウコが壁際まで運び、安静にさせたところで訓練に戻る。
キミトを運んだことで少し離れた場所で手元に魔力を集めてみる。
やはりというか、想像通りというか、簡単に集まった。
米櫃の中の米粒を手のひらでかき集めるくらいの手軽さで出来上がった、バスケットボールくらいのサイズの魔力の塊。
それでも、やっぱりリュウコは落ち着いていた。
他のことなら一喜一憂していたのに、こういう非日常感あふれる光景にはあまり魅力を感じていないのか。
「ここからは魔力を練る訓練をしていきます。まずは~」
魔力を粘土に見立て、とにかく伸ばして重ね、伸ばして重ねを繰り返す。
適度に捩じりを加え、拡げて重ねて。
そうしていくうちに、魔力は徐々に硬度と質が高まり、魔法も強いものが放てるようになると。
「試しに、練っていない魔力と練った魔力で同じ魔法を撃ってみますね」
杖を壁に立てかけ、地面から土の塊を盛り上げさせ、二つの的をつくる。
両手をそれぞれ的に向け
「【火球】」
どちらもテニスボール程度のサイズで、かつ威力もキャッチボールレベル。
しかし、着弾した時に差が明白になる。
左、おそらく魔力を練っていないほうの火球は、的にあたると的の周りを炎上させ、数秒程度で鎮火した。
しかし、右の魔力を練っている方の火球は、的に当たるとその時点で的を粉砕し、破片の一つ一つに炎を纏わりつかせ、一瞬で消し炭にしたうえ、数十秒もの間、その場に火が残り続けた。
「このように、ひと手間加えるだけでより高威力の魔法が扱えます。」
二つの威力の差は一目瞭然。
それを見た生徒たちは各々訓練に励む。
「———」
手の中で魔力をこねくり回し、練度を高めていく。
それだけではなく、左右の手のひら、体から離れた場所。
色々な箇所で魔力の塊を練り上げる。
「リュウコ君。ちょっといいかな」
声を掛けられて集中を解いたリュウコは、声を掛けてきたシータ副団長を見る。
にっこりとした笑顔を向けてきてはいるのだが、声も雰囲気も少しだけ怖い。
そのまま、無言で部屋を連れ出され、別の個別指導室に連れていかれた。
◇◆◇
「やっぱりこうなっちゃったか~」
「すいません。」
シータ副団長は困ったようにそういう。
そのため、リュウコも反射的に謝ってしまう。
別に、リュウコが悪いわけではない。しかし、リュウコの異質さは誰の目にも明らかだ。
騎士と渡り合う技量に、魔法の複数展開を可能とする器用さ。
天性のものとはとても思えない。
「とにかく、国王陛下に打診してみる。できれば、みんなとは離れさせたくないけど。」
シータは考える。
(このまま、ステータスが無い者を公表すれば他国、特に神聖国からの風当たり、敵意が激しくなる。そうなれば魔王国との闘いどころではなくなってしまう。)
いくつもの仮説、想像が映し出されては、現実的に起こりうる可能性を持っていることに冷や汗を流す。
リュウコが無力な子供であれば、ここまでの思考は必要なかった。
しかし、その技術、戦闘能力は明らかに勇者の中でも上位。
となれば、戦力に数えない方が問題。
その矛盾、天秤。シータの胃袋に大ダメージ。
「ともかく、あなたはここで自主練!後でミラを連れてくるわ。」
なんということでしょうか。
ただ練習していただけなのに、リュウコは監禁されてしまいましたとさ。
「魔力か……」
シータも離れ、個別指導室に一人になったリュウコは、その場で座禅を組み瞑想する。
自分のコレがどこから来たものなのか、よくわからないが、元々節約のために読んでいたネット小説などから、現況の仮設はいくつか頭に浮かんでいる。
例えば、自分の前世がこの世界の住人で、武術や体術、魔力の使い方に覚えがあるとか。
例えば、自分は巻き込まれて転移した枠で、見えないだけのチート能力があるとか。
想像上だけではあるが、そんなことを考えては、少しニヤッと笑って無表情に戻るよう努める。
もう少し、論理的な原理について教えてほしかったところだが、今は自分のペース。自分の認知の中。そこでどれだけ魔力を練り上げられるか。
自分はどれだけのことがやれるのか。
その底が知りたい。
「集中」
座禅の上で手を組み、リラックスする。
全身に流れる血流を意識し、そこに貯まる魔力を認識する。
そもそも、魔力という物に対しての認知が足りていない。
元素なのか、エネルギーなのか。人間は体の何を使ってそれを認識しているのか。
その知識がまるで足りていない。
だから、今はただ集中して、自分の中を視ている。
「———」
何か、核のようなものを見た。
自分の心臓。その奥に。
「やば」
焦ったリュウコは、咄嗟に目を開け、座禅を解いた。
視てはいけないモノを見ようとした。
おそらくあれは、リュウコの深淵だった。
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