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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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44 展装

「ちょ、あんたどうしたのよ、その顔。」

「いえ、ちょっと夜更かししまして。」


 翌日、ギルドで合流したエリサに指摘されたリュウコの姿は、まさにボロボロ。

 髪はぼさぼさで目の下にはクマ。覇気がまるで無いのはいつもの通りだが、とにかく不健康そうに見える様相になっている。


「さて、討伐依頼を受けましょうか。」

「う、うん。え、ホントに大丈夫?」


 ふらふらとした足取りだが、リュウコの受け答えははっきりとしていて、目もしっかり一点を見つめている。

 

「はい、ではB級までの依頼を受けることができます。」

「え?え?なんで?」


 エリサの認識であれば、どちらもE級としてこれからD級までの依頼を受けるつもりで来たのに、2つも上の階級の話をされて、理解が追いついていない。


「リューさんが昨日の依頼の後、大量の魔物の核を提出してくださり、スピード昇格しましたので。」


 『大量』という部分にアクセントをつけ、かなりの圧を含んだ言い方をする受付嬢に恐怖感を覚えつつ、黙って話の続きを聞く。


「現在B級のリュウコさんとE級のエリサさん。こういった極端に級の離れた例は稀ですが、規定に則った場合、C-級パーティとして扱います。」

「マイナス?」

「ええ、あくまでもパーティの呼称ですので、C級と同じようにB級までの依頼を受けることができます。」


 疑問を出したリュウコに対して、受付嬢はちゃんと説明をしてくれる。

話が早いことこの上ないが、エリサはまだまだ状況が飲み込めていないらしい。


「討伐依頼はどんな感じで?」

「魔物12,盗賊5です。」

「数が多くて近場の依頼は?」

「『フレイムウルフの巣』はどうでしょう?」


『依頼内容』

オーラド商街から南西に位置する森林地帯で『ファイアウルフ』の上位種である『フレイムウルフ』の(コロニー)を確認。街道の近くにあるため通行人に危険有。

・個体数:最低15体

・上位種の発生確率:高


「ここ、これ、これ、本当にB級じゃない!?」


『フレイムウルフ』は上級の魔物。しかし、その数が2桁に昇ると級が1つ上がることになる。


「はい、比較的近場ですから早い者勝ちです。また、依頼の発表からそこまで時間も経っていませんから、危険度の変位は少ないと思われます。」


 つまり、好条件の依頼を新米冒険者に譲ってくれるということらしい。

依頼の発行日も近々で、最も新しい依頼だった。


「えっ、えっ、ほんっ、え?」

「食料と近場の地図は容易しました。エリサさん、早速行きましょうか」

「え?え?」



◇◆◇


「え、貯め込んでた魔核で昇給って、あんたどんだけ貯めてたの?十年くらい?」

「まあ、そんなところですね」


 道中色々なことを詮索されたが、リュウコはそれをスルーして、エリサには情報をあまり与えない。


「もう、さっきからテキトーに返事してない?褒めてんのに」

(褒めてるんだ)

「で、『フレイムウルフ』と戦えるの?」

「はい、エリサさんと俺で半々にしましょう。」


 リュウコの言葉に、エリサは何度目かのギョッとした顔を見せる。


「えっ!?あたしが!?どういうこと!!」

「これ、エリサさん用の剣です。」


 『異界』から取り出したのは、中古の剣改め『Eソード2号』。

【展装】の仕組みはわからないが、魔力を込めた場合に対する耐久度を高め、熱変動への耐久と防錆、帯電能力も付加した試作剣2号。

 1号は死んだ。

『Eソード2号』は見た目もある程度気を遣っており、一目では中古の剣とわからないようにしている。また、エリサの筋力に最適な重量と刃渡りで、エリサ愛用の剣を参考にしつつ、装飾も似たようなものに仕上げた。

 なお、深夜テンションで『エリサソード』になって刀身をピンクにしそうになっていたリュウコをどうにか静止したのは骸時のここ一番の最高の功績。


「改めて聞きますが、【展装】の能力詳細をお聞きしたい。対象、効果、なんでも良いんです。」

「……何を聞きたいの?」

「纏わせられるのは炎だけですか?」

「……水と風、光は纏わせられる。でも、どれも威力が無いから炎しか……」

「纏わせる対象は?人体、剣、ネタ武器」

「……剣だけよ」


 昨日と同様に不機嫌になったエリサだが、今日はちゃんと受け答えてくれている。

 心のファイルにメモを残しつつ【展装】についての知識を揃えていくと、次の疑問が湧いて来る。


「複数の剣に対して【展装】することは?」

「やったことないけど、多分できる」


 そこそこ長い道のり、恐らく昼過ぎには到着する速度で、長い問診は続いた。


◇◆◇

 

「あれですね」

「あれね」


 高めの丘から見下ろす位置にある森林地帯、通称『神狼の森』。

オーラド商街よりもやや狭い程度で、それなりに自然豊かなのに動物の声はまるで聞こえない。

 木々の生い茂った森なのに、虫からも感じるはずの微弱な魔力を感じない。

 違和感しかない環境と、これまでのリュウコの経験則。 


「俺が先導します。エリサさんは後ろから見ていてください」

「……私が先導する」

「はい、じゃあお願いします。」

「……えっ!?」

 

 自分から言っておきながら、了承が返ってくるとびっくりしているエリサに、手で前にどうぞというジェスチャーをする。

 想定内の反応だから、特に言い合うことも無く、後ろからエリサの歩みを見守る。


『GURRRRRRRRR!!』

「い、いたわ!あれ、フレイムウルフ!?」

「いえ、あれはその下のファイアウルフですね。ほら、火が少ないでしょう?」


 体に炎を纏ったような狼の姿。ファイアウルフとフレイムウルフは事前情報無しには見分けがつかない。見分ける箇所としては、どちらもタテガミが炎のように燃えているが、フレイムウルフは足の先も燃えているという点。

 また、見比べるとフレイムウルフの方が二回りほど大きいという点。


「て、【展装】!」


 慌てて『Eソード2号』に炎を纏わせ始めるエリサ。

高温になった刀身は、赤く変色しつつも溶けて垂れるようなことは無い。

 形状保持の『紋』が正常に機能している。


「てやぁあああ!!」


 エリサを警戒しているファイアウルフに対して、右からの大振り。

大声で威勢を出しているだけで、足元の注意も散漫、非常に危険が危ない。


『GURRRRRRAAAAA!!!』

「きゃっ!?」


 大声につられたのか、エリサの左右から一匹ずつのファイアウルフが登場。

合計3匹のウルフに囲まれ、エリサ大ピンチ。


「『魔力弾』」


 ウルフたちの後ろ脚に向かって三連の魔力弾。

毛を巻き込んで中で固定するように打ち込んだ弾丸によって、ウルフたちの敏捷性に致命的な隙ができる。


「ういああああ!!」

『『GURUUAAAAA!!!?』』

『GRUUUUAAAOO!!!』


 正面のウルフを標的にした横薙ぎに、左のウルフが巻き込まれる。

残ったウルフは動きの悪い後ろ足をやや引きずりながら、浅く跳び上がる。


「『魔力弾』」


 狙ったのは残ったウルフの頭部。直撃後に内部で炸裂するように細工した魔力弾を叩き込んだ。

 しかし


「やぁあああッ!!」


 振り切った剣を妙な軌道で振り回し、一回転した後に脳天を叩き割る勢いで振り下ろす。

 リュウコの放った魔力弾がウルフの頭を貫通し、それでも勢いの止まらないウルフの体が、エリサに襲い掛かろうとしていた間の出来事。


 つまり、エリサは奇妙な軌道ではありながらも、三匹のウルフを切り伏せてみせたということ。


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