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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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43 実験

 受け取った金とカードと明細は『異界』に収納し、リュウコは今晩泊まる宿を探す。

 平均的日本人だったリュウコは、大金を手に入れたからとデカい宿に泊まるつもりはなく、街の端の方にある冒険者向けの月極の宿を探す。


「あ、お嬢さん、この宿どう?」

「すみません、男です。」


 そんなやり取りを繰り返すリュウコ。

リュウコの髪は転移からずっと伸び続け、現在は膝元に到達している。

 童顔で目が大きい、かつ身長が低いリュウコは、かなりの高頻度で性別を間違えられる。

 この街で一発で間違わなかったのはエリサくらいなものだろうか。


「お、ここ良い感じ」


 リュウコが目をつけたのは、綺麗すぎず汚すぎない外観で、金額的にも相場より安い。

 外から見える従業員らしい人間の恰好も悪くない。


「ここ、空いてます?」

「はいっ!……空いてますよ!」


 妙な間はあったが、受付の人は元気よく空室があると教えてくれた。

おそらく、入ってきたリュウコの見た目に、よそ者を感じたのだろう。

 それ以降は特につつがなく手続きが進み、前払いの料金を支払ってから部屋に案内される。

 そこそこ長い廊下。絢爛豪華ではないが、丁寧に掃除が行き届いている綺麗な宿。


「こちらです」


 部屋の扉の前で、部屋番号が書かれた札のついた鍵を渡され、リュウコは中に入る。

 8畳程の広さで、綺麗なベッドが一つと簡素な机と椅子。

リュウコは特に手荷物は無いので、椅子に腰かけると、腕の『骸時』に魔力を流して起床を促す。


『なんダ?』

「どうせ見てたんだろ?どう思う?」

『……あア、まずは服だナ。一か月同じ服でクソ汚いシ、食料も買ってこイ。多少なら面白そうなものを買うのもアリだと思うゾ。』

「……」

『わかっタ。エリサだったカ?あの小娘の事が気になるって?』

「ああ、あの【固有】属性について、何か知ってるだろ?」

『……ノーコメント』

「……は?」


 ガイドはその目を数回光らせてから、口をパクパクと動かしてみせる。


「なんだそれ」

『ネタバレ防止ってやつダ。オレは何も答えられなイ。』

「……チッ」


 こうした無回答の場合は今までにいくつかあったが、今回のガイドはそれが更に顕著に感じる。

 そのため、リュウコは少しの間苛立ちと共に頭を回したが、それでも答えは見つからず、役立たずのガイドを放置。


「買い物に行くから、もう何も聞かないよ」

『応、オレはまだまだ眠ル。何かあったら自分でどうにかしロ。』


 もう一度大きく舌打ちをしてから、リュウコは宿の鍵を持って外に出た。


◇◆◇


 時間自体は夕方に差し掛かった程度、空が赤みがかっているだけに、背の高い建物の影はやたらと暗い。


「やっぱりこの時間は難しいか?」


 商街というだけあって、視界に必ず商店が入る。

それくらい、露店、商店とが大量にあって、リュウコは色々なものを見続けた。

 いわゆる『魔法具』や『魔道具』と呼ばれる不思議な道具。

面白い効果を持っていて、面白い見た目をしている道具など、リュウコの目を引く物であふれていた。


 それでも、やはり倹約的な性格のリュウコは、それらを購入する無駄遣いをするつもりは無く、自分の体にあったサイズの服やズボンを何着か買って、露店街を抜ける。

 古着だから安いが、それなりに丈夫で目立った汚れは無いものを選んだ。

 次に狙うのは武器。

 武器はいくらでも種類がある。盗賊や敵から奪った鹵獲品を使ってもいいし、量産品を使ってもいい。

 金をかけて有名な鍛冶師に頼んでオーダーメイドを作ってもいい。


 そんないくつもある種類の中から、リュウコが選んだのは


「ほへぇ、良いのかい?こんな中古品。」

「はい、剣は長剣でも小剣でも片っ端からください」

「まいどあり、ちょっとだけ負けといたよ。」


 魔核を売った金の一部を使って、中古品の剣を片端から買い尽くそうとするリュウコ。

 刃こぼれしたものから半ばで折れているもの、なにかで溶けているものまで様々。

 とにかくどんな状態であっても良いということで、中古の剣を大量に購入していった。


 本数が100を超えたあたりで一旦購入を中断。

リュウコが中古の剣を大量購入しているというのを察していた残りの中古屋の店主たちのがっかりする顔が見えるが、軽く会釈だけして来た道を帰ることに。


 服に簡易な携帯食料と玩具の購入が完了、宿に帰ればちゃんと夕食は出してくれるらしいので、そのままの帰宅しても良い。

 

「……」


◇◆◇


 宿に戻ったリュウコは、借りた水桶と布を使って体を洗い、服を着替えてから、買った中で数本の中古剣を取り出す。

 剣を手に取り、柄から半分しか刀身が無い剣と、切っ先しか無い剣、それの断面を合わせると。


「『接合』」


 剣に魔力を流し込み、刀身がくっつくように固定する。

分子同士を剣の適切な状態につなげ、状態を戻す。

 見た目だけなら綺麗に、溶接よりも跡が無くつながったのだが


―――パキンッ

「だめだな。見た目だけだ。」


 力を入れて曲げるだけで、その断面があった場所からぽっきりと割れてしまう。

 露骨にその箇所だけの耐久度が無い。


「魔力で強化……魂力……宝力?いや、とにかく強度を出すためには」


 試行錯誤を繰り返すこと10回目。

もう既に日は完全に落ち、一回夕食を挟んでいる。

 

「これだな。『循環』か。」


 『紋』を複数書き込んで魔力を半永久的に循環。

『界力の回収』『界力→魔力の変換』『魔力による強度の向上的な強化』『界力→宝力の変換』『宝力による形状の向上的な維持』『魂力による簡易的な機能の稼働』

 とにかく大量の挙動命令を書き込み、中古の剣に強化を付加する。

しかしながら、12個目の『紋』を書き込んだところで


―――ボロボロボロッ


 中古の剣は折れるを通り越して粉々に砕けてしまった。


「ありゃ、書き込みに制限か」


 品質故なのか、中古の剣だと11個の『紋』までしか書き込めないらしい。

それが知れただけでも十分な情報。

 

 そこから、十本程度で実験したところ


12、14、9、11、12

15,14、11、8、13


 中古剣の付加制限は10と仮定しておくのが吉という結果になった。

11本分の剣の残骸を片付けつつ、本命の付加に着手する。


「アレと、これと、これは一括しても良いか。で、あっちが立って、こっちも立たせて。」


 予備はまだ90本近くある。それでも、目の前の1本にとにかく集中する。

とにかく、強度と硬度を求めて。


「うし、命名『ソード1号』」

『だからネーミングセンス』


 ガイドの声が聞こえた気がするが、それでもリュウコの集中している耳、脳みそには届かない。

 

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