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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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38 さるおに合戦

 地上に脱出できてからでもリュウコの生活はあまり変わらなかった。

 魔物と戦い、人里を探して歩く。

戦う魔物の種類は変わったが、難易度は下がった。


「あんなバケモノどもと戦った後だと、これくらいじゃどうともないなァ!」


 テンション高めに叫ぶリュウコは、魔力で作って衛星化している剣の一本で魔物を切り裂く。


 キリエルラ平原に生息する魔物に特定性は無い。

様々な魔物が闊歩している土地であるがゆえに、ウルフ系やモンキー系など様々な種類の魔物が沸いている。


「猛威を振るえ!コロポソード!ふはははは!」


 襲い来る魔物たちを無双ゲーさながらの豪快さで吹っ飛ばしていくリュウコ。

もちろん、魔物も無限に湧いているわけではなく、徐々に数を減らしているわけだが。

 長年放置されてきた土地に蔓延る魔物の量は半端ではなかったということで。


『ちょっと待って!回収がまだ終わってない!』


 後方からそんな声が聞こえるが、リュウコは無視している。

それは、魔力で作った人間と同じ器官、機能を持つ人形に、魂力でリュウコの魂の一部を切り分けた存在。

 いわゆる『分身』というもので、リュウコが狩った魔物の核を回収させている。

 無の魂ではなく、リュウコの魂を使わないといけないというところが肝で、無限に増やすことは出来なさそうというのが実験の成果。

 しかし、入れている魂の総量的に、自然消費であれば数年単位で活動させられるかもしれない。

 

「あと10分くらい動いたら待ってる!」

『わーん!せめて待ち時間1時間くらいほしい!』


 泣き言を言ってはいるが、その動きは移動速度に特化させているため非常に俊敏。

 足がムキムキになっているリュウコの姿でゴキのように走り回る姿は、直視できないキモさがある。


 待ち時間は10秒くらいでもいいかもしれない。


 横目で一瞬だけ見たリュウコは、そのまま魔物の群れに突っ走る。

目指すは最寄りの街、オーラド商街。


 結局、ガイドの道案内込みでも三日かかる道のりで、二日目の午後辺りから魔物を見なくなっていった。

 魔物が群生している地域を脱したのか、それとも群生している魔物が少なくなったのか。

 

「どっせぇえええいい!!」


 そんなことを考えている暇も無く、巨大なゴリラのような見た目の魔物を背負い投げしていた。

 

「なんじゃいコイツぅうう!!」


 ほんのりガイドの魔物寄せの効果が発揮されていることに気づかないまま、リュウコは寄ってくる魔物を皆殺しにしていく。

 これでも初日よりはかなり少なくなった方で、最初は大乱戦スマイルモンスターズとでも言わんばかりの混戦具合だった。

 とはいえ、いくつもの力を習得し、地獄の鍛錬を繰り返してきたリュウコには児戯にも等しく。


「んぶべっ!!んばらだっしゃい!!」


 顔面を強打されようと、その腕を粉砕して一撃死を食らわせることが可能なほど。

 避けられないわけではなく、あえて喰らってそれを軸に倒しただけ。

 避けられないわけではない。


 基本的な雑魚魔物は衛星。命名『魔星』で三枚おろしにしているのだが、それでも倒せない強い魔物はリュウコが手ずから葬っている。

 『魔星』が刈り取れるのは中級以下の雑魚まで、上級でも小さいやつや複数の『魔星』であれば倒せるが、最上級からは豆鉄砲程度の働きしかしない。


 そして、今戦っているゴリラは最上級の『マウントゴリラ』。

5mの巨体と搭載された分厚い筋肉で振るわれる暴力は大地を揺らす。

脳筋というわけではなく、【地】や【泥土】などの複数属性を器用に扱う異常戦闘能力。

 配下に『バスターモンキー』などの中級を囲って連携して戦ってくるため超級並みの難易度と言われている。


「『魔死砲』!!!」


 早速切り札を投入。死を強要する魔力砲をゴリラの胴体にぶち込むことで、強制絶命に至らせる。

 万能とは言えないが、心臓に直撃さえすれば、それだけで確実に殺せるが、今回はそうもいかないらしい。


『GYAGYAGYAAAAAA!!!』

『KIKIKYYY!!』

「げぇっ!?」


 一匹の猿が間に入ったことで数瞬のタイムラグが発生、その間にゴリラが回避し、『魔死砲』は肩に掠った程度。

 

 命を張ってまで盾をするとは思わなかったリュウコ。

そのせいで、1秒という途方も無い時間を思考に費やし、無防備を晒してしまう。


「『魔力壁』!」


 堅牢で絶対的な盾、守りの一手、相手の攻め方を見るための受けの型。


つまりは完全な悪手。


『GYAGYA!!!』

「ッずぉおおおおおおお!!?」


 下から振り上げるアッパーに近い形で放たれたゴリラの拳にぶち当たり、体重差で負けているリュウコは、『魔力壁』ごと高く遠くへと殴り飛ばされた。


◇◆◇


―――ァガガガッ


 数十秒の滞空時間。空中移動を楽しんだリュウコは、放物線を描きながら地面に大きな長い直線の溝を作って停止した。


 ゴリラたちが豆粒に見えるほどの距離を飛ばされ、地面に前衛的アート作品のようにめり込んで沈黙している。


『GYAGYAGYAAAA!!』


 遠くから走って近づくゴリラの声が聞こえる。それは、地面を伝わる振動の音。

 まだまだ遠くのゴリラたちがリュウコの元に到着するまでに、少なくとも1分はかかる。


「ぷはっ」


 ギャグマンガよろしく何事も無かったかのように顔を引き抜くと、そのまま遠方に見えるゴリラたちを見てため息をつく。

 呼吸を整え、両手を左わき腹に近い位置に置き、そこに様々なエネルギーを収束させていく。

 ゴリラたちはもう目と鼻の先と言えるほど、近くに来ている。 


「『殺~魔~魂~砲』ぉおおおお!!!」


 コンプラや著作権をもろともしない溜め砲撃。

今度は、何匹の猿が盾になろうと絶対に殺すという覚悟を込める。

 

「そのまま死んどけゴラァアアア!!!」

『GYAGGAYAGYAAA!!?』

『KYYKYYY!!!!?』


 ゴリラの全身を覆い尽くすほどの極大火力の光線で、平原に焼け野原を作る。

 その場に残ったのは大小様々な魔核と、大きく抉れた地面だけ。


「よし、証拠隠滅。」


 自分が吹っ飛ばされた醜態の証拠を完全に消し去り、ゴリラも葬ることに成功したリュウコ。

 そんな破壊の暴風にさらされても尚、傷一つついていない魔核に対して疑問を抱きながらも、街への道を急ぐことにした。





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