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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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35 殺力

 気絶から目を覚ましたリュウコは、つかまっている地面だったナイトメアシープを確認し、眼下の地面を確認する。

 数十メートルほど下の地面に落下。

 体勢を整えて着地すれば、脚の骨折程度で済む。


『散々だったナ。しかシ、お前の大幅な強化は成功したらしイ。』


 足の痛みに耐え、治療しているリュウコに骸時が話しかけてくる。


「なあ、あの悪魔は何者だったんだ?お前、あいつと話してたよな?」

『さあナ、どうでも良いことだロ。じゃ、もう完全攻略していいゾ』

「は?」

『ここでやりたかったことは全部終わっタ。最深部に行って迷宮の主を倒して、外に出てやりたいことをしロ。』

「えぇ……」

『アドバイスはするシ、相談役もやってやるガ、オレはただのガイドだからナ』


 そう言ってスリープモードに入ったガイドを見たリュウコは、少しだけ休憩してから次の階層へ進むことにした。


「ナイトメアシープって、死んでもそのままなのか?」

『いヤ、足の方から崩れてるらしイ。長く気絶してたらそのまま死んでたナ。』

「寝るなら寝てろや。」


 はっはっはと笑うガイドにイラっときたため、地面に叩きつけるだけで勘弁して、シープが完全に消滅するのを待った。


◇◆◇


「思ったよりは小さいな。5メートルくらいの魔核が出てもおかしくないと思ってたんだが」

『能力が特殊なだけで弱い部類の魔物だからナ。』


 ナイトメアシープの魔核はリュウコの頭程度の小さなものだった。

しかし、崩れるのを待ったかいもあって、死体の下にあった階段から次の階層に行くことができた。


 暗く長いだけの通路を、ガイドと話しながら進む。

会話相手としては落第だが、リュウコの尽きない疑問を解消するための相手としては満点なガイド。


『GIGIYYYYY———PIGI!?』


 暗闇の先から現れた何かわからないコロポ。

しかし、リュウコの周りを衛星のように回っている黒い球体が、暗闇から現れたそいつを簡単に切り刻んで殺してしまう。


『魂力による簡易的な迎撃プログラムをねじ込んだ魔力と死力の混合球。雑魚を狩るだけなら十分なもんだナ。』

「そういう力についても知ってるのか?」

『当然ダ。お前のようなガキに知識で負けてたまるカ』

「お前のこと何も知らないし。」


 謎マウントを取られて少し不機嫌になりつつも、その足取りはまっすぐ。

出口と思われる方向に迷いなく歩いている。


 出てくる魔物は衛星が倒すし、少し硬い魔物は殴って殺せる。

リュウコは悪魔との修行で、文字通り鬼のように強くなっていた。


『今扱える力についての助言はしてやル。だガ、それ以外の力についてはノーコメントダ。死力と殺力についても、過剰な力だと思っていル。』

「じゃあ、宝力とか界力について、詳しい話を頼む。悪魔のやつ、実践的すぎて感覚でしか扱ってないんだ」

『別ニ、教えるのが苦手とかじゃないガ、お前の場合はその方が習得が早イ。それだけダ。』

「なんで悪魔の肩持ってんだ?」


 謎の話をし始めたガイドをいさめ、そのまま聞きたかった話を続ける。


『宝力は肉体の潜在能力を高める力。場合によっては法力や氣などとも呼び、魔力が無い人類であればその方が扱う力が強イ。』


 筋力の強化、骨や皮膚の強度の上昇。運動能力の向上も可能。

肉体の機能を極限まで上昇させられる力で、心臓や肝臓などの臓器から発生する。血液にのみ流れる力で、無生物に流すことはできない。

 また、一部例外として魔力には流すことができる。


「は?魔力にも流せられるのか?」

『あア、だが、肉体の強化に一番力を発揮すル。半端に魔力にリソースを裂けバ、肉体強度が足りずにどこかの一撃で死んでいタ。』

「そう。」


 そんな話をしているうちに、次の階段を発見した。


「速くないか?」

『あのナイトメアシープが実質的なこの迷宮のボスダ。最後の階のラスボスの前はあいつが最強。』

「無駄に長い階層なんて作るんじゃねぇよ。」


 そう言いながら次の階層に移動した。


◇◆◇


 最終階層110階。

その階層はナイトメアシープと戦った。場所よりも広い空間の真ん中に、それは立っていた。


 白と黒の二つのモノリス。

リュウコの身長の倍はありそうな巨大なモノリス。

 その空間に似つかわしくないソレに近づく。

この世界のものではない、日本語でもない文字が彫られているのを確認し、どうしたものかと悩んだ末。


「なんて書いてある?」

『無謀なる者、白に触れよ。真なる試練による絶望を受けよ。

 臆病なる者、黒に触れよ。二度とこの地に立ち入ることを禁ず。』

「読めるのかよ。」


「で、白に触れたらラスボス登場で?黒に触れたら脱出できるけど再挑戦ができないって?」

『そういうことだろウ。で、どうすル?』

「俺は無謀にやってみるよ。」


 そう言って白いモノリスに触れると、二つのモノリスは地面に吸い込まれて消えた。

 

『GOJAAAAAAAA!!!』

「ぷぷいじゃないのな。」


 モノリスの消えた場所、そこから出現したのは巨大なコロポ。

グロめな口と牙に、3個もある目、4本生えている手。

 

『エンペラーコロポ。しかも個体値最高って感じだナ。』

「へえ、手ごわい感じ?」

『これから手ごわくなる感ジ。』


 そのエンペラーコロポは現れたと同時に、その手で目を抑え苦しみだし、バタバタと暴れまわった。

 その振動がエリア全体に響き渡り、リュウコも少しバランスを崩す。


 少ししてその暴れっぷりが収まると、少しの間を置いてからエンペラーコロポは自分の目玉をその手で繰り抜いた。


「おえ」


 リュウコの感想はその程度だが、見ている分にはグロくて見ていられない。

目を引っこ抜いたコロポはそのままブレイクダンスのように転げまわると、そのうち大人しくなった。


『警戒を緩めるナ。これから出てくるのハ、お前がこの世界で出会った悪魔以外で最強の生物ダ。』

「その例外がいるだけで気がゆるむんだよなぁ。」


 できるだけ一点を集中して見ないように、全体をぼんやりと見ている。

精神的な警戒は解かないが、それでも恐怖は抱かない。


『GOOOOOおおおおお!!」

『見たことがある光景だナ。』

「イジるな。ぶっ壊すぞ。」


 魂力を理解して、損壊していた肉体を戻したときのことだろう。

あの時はテンションに任せて叫んだ恥ずかしい思い出がある。

 リュウコ的にはイジられたくないし、今後誰にも知られたくない。


「ぁえあ、え?」

「で、あれはなんだ?」

『進化変異という種だナ。もうコロポではないガ、コロポの特徴は持っていル。問題はその力ダ。エンペラーコロポは上から数えた方が良いくらい高位の魔物だガ、進化変異したことで2段階も強くなっていル。』

「へぇ。で?その階位は?」

『超常級』 


 静かになったエンペラーコロポの体から、ナニカが割って這い出てきた。

それは人型をしている何か。

 白い毛髪に、色白ではあるが筋張った肉体。

見た目だけなら人間そのもの。

 コロポを擬人化したと言われれば、確かにその通りにも見える。


「で、お前はどんなことができる?」

「お、オ、オ前を殺スことができル。」

「なんか聞いたことある喋り方だな。」

『イジるナ。何をするか分からんゾ。』


 最終戦はゆるっと始まった。


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