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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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26 嵐前夜祭

 新しい一日の朝。

シオン達は依頼の件についての話を進めることにした。


 昨日の内に、シオンとランで『エキマエ』の地下、カオミとイッセイで商業ギルドの地下の2ヵ所の駆除を実行した。

 残るは貴族ヴェルモ伯邸宅、貿易豪商ミット邸の2ヵ所の地下。

順当にいけば、今日の午前中には片付く目算にはなる。


 しかし、


「どんな依頼にも、不測の自体は付き物です。油断はなさらないようにお願いします。」


 監視の騎士サムはそう話す。

冒険者上がりで騎士となったというサムは、様々な経験をしているベテランだ。

 ブランクは数年単位であるが、培った経験は記憶として残っている。


「私は今日、蓋の無い穴のところに着きます。皆様はそれぞれ、昨日と同様に駆除してください。」

「組み合わせは昨日と同じで行きますね」


 簡単な話し合いはつつがなく進んだ。

イッセイは相も変わらず意味の分からないことを話しているし、カオミは全然何も理解せず、ちょっとの事で腹を立てている。

 ランは少し遅れての参加になったこと以外は、特に問題もなく、むしろ今日は少し機嫌がいいらしい。

 シオンも、一度本番の戦闘を経験したからか、昨日のような不安感は特に無いようで、顔色はかなり良好。


「いいですか。不測の事態に遭遇した場合、できる限り迅速に撤退。力量差を確かめるなどとは考えず、そのまま逃げてください。」


 サムは再三の注意を促し、朝の会議は終わった。


◇◆◇


 シオンとランの組は、貴族ヴェルモ伯爵の邸宅がある街の南部に来た。

少しだけ趣の変わっている街並みになっているのは、東の方の国との貿易の影響らしいと、調べた本には載っていた。


 特に不思議なのが、この街の建物はやたらと角ばっていて少し高い。

外装はコンクリートのようにも見える石造りで、舗装と外壁の区別が無い。


 そんな不思議な世界に迷い込んだような感覚の街並みに目を奪われながら、二人は目的の屋敷に向かう。


「おお!これはこれは勇者様、お目見えできて光栄です!」


 屋敷に到着し、門兵らしき男に声を掛けて、自分たちの身分を明かす。

それだけで、話は通って、わざわざ伯爵本人が挨拶しに来たらしい。


 小太りで背が低い、口髭をたっぷりと蓄えた身なりの良い。これぞ貴族というような中年の男性が出てきた。

 不潔感は無いが、二人を見る目、特にランに向けた目が少しいやらしいと感じた。


「いやはやお美しい。このような可憐な勇者様にお会いできて、私は幸運だ!」


 大げさな仕草でそう褒め称えるヴェルモ伯を軽くスルーし、件の穴に案内させる。

 連れていかれたのは、昨日見たモノと全く同じマンホール。

その穴のある空間から何から、ほとんど変わらないような場所だった。


「じゃあ、また話し合った通りに」

「おっけー!」

「『寒燈全夜』」


 蓋を開けず、そのうえに手を乗せて魔法を唱える。

魔法は物質を跨いで行使することは、基本的には不可能。

 今回シオンが行使したのは、その基本を外れない程度の例外的な方法。

マンホールに書かれている【紋】に新しい文字を書き加える。


『蓋下50m圏内の”魔物”の死滅』


 簡単に要約するとそんな内容を書き加え、実行する。


『……DHU!!?』

『———CHO!!?』


 手から伝わる地下の振動に、バタバタと慌てて散らばるような音を感じる。


「よし、開けます!———はいっ」

「はい!『風雷砲』!」


 マンホールの蓋を迅速かつ丁寧に開け放つと、そこに向かってランの扱える中で最強の攻撃魔法が放たれる。


 風と雷の『魔力砲』と言えるその攻撃で、通路に傷をつけないまま、水に濡れているネズミたちにダメージを与えられるという算段である。


 ランの魔法の余韻が褪めないくらいタイミングに、穴に飛び入るシオン。

軽く魔力の防御で身を守りながら、落下の距離は前回ので把握している。


 難なく地下水路に着地し、臨戦態勢を整える。

勿論、それは戦く覚悟とかそういう話ではなく


「『アイスガトリング』」


 魔力で敵の位置、数、戦力を確認、とにかく数を減らすためだけに、平均以下の魔力量を持つ相手をひたすら屠る。


 次に、接近して強い個体を狩りつつ、中位個体をマルチタスクで殺していく。


 突入してから30秒でネズミの9割の駆除に成功。


『GHUGHU!!!』

『GHUOOO!!』


 数匹の、やたら足の速いネズミが、水路の道を駆けて暗闇に逃げていく。


「外に逃げない……?」


そんなネズミの行動に違和感を覚える。

 光は見えているはずで、そこから外に向かって逃げるのが、今まで見ていたネズミの行動。

 蓋の下にいたネズミが死んだことを警戒しているのかと思えば、光の下を走っているネズミもいる。


「あっ」


 気を取られた3秒程度で、残っていたネズミたちも一斉に走って逃げていった。

 1匹残らず、暗闇の先へ


「何か……」


 シンと静まり返る水路で、今起こった一連の異変について考えていたシオンだったが、今は先にこの場所の死体を処理しようと動く。

 水に浮かんでいるモノや凍っているモノ、ネズミの死体を全て、昨日と同じように小分けにして上げた。


◇◆◇


 昨日の駆除を踏まえて、最初からある程度個別にネズミを凍らせたため、搬出の作業は半分程度の時間で終わった。

 

「えっ!?じゃあ逃げたラットがいるの?」

「うん、13匹、あっちの方に逃げていった。」


 水路で見た方向に指をさしつつ、そう説明する。


「ちょっと追いかけるから、そっちお願い!」

「えっ、ちょっと待って!!」

 

 静止するランの声を無視して、住宅の屋根に登る。

【風】の魔法で後押ししながら、【氷】の魔法で作った足場を伝って、できるだけ速く移動する。


 何故、たった数匹のラットをこれだけ焦ったように追跡するかというと、その方向に問題があって


 それは、地図で見た蓋の無い穴と、カオミ達の担当を繋いだ直線に移動しているような気がしたから。





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