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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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23 ネズミ駆除

 依頼組として選ばれた者の中から、更に細かく班別けをして、4名の班が2つと、5名の班が1つ。

 シオンは4名班で、メンバーは小関婦乱楚和(オゼキフランソワ)馬場鹿匡(ババカオミ)斉藤一成(サイトウイッセイ)

 4人は現在、依頼にかかわる目的地まで、騎士一名を同伴して馬車で向かって行っていた。

 色々な意味でクセの強いメンバーの中に入ってしまったと思いつつも、皆悪い人間ではないということはわかっているため、そこまで不安はないのだが。

 それはあくまでも仲間としてはということであって、人間関係的には


「イッセイてめぇどこ見てんだオォイ!?ちゃんとセンコーの話聞いてたんだろーなテメー!」

「虚空の問いかけに応える義務無し。ただ我は魔剣を持ち敵を切り伏せるのみ」

「バカオミうるさい!あんたこそちゃんと先生の話聞いておきなよ!大体一回の説明でちゃんと理解できないんだから!」


 とにかく吠えているババ、そんなババに文句をつけるラン、未だに何を言っているのかもわからないポエムらしきことを呟き続けているイッセイ。


 先が思いやられるというのがこういうことなのかとも思いつつ、この班にミサキ先生がいてくれれば、不安は無かったと思う。


「シオンちゃん、大丈夫?顔色悪いよ?」

「ランちゃん、大丈夫だよ。ちょっと緊張してるだけ。」


 シオンから見ても、三人は決して悪い人物ではない。

ランは優しく空気が読めるし、基本誰とでも仲良くしてくれる優しいギャル。

ババは多少頭が悪いが芯が通っていて勇気がある、王道不良漫画のようなタイプ。

イッセイは、迷宮攻略時に重傷を負っていて、その辺りから言動がおかしくなってはいるものの、元は普通の人当たりの良い青年。


 それなのに


「便所か?」

「なんっでそんなにデリカシーが無いのよ!!」

「沈黙は花、愚かなる獣の遠吠えは改革の報せ。」

「あんたももうちょっとわかる言葉で喋りなさいってば!」

「善処」


 この三人の組み合わせだとなぜか噛み合わない。というのがシオンが頭を抱える一つ目の理由。

 そして。


「えっと、依頼内容についてなんですが。」


 同伴の騎士、名前をサムと言った彼は、三度目となる依頼内容の確認の話を切り出す。

 今度こそちゃんと最後まで聞こうとシオンは三人に目配せをし、三人はそれを見て黙る。


「目的地は王都より南西のオーラド商街。規模は王都より少し狭い程度の街ですが、とても栄えている商業都市となります。ここまではいいですね?」

「はい」

「依頼というのが、その街の地下通路で繁殖している魔物の掃討です。魔物の種類は『マッドラット』。おおよその発生地は特定済みで、それは着いてから説明します。」

「『マッドラット』って?」

「シッ!また話が止まっちゃう!」

「『マッドラット』は中級上位の『獣爪種』の魔物になり、中位冒険者でも討伐が難しい魔物です。ですが、皆さまは高位冒険者と同等の戦闘力があるので、討伐自体は簡単かと思われます。」


『獣爪種』いわゆる狼やライオンなどに近い爪を主な武器とする魔物の種族。生息地によって様々な属性を持っている種族で、その発生数は各種族のちょうど真ん中辺り。


『マッドラット』ネズミ型の魔物で【地】属性を扱うが、簡易的な地形変化や手足の硬質化程度のみ。魔力量も非常に少なく、身体機能としても他の『獣爪種』より劣るが、数が多く繁殖力が高いことが特徴。


 シオンは召喚されてからの日々で、頭がつぶれる程にこの世界のことを学んだ。

 魔物学、魔法学、地理も歴史も何もかも。

 現代日本でも優等生だったシオンは、この世界で初めて『必要』に駆られて知識を頭に叩き込んだ。

 その結果。二ヶ月と少しの期間で大学受験も真っ青なほどの知識量を脳みそに詰め込んだ。


 そんなシオンは、魔物の説明と同時に図鑑で見た『マッドラット』のページを、一文字も間違えることなく思い浮かべる。


『重要なのは食料と安全な棲み処。残飯や糞尿から栄養を摂取し、繁殖できる広大な土地がある場合、ラット系は大量に繁殖する。過去には、ラットの繁殖に対応しきれず崩壊した都市も存在する。』


 そんな文言を思い出しながら、再び頭を抱えた。


◇◆◇


 早朝から出発したはずなのに、到着した時には夕陽が遠くの山に少し差し掛かるくらいの時間になっていた。

 馬車での舗装されていない道だったので、皆クタクタ。乗り物酔いなどは起きていないが、それでも疲労は溜まっている様子。


「現在、マッドラットの確認されている地点は、レストラン『エキマエ』、商業ギルドのオーラド支店、貴族ヴェルモ伯邸宅、貿易豪商ミット邸。それらの地下水路に生息しているのが確認されています。」


 全部で四か所。メンバーとしては一人一か所でちょうどいいのかもしれない。

 しかし


「ネズミでしょ!?シオンちゃん一緒に行こうよー!!」

「わ、わかった。わかったから。イッセイ君たちは」

「是。害獣駆除は双竜の仕事。」

「ソーリュー?ま、二人だな。」


 サムにはイッセイ達についてもらい、シオンとランは二人で指定の場所へ向かう。

 夕方ではあるが、仕事はここから始まる。


◇◆◇


 シオンとランの二人は、渡された地図にあるレストラン『エキマエ』の前まで来ていた。

 大通りではあるのに、人ごみが少ないのは高級店の前であるからなのか。

 時折身なりの良い人が出入りしている以外に、道行く人々は近寄る気配もない。

 正門であろう入口の前に立っている屈強な男たちの姿が理由かもしれないが。


「依頼を受けてきました。シオンとランです。」

「お待ちしていました。件の地下水路への道はこちらにあります。」


 警備であろう二人の屈強な男、その一人に案内されて、二人は店の裏手へ回った。

 薄暗く狭い、しかし清掃はされているらしい裏通りを抜けると、少し開けた場所に出た。


「ねぇシオンちゃん、これって」

「うん、やっぱりそうだよね。」


 二人はそこにあった物を見て、同じことを考えた。

日常的すぎてあまり記憶に強く残ってはいないが、二人はソレに見覚えがある。



「「マンホール」」




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