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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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21 三人寄れば

 街中を走り込んでいるセイヤと同時刻。

泣き止んだシオンとそれに付き添っていたミサキ先生は二人で道を歩いていた。


 出店で買い食いをしてみたり、衣服について語り合ったりと、穏やかな時間は過ぎていった。


「冒険者ギルド……ですか?」

「ああ、魔物の討伐なんかを中心に、雑用から何からを依頼として貼りだしてくれる場所らしい。キミトから聞いた。」

「そこに行って何を?」

「リュウコの事を聞いてみて、もし出せるなら依頼を出す。」

「———!」


 ミサキの言葉にシオンの顔が一気に明るくなる。

ついにはグイグイとミサキの腕を掴んで引っ張り始める。


「待て待て、お前はまだその場所を知らないだろう。」

「じゃあ早く教えてください!」


 最終的には後ろから押される形で先導することになったミサキ先生は、できるだけ最短のルートで道を教えた。

 

 たどり着いたのはこの背が高い街並みでもひときわ大きな石造りの建物。

交差した剣に喰らい付く牙のようなエンブレムを掲げている、外観から四階建ての建物。


「ようこそ!こちらは冒険者ギルド、オロクル王国王都支部です。」


 中に入ると左手に大きな受付。正面には二階への階段。右手には複数のテーブルとそれに合う3~4個の椅子。

 数組のグループがまばらに座っており、恐らくは同じパーティの仲間だということが予想される。


「初めてのご利用ですね?依頼でしたら一番窓口、冒険者としての登録でしたら二番窓口、既に登録されていて、依頼を受けたい場合は三番窓口へ。」

「あ、はい」


 想像していた場所よりもはるかに役所っぽい雰囲気の場所で、面食らったシオンは、言われたとおりに一番窓口と書かれている場所に近づいていく。


「なんか、結構綺麗ですね。」


 リュウコが好んで読んでいたラノベには、たいてい汚くてゴロツキの集まるような場所として描写されていた。

 もちろん、ラノベとは違うとは思っているのだが、それはそれとしてここまで綺麗で丁寧な対応をされるというのもなんとも、びっくりしている。


「あれ?シオンっち!」

「あと、ミサキ先生も」

「……ども」


「みんな!」

「ランに、シラベに、カエデか。仲良しグループのお前らが一緒なのは良いんだが、どうしてこんなところに?」


 小関婦乱楚和(オゼキフランソワ)と、高梨楓(タカナシカエデ)調燐(シラベリン)の三名。

 クラスの中ではギャルグループとして有名で、かつ目立っている。

 金髪褐色肌のフランソワ、ランとカエデ、黒髪で色白のシラベで、いつも仲良く話している。

 ちなみに、ミサキ先生がシラベリンだけ苗字呼びしているのは同じクラスにソノオリンという名前の子がいるから。


 シラベとカエデは先の初迷宮探索でミサキたちと一緒にネクロタクルにやられた班で、一時意識不明の状態だったのだが、この世界の魔法の力で後遺症もなく復帰できた。


「もしかして、シオンっちも依頼しにきたの?」

「”も”って?」


 ランの言葉に引っかかるシオン。聞き返すとその答えは意外にも簡単に帰ってきた。


「リュウコちゃんの行方を捜索する依頼!」

「やっぱりシオンもそのつもりで?」


 静かに問いただしてくるのはシラベ。

もちろん、本人に責め立てる気などは微塵もない。ただ暗めにはっきりと物を言うせいで警戒されているだけ。


「……死体は見つかってない……きっとどこかに」


 半分聞き取れないような声で話すカエデ。普段はもっとはっきりと物を話す方なのだが、意識を取り戻してからというもの、性格が変わったかのように物静かだ。


「ほら、お小遣いも集めたら依頼できそうだし!」

「合わせて金貨15枚。どう?」

「……二人も協力してくれる?」


 国王、つまりは国からもらった小遣いは一人につき金貨5枚。

貨幣は国によって様々だが、この国では銅銀金の3種類。おおよそ100枚単位での換算で、銅貨は10枚もあれば1食分の食費になる。

 そこから考えるに、金貨5枚とは相当な金額となるわけだが、まだまだ貨幣価値の勉強を始めたばかりのギャル2人はピンと来ていないらしい。


「あ、ああ、私のは4枚になったが、金貨が積まれればその分、期待値もデカいハズだ。」

「私も4枚。もともとそのつもりで来てたから、乗らせて。」


 合計で金貨23枚。依頼の登録は完了し、仲介手数料として何割がは持って行かれるが、来週中には他国の冒険者ギルドにまでその依頼が貼りだされるだろう。

 そう、人探しで金貨20枚というあまりにも途方も無い膨大な金額の依頼が。


◇◆◇


 依頼の手続きを終えた5人は、受理が終わるまでの間をギルド付属のカフェで休憩することにした。


「でね~!魔法を使って雪降らそうとしたら、水浸しになっちゃって!」

「最初はそうなっちゃうよね、はは」

「私なんて服が燃えたぞ、やけどはしなかったが」

「先生が一番危ないのでは……?」

「……」


 談笑に華を咲かせている五人。話している内容は少し危うげだが、それでも仲良さそうに話している。


「よぉアンタら。見ない顔だが、ギルドは初めてかい?」


 そんな5人に近づいて話しかけてきたのは、1人の女性だった。

ナンパ目的だったら追い返そうと思って目を尖らせるミサキ先生とシラベだったが、そんな雰囲気でもないということに気づき警戒を緩める。


「ええ、今回は依頼をしに来ました。」


 アイコンタクトでシオンが対応することになってしまい。仕方なく隠すこともないまま経緯を話す。


「仲間が行方不明ね。オレが言えたことじゃないが、期待しない方が良い。人探し系の依頼の完了率は5割以下だからな」


 悲観的なことを呟きながら、椅子をよそから持ってきて同じテーブルに座ってくる。

 よくよく見ると、その女性には片腕が無く、右腕が肩先までしか無かった。

しかしながら、それを差し引いても目を引く美女で、褐色の肌についている傷は戦いの歴史を想起させる。

 右目に眼帯をつけているその顔を彩っているのは桃色の髪。

 筋肉質な体の女性だが、思わず見入る魅力がある。


「後ろ向きなことを言ってすまないな。しかし、一応言っておかないと落差が激しいだろうからな。」

「別に、良いじゃないですか?」

「ああ、希望を持つのは悪いことじゃない。けど、同時に絶望的な予想も必要だと言うことだ。」


 シオンはムッとした表情で、その女性を睨みつける。


「じゃあ、あなたはそんなことを経験しているんですか?」


 それは、あまりに無神経で不謹慎な言葉だった。

 見ていれば、自分なんかとは比べ物にならないほどの歴史を持っている人だというのはわかるのに。

 言ってから後悔するなんてことはよくある事で、だからこそ冷静さに欠くシオンはついつい失言してしまう。


「愛する人はもうずっと昔に亡くなったよ。それでも今でも探してる。」


 ビリビリと背筋を流れる電流を感じた。

自然と目元が熱くなり、視界がぼやける。

 こんなことも初めてだが、シオンは女性の言っていることを疑うつもりは無かった。


「あの、あなたは?」


 シオンの様子に驚きつつも、ミサキ先生が話を続ける。


「ああ、自己紹介が遅れたな。オレはランメル・アト。冒険者、魔法、闇、錬金、商業、全てのギルドの総元締め。要するに『グランドマスター』だ。」


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