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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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18 準備運動第一

「ちょっと待って!マジでちょっと待って!」


 現在リュウコは、ほとんど満身創痍の状態で絶叫しつつ、全力疾走で逃走していた。


『Fコロポ』ら四匹のコロポを倒し、『Sコロポ』と『Dコロポ』を倒した後、数分ほど気絶していたリュウコだが、目を覚ましたと同時に次の敵と戦うことになった。

 戦うたびに魔力操作の技術は格段に向上するが、それはあくまで何度も生死の境をさまようからであって、リュウコが天才かと言えばそれは微妙なところ。


 そして、死闘を繰り返すこと五回目。

 氷や雷を操る『Fコロポ』や『Tコロポ』、毒を使う『Pコロポ』や金属を操る『Eコロポ』と戦い。

 純粋な魔力の高みと身体能力も高い『シン・コロポ』と戦い。

 現在、超巨大な体躯を持ち、それでいて俊敏な動きをする『ジャイアント・コロポ』と戦い、辛勝したところ。


 さすがに気絶することもできないほどの疲労に、ガイドへの不満があふれ出す。


「なんでこんな魔物が沸いてんだァ!!?」

『ケケケ、なんでだろーナ。さあ、次だ次』

「うっそだろぉおおおおい!!!?」


 喉が完全に潰れるほど叫んでも、魔物が襲ってくるという現実は変動しない。

 そもそも、迷宮攻略がどうとか言い始めているのにも関わらず、今リュウコは最初に目が覚めた階層から一歩も下に降りられていない。


 だというのに、死闘が始まって体感では五日(戦う度に気絶しているから)も経過している。

 そんな状況に、一抹以上の不安を抱いているのも事実。


『安心しロ、この階層でお前に与える試練ハ、後二つだけだ。』

「まだ二つもあるのかよぉおおお!!」


 リュウコはガイドの言葉そのものはあまり疑っていない。

謎の信頼感があるからなのか、それ以外に状況説明の材料が無いから仕方なくなのか。

 冷静に考える時間は無いから、とにかく体を動かすしかない。


『強化』や『活性』で自己治癒能力を高め、魔力で『固定』したり『癒着』したりで縫合する。

 それでも、やはり直接的な回復はまだできないせいで、生傷は増えるし、ずっと血が足りていない。


『次は、特殊能力を持つ変則型ダ。』


 ガイドの宣言に震えながらも、魔力で敵の位置を探知する。


反応があったのは3つ。

 リュウコを囲んで三角形のように立っていた。


『マズは剣を持った『Bコロポ』、ナイフを持った『Kコロポ』、ハンマーを持った『Hコロポ』ダ!』


 現れたのは武器を持っている今までに見たことの無いコロポ。

というか、ここまで来たらもう見たことのあるコロポの方が珍しい。


 毛先を手のように器用に扱い、それぞれ武器を持っているコロポ。

体色自体は普通コロポと同じ、白に薄く黄色がかっているような色をしている。


「ゴォオオオ!!」


 もはや先手必勝が勝負の最大要因だと理解したリュウコは、相手の攻撃を待つことをしない。

 魔力での推進力を得て仕掛ける特攻には、何者も黙らせる破壊力がある。

 

戦闘時に関して言えば、リュウコはもう正気の状態に無い。

 連戦に次ぐ連戦で、正常な思考は放棄した。

 体に刻まれた正体不明の戦闘能力と、ここまでの継戦経験だけを頼りに、最適解の場所へ拳を叩き込み足を運ぶ戦闘人形と化していた。

 その方が、精神的ストレスを抱え込まない、没頭するという無我の境地に達したリュウコの拳は当初よりもはるかに重い。


『PUPU♪』

「邪技・❘刃毀はき!」


 振り下ろされたリュウコの身の丈ほどもある大剣を紙一重で回避。

大振りの予備動作が分かりやすい攻撃ではあったため、回避自体にはそこまで難しくない。

 回避した後で大剣の側面を強打し、大きなヒビと共に刃を完全に全損させたとしても、まだ気を緩めてはいけない。

 刃物としての機能性は完全に失われても、大きな鉄の塊であることに変わりはなく、巨大な鈍器として振り回されたら厄介極まりない。


 そして、そんな鈍器を扱うプロフェッショナルが背後から


『PUPUPUPURRRRR♪』


 巨大なハンマーを振り回し、竜巻でも起こそうかというくらいに回転している『Hコロポ』。

 自分よりも重そうなハンマーを軽々と振り回しては、縦に横にと一撃で致命傷になり得る攻撃を仕掛けてくる。


「流技・命露」


 ハンマーの軌道に手を合わせ、その流れに小さなズレを生み出す。

それだけでハンマーはゆるやかに軸をブレさせる。


「『魔力砲・三連』」


 球体型の魔力壁、つまり『魔力球』のファン〇ルから発射させる魔力砲で、『Hコロポ』や『Bコロポ』『Kコロポ』に向かって攻撃する。


 魔法を扱うコロポでなければ、魔力に対しての耐性は高くないということらしい。


『PUPU———!!』

『PURURRRRR———!!』


 胴体に風穴をあけられて死亡した二体のコロポは魔核を残して消滅。

やたら敏捷で遠巻きに牽制していただけの『Kコロポ』は外れたようで、二本のナイフを両手に持って、シュンシュンと飛び回っている。


『PU……♪』


 『Kコロポ』は暗殺者のような立ち振る舞いで戦う。

二本持ったナイフと、目で残像を追えるくらいの速度。

 今までは豪快な動きをする二体のコロポに隠れ、様子をうかがっていたが、隠れ蓑が死んだから突撃することにしたらしい。


「『魔力砲』」


 一体だけの足が速いだけの奴の対処法なんていくらでも思いつく。

思いつけるだけの戦いを繰り返した。頭で理解していなくても、体の傷が覚えている。

 だからこそ、遊びはしない。余裕だと思うからこそ目を離さない。


言ってしまえば、それ一つの油断ではある。


だからこそ


「ぎゅっ―――!?」


 横からの突撃に吹き飛ばされたリュウコには何が起きたのか分からなかった。

 遠くから、ガイドが何かを喋っているのが聞こえる。


『続いて最後の試練ダ。万国共通の絶対的暴力。それは数の暴力。』


 リュウコの耳にはかすかにしか届かないが、それでも視界に映っているものは見えている。


『『PUPUUUU♪』』『『PUPUUUU♪』』

『『PUPUUUU♪』』『『PUPUUUU♪』』

『『PUPUUUU♪』』『『PUPUUUU♪』』

『『PUPUUUU♪』』『『PUPUUUU♪』』

『『PUPUUUU♪』』『『PUPUUUU♪』』

『『PUPUUUU♪』』『『PUPUUUU♪』』

『『PUPUUUU♪』』『『PUPUUUU♪』』


 数えきれないほどの『Kコロポ』と同じ見た目をしたコロポたち。

ひしめき合うほどに、この広大な平原の殆どを埋め尽くしている夥しい量のコロポ。

 今まで色々な個性を感じていた鳴き声が、まったく同じ一つの声で繰り返される狂気。


 徐々に状況を理解したリュウコの顔から血の気が引いていく。


「まさか……」



『最終試練『Kコロポ』を500体討伐せヨ。』




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