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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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15 真・コロポの里

 暗い場所だった。

 何も見えず、何も聞こえず、何にも触れていない。


 意識だけが視覚を得ているような、そんな感覚の中で、リュウコは何かを見ていた。


『待って、置いていかないで、俺は、ぁあ、ああああああ!!!!』

『だめだ、だめ、絶対に、死なないで』

『絶対に嫌だぁあああああアアアアアア!!!!!』


 女の人を抱きかかえて、血の涙を流している鬼の姿。

雨に濡れても薄れることが無い、その朱に全身が染まって、いくつもの命を看取るしかできない無力感が、全身を覆う。


(僕は、この光景を見たことがある?)


 よく思い出せないが、見た記憶がある。

この、頭の後ろがプチプチと音を立ててじわっと熱くなる感覚。

 体の血流が高まって、体温がぐんぐん高まっている。


『許さない。許さないぃ。許さないぃいいいい!!!!』


 抱きかかえていた者はいなくなり、目の前には光の剣を持つ誰かが立っていた。

 その者の顔は良く見えないけど、そいつが何者かはわかった。


『勇者ァアアア!!貴様ァアアアアア!!!』


 勇者の持っている剣は、およそ金属のような光沢が無い、真っ白な剣。

それでいて、大量の魔力が迸る名剣とも言えそうな代物。


 それが何でできているのか、リュウコにはわかる。


『よくもぉ、そんなことをォ!!ぶっ殺してやる!!!!』



「死ねええええ!!!」



 叫びながら、リュウコは目を覚ました。

上体が跳ね起き、勇者を殺そうと突き出した手は、何も掴んでいなかった。


 いまだ興奮冷めやらぬ中、のそりと起き上がり自分の状況を確認する。


「え、何、ここ。」


 起き上がったのは、絵本にでも出てくるような楽園の景色。

中心部らしき丘の上に立つ大きな樹木と、その周りには豊かな森林。

 木々の一本一本に多種多様な果物が実っており、コロポではない自然の動物が平和に暮らしている。


「僕は、『コロポの里』で黒いタコと戦って。」


 死ぬほど危険な死闘を味わったのは覚えている。

ガイコツ頭の黒いタコ。それと戦って、もう少しで死にかけている時に、仲間のセイヤが助けに来てくれた。

 そこで意識が途切れて、今に至る。


「え、ホントに意味が分からない。」


 きょろきょろと回りを見ても、現況の整理がつかない。

『コロポの里』は、地面こそ草が生えていたが、ほとんど洞窟内と変わらない状態で、ネクロタクルと戦闘した際にいた空間はそれなりに広いドーム型ではあったが、ここまで『外』のような風景ではなかった。


「迷宮から脱出した?だとしても、なんだここ。」


 そこは確実に迷宮の外の風景。青空が広がり、水が流れ、生物が闊歩している。

 ありえないほどに美しい景色。


「えぇ」


 困惑を隠せずに呻いているが、それでも体を動かしてどうにか情報を集めようとする。

 体の調子は問題なく、ネクロタクルに殴られた箇所も全快している。

 そのことから、誰かの治癒魔法で治してもらったのだろうと思ってはいるが、その相手も見当たらない。


「喉乾いた」


 そう思って、視界に入っている水辺に近づく。

大きな川の一部が、広くなって池のようになっている場所がある。

 そこに近づき、水に顔を近づける。

 澄んでいて綺麗に見えるが、こういう水には細菌やらが棲んでいて飲める水ではないという話も、一応知識としてはある。

 しかし、この状況でろ過する道具も、その方法も知らないリュウコでは、どうすることもできない。

 覚悟を決めて飲んで腹を下して慣れるという、最悪の手段を取る必要があるかもしれない。


「あ、水って魔法でろ過できないのかな。」


 属性魔法は使えない。これからの訓練次第で使えるようになるかもしれないが、今はまだ使えない。しかし、魔力そのものを操る【無】属性魔法であれば使えるのだから、それでどうにかすることも可能かもしれない。


「お?あれ?なんだ。」


 体に力を込めて、いつもの感覚で魔力を練り上げようとしたとき、はじめて違和感に気づく。

 今までよりも、放出される魔力の量が多い。

 体感で、コップとバケツくらいの差がある。


 最初こそ戸惑ったものの、すぐに慣れて魔力で水を持ち上げる。

できるだけ純粋な水を分離させるようイメージしつつ、集中して魔力を動かす。


 そうして、バケツ一杯分くらいの水を確保したリュウコだが、結局のところそれが飲んでも良い水になったかは飲んで確かめるしかない。

 腹を下せば、地獄を見ることにはなるだろう。


「……いざっ」


 ゴクリと唾を飲み、覚悟を決めて水に口をつける。


「ゥンまあああああい!!!」


 とにかくそれしか言葉が出ず、リュウコはがぶがぶとその水を飲み続けた。

結局、汲んだ半分ほどの水を飲み、おなかが水でタプタプと音を立てるくらいに飲んだ後、残った水はまた川に戻し、その場に座った。


 魔力でのろ過は、多分成功していた。

程よく冷えて不純物を感じない綺麗な水を腹いっぱい飲むことができた。


 そう満足しながら、上空いっぱいに広がる青空を見つめる。


「ん、やっぱり変だな。」


 見ていると、広がる青にも違和感がある。

元々視力はそれなりにあった方だが、今は今まで以上に遠くまで見えているように感じる。

 その視力で空を見ていると、それは明らかに青空ではなく、青く発光しているだけの天井があった。

 雲の部分は、光の加減なのか、白く見えているだけで、それも雲ではない。

 なにより、太陽らしき光源を直視できている。


「もしかしてここは『コロポの里』の中のままなのか?」

 

 リュウコはそう結論をつける。

でなければおかしいことの連続で、その結論が一番納得できると感じたから。


「だとすれば、攻略するべきは下か、上か。そもそもこんなところがあるなんて聞いてないんだけど。」


 事前に説明を受けていた『コロポの里』は全部で10階。

各階に多少広い空間はあるが、それ以外は通路だけで、宝や強力な魔物も湧かない本当に初心者向けの迷宮。

 ネクロタクルが出現したのも、数十年に一度の災害というレベルの安全な迷宮のハズ。


 それが、こんな未知の空間に、巨大な木と広大な自然空間。


『GUXOOOOOO!!!!』


 そして、聞こえてくる魔物の声らしき轟音。

まだ近くにはいないらしいが、それだけの大きな声を出せる大きな発声器官をもつ生物が、それだけ大きいとは思えない。

 近くに巨大な魔物がいるということを理解して、リュウコは冷や汗を流す。


「もしかしなくてもヤバいかも。」

『ソウ!今のお前の状況は、ヤバいってもんじゃないゼ!』


 突然、自分の言葉に返事が来て、リュウコは驚く。

慌てて周囲を見渡すが、その声の主は見当たらない。


『無駄無駄、そんな見渡してもオレはいねェって。右手、見てみナ』


 言われた通りに、右手を見る。

そこには、腕時計のようなものが装着されており、そこについている骸骨のような飾りが、口、というか、下あごの骨をカチャカチャ動かしている。


『よォ!やっと気づいてくれたか。オレは『骸時ガイド』お前に現状を教えることと、これからの目標を教えてやるための【魔神器】だ。』


「ガイド?まじんぎ?」


 知らない言葉のはずなのに、妙に耳馴染みの良い言葉に、リュウコは首をかしげる。

 その言葉の意味を理解するよりもまえに、ガイドが話を続ける。


『ココはお前の入った『コロポの里』の100階層。隠しステージってやつだナ。これから、100階層を上るか、10階層降りて迷宮主に会うカ。お前が選ぶのはこの二つのどっちかダ!』


 

『真・コロポの里』

難易度【初級(上級)】

階層数【10階(110階)】


 ここから、リュウコの真の攻略が開始する。

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