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悪魔転生奇譚Ω  作者: 草間保浩


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13 漆黒のダークネス

 例の事件から1ヶ月。

重傷を負ってリタイアしたヒロ、死亡したカズユキ

そして行方不明のリュウコ。

この三人を除いた23人の勇者たちは、日々の訓練に励んでいた。


 一部生徒には、これ以上の訓練、危険を忌避する者もいたが、仲間の支えもあって少しずつ克服して、訓練を再開している。


 その中でも、特に成長が顕著だったのは、セイヤ、シオン、ミサキの三名。


 魔法組であるシオンの実力は、周りの生徒らと比べて頭二つ抜きんでたものになっており、【基本】の六属性を完全習得。一部の属性は進化し、【特殊】や【強化】の段階に至っているという。


 ミサキは筋力組であるが、通常の鍛錬以上の無茶を繰り返し、今では他の筋力組の生徒相手に乱取りのような状態で模擬戦をし続けている。


 セイヤはというと、元々特別枠のような扱いで、筋力組でありながら魔法も十分に扱う素養があったことから、今は魔法組と筋力組を掛け持ちするという特殊な状態で、どちらも常にトップの実力をほこっている。


 生徒の死亡と行方不明。ネクロタクル事件の傷跡は深く、未だに生徒たちは純粋な笑みを取り戻せてはいないが、着実に良い方向に行っている。



「……くふ。覚醒の時は来た。我が魔力の奔流に身を委ね、滅びるが良い!!」

「ぬぉおおおおい!!?危ないでござるぅうう!!!」


 個別指導を一通り終え、合同指導になったということもあり、現在特殊組は解体。それぞれが伸ばしたい技能の組と合流して訓練に参加するという状態になっている。

 そのため、キミトは魔法組に参加し、


斉藤一成にサンドバッグのような扱いを受けていた。


「我こそは魔の申し子!万物を統べる太陰!五芒を描き界を断ずるは我が錬爪!」


 なにを言っているのかは分からないが、とにかく異様なテンションで魔法を行使していく。

イッセイを中心に複数展開されている空中の魔法陣。そこから、四方八方に極太のレーザービームのようなものが放たれる。


 指導係の魔法使いが教えているのとはまるで違う、ほとんど独自の体形で構築されている魔法は、教科書通りの魔法しか使えないキミトに逃げる以外の選択肢を与えない。


 地面がメートル単位で抉れている状況から、その火力も馬鹿にできないものであるのは明白。

 キミトは全力で回避し続けるしかなかった。


「『火炎盾』!『風嵐盾』!『土岩盾』!『水流盾』!ああ!土だけ発動してないぃ!!」


 基本的に一か月の教育の結果、全員が魔法の【基本】である【火】【水】【土】【風】を習得したのだが、それでも練度には個人差がある。

 ちなみに【光】と【闇】は生まれつきの性質が強く関係しているため、適正無しで習得するためには年単位の鍛錬が必要。


 そんな【基本】の魔法を使って、どうにかこうにか回避し続けているキミトだが、それもすぐに終わる。


「我が魂に屈服せよ!深淵たるこの瞳!無限を想う万来の智!我こそへぁ……」

「やっと終わったぁあ!!!!」


 イッセイの魔力はキミトたちと対して変わらない。少し量は多いが、それでもこれだけの大規模な魔法の嵐を巻き起こせば、魔力が切れて気絶する。

 毎度のようにこうやって終わるため、キミトも回避がだんだん上手くなっていっている。


「なんで毎回あいつは話を聞かないんでござるか!!」


 キミトも、マゾ気質だから魔法組に来ているわけではない。

他の人と訓練をしようとしたり、1人で練習したり、そもそもイッセイにちゃんと話してまともな訓練をしようとしたこともあったのに、なぜか毎回イッセイに奇襲強襲をかけられてこの逃走劇が始まるのだ。


「イッセイ君、やっと終わった?」

「今回は前よりも長かったでござる。魔力量増えたら、もっと大変になるござるか?」


 とってつけたようなサムライ口調のキミトと、それに話しかけるシオン。

今日はシオンに魔法を教えてもらおうとしたところを狙われていた。


「ぜぇ、ちょっと、はぁ、休憩ぃ、ぜぇ、はぁ」

「うん、一応時間はまだまだあるから、ちょっと休んでからにしようね。」


 走り回っていたキミトの心肺は完全にオーバーヒートを起こし、今にも貧血でぶっ倒れそうである。

 しかし、それでも根性で膝に手をつくだけに収めている。

 キミトにとって、魔法とはそれだけ魅力的なことなのである。


「ちなみに、なんでそんなに魔法を伸ばしたいの?」

「ふひぃ。そんなの決まっているでござる。」

「決まってる?」

「この世界で最強の魔法使いになって!美少女ハーレムをつくるんでござる!」

「女子相手にそれを宣言できるのはすごいと思うよ。」


 少し呆れつつも、シオンは息を整えたキミトの訓練に前向きに付き合う。

野望、希望、願望、未来に良い思いを抱くのは大切なことだ。

 現時点でほぼ惰性でしか動いていないシオンにとって、それはまぶしいことだった。


「【特殊】の【氷】が知りたいの?」

「はい!【氷】の魔法はロマンゆえに!」


 シオンは手のひらで魔力を練り上げる。

【水】と【火】を出して、それを組み合わせる。

 温度調整と水分調整で、氷の塊を発生させる。

 その動作を早く細かく行えるようになれば、ものを凍らせることも、氷で何かの形をつくることも可能になる。

 どんな属性の魔法も、最初に重要なのは一度でも成功すること。

その成功一回で、魔法の幅は大きく広がる。


「氷に一番有用なのは『多重』だよ。魔力を層にして何枚分も重ねるの。そうすれば強固な氷が出来上がる。」

「むむむ、はぁああ!!」


 力んで叫んだキミトの手のひらには、ミゾレくらいの半分解けた雪のようなものが出てきた。

 まだまだ練度の問題で固形には至っていないが、温度の低下と固形化はできている。

 あとはその技術を少しずつ伸ばしていくだけ。


シオンはずっと思っている。

 そんな高速での属性習得が可能になったのも、リュウコの最後の戦いを見ていたから。

 あの時、その戦い方を見ていたシオンは、リュウコの魔力の扱い方が自分たちと違うということに気づいた。

『魔力弾』の形状から、最後の自爆に使った魔力の性質まで、とても自由に成形しているのを間近で見て、その仕組みを理解した。


 そして、その成果は勇者たちのパワーアップに大きく貢献し、今や宮廷魔法使いですら、シオンの事を天才だと仰ぎ、近くで魔法の訓練に参加しているほど。


 しかし、どんなに称賛されようと、シオンの心は動かない。

これも全部、リュウコのもの。リュウコの模倣に過ぎない。


 いなくなってなお。むしろ、この世界に来てからというもの、今まで以上に、リュウコの事が頭から離れなくなってきている。

 もう会えない相手の事を、忘れることすらできない。

 その苦しみが、シオンの心を蝕んでいく。


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