告白(1)
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「なぁ、栞」
「なぁに……って、そんな緊張した顔してどうしたの?」
初夏の風が心地良く吹く翌る日の午後。これから俺が何を告げるのか何も知らない彼女は、俺の緊張しきった表情に目を丸くしながら無邪気に尋ねてくる。俺は、少し前まで生涯伝えないと決めていた彼女への想いをゆっくりと口にした。彼女から目を逸らさず、真剣な想いだと伝わるように。
「――栞、俺と付き合ってくれないか。いつも笑っている栞に惹かれたんだ」
昨日、彼女のお母さんは俺に言った。
『あの子が恋に夢みていること、直哉君は知ってるわよね?』
『はい、知っています。いつも差し入れの少女マンガを楽しそうに読んで話してくれますから』
『本当に直哉君がいてくれて良かったわ。……あのね、私たちはあの子に夢を見させてあげたいの。私達では叶えられないけれど、直哉君になら叶えられるんじゃないかと思って。無理なお願いだということは承知しているわ。それでも、もし直哉君さえ良かったらあの子と付き合ってくれないかしら?』
そんなお願いを言われた。俺はその時に、彼女のお母さんからお願いされたから付き合おうと決めた訳じゃなく、彼女が仄かにちらつかせていた夢を叶えたくて、そして俺自身がやっぱり彼女と付き合いたかったから告白することに決めた。
――例え彼女との別れのタイムリミットがあったとしても。
「……え? あっ……え?」
しばらく俺の言葉にポカンとしていた彼女が、漸く口を開いたかと思えば、戸惑った言葉を漏らす。
「突然のことで驚かせたよな、ごめん。……栞、俺と付き合うのは嫌か?」
俺はそこまで鈍感な男ではない。俺と同じく、彼女も俺に好意を寄せていることは、前々から気付いていた。ただ単に、栞にとって身近な男性は父親を除き白髪の医者か同年代の俺くらいだから、必然的なのかもしれないが。
だから、彼女と一番過ごす時間が長い彼女のお母さんがそれに気付き、恋人役になれそうなのが俺だけだったから俺に頼んだとお願いされた日に思った。
「そんなことはない! ……けどっ、」
勢いよく首を振って否定してくれたが、彼女はやんわりと躊躇いを見せる。優しい彼女のことだから、きっと俺の心配をしているんだと思う。
「けど?」
理由が分かっている癖に、彼女の口から聞こうとする俺は意地悪かもしれない。しかし、俺の考えている理由と同じでありたいからこそ、彼女の口から聞きたいんだ。




