出会い(2)
俺と彼女が出会ったのは暖かな春の日差しが眠気を誘うそんな頃。その年、俺が高校2年生となり、本来なら彼女が一つ下の高校1年生になる時期だった。
俺が渡り廊下で見かけてから、ずっと一度も視線を外すことなく外を熱心に見続けているから、何をそんなに見ているのか気になった俺は、気が付けば声を掛けていた。今思えば、彼女からしてみれば急に知らない男が話しかけてきて怖かっただろう。
「……何をそんなに見ているんだ? 外に何かあるのか?」
彼女は突然現れた俺に驚くことなく、緩慢に俺を一瞥して、
「自由に飛び回れる鳥になりたくて」
と、どこか哀しそうに微笑みながら小さな声で答えた。俺はどうして彼女がそう思うのか、なんでそんな哀しそうに笑うのか、彼女について知りたいと興味が沸いた。
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明るかった空も日が落ち、彼女が看護師に呼ばれるまで初対面であるのに俺は隣で話かけ続けた。もっと彼女のことを知りたくて、もっと彼女と話してみたくて、ひたすら話しかけた。その時に、俺は初めて彼女が患っている病気を知った。
「また会いに来ていいか?」
看護師に呼ばれ病室に戻るという彼女との別れ際。俺が何気なく聞いた質問に彼女は目を丸くした。
「え、また来てくれるの?」
「うん。栞さえ良ければ、だけど」
なんだか照れ臭くて少し下を向いてそう言えば、声だけでわかるほど嬉しそうにする彼女。どうやら、ほとんどを病院で過ごしていた彼女は、家族以外にお見舞いに来てくれるような人はいなかったようだ。
それから幼馴染みが退院した後も、俺は暇さえあれば学校終わりに彼女の所へ訪れていた。
「直哉君、今日も来てくれたの!?」
「もしかして、来すぎ?」
「そんなことないよ! すっごく嬉しい」
俺が3日と空けずに訪れることを、満開の花が咲いたような笑顔を見せて喜んでくれる彼女。彼女の元へ訪れるたびに、俺はいつも笑顔で話をしてくれる彼女に惹かれていった。
それでもこの想いは、彼女に生涯伝えることはないだろう。俺だけが大切にしていけばいい。だって彼女は、成人するまで生きていられるのか分からないんだから。もし仮に成人後も生きていられたとしても、そう永くは生きられないのだという。だから、身勝手にもこの思いを伝えてしまったらきっと彼女を苦しめることになってしまう。彼女の笑顔を曇らせたくない。
「あら、直哉君。今日も栞のところへ来てくれたのね。いつもありがとうね」
「いえ。俺が栞の傍にいたいだけですから」
「ふふっ。それ栞が聞いたら喜ぶわね、きっと」
彼女の家族ともそれなりに仲良くなったある日のこと。お見舞いに来ていた彼女のお母さんが、病室から出てすぐの場所で突然俺にお願いをしてきた。




