出会い(1)
――それは、突然のことだった。俺が全く予想をしていなかったことが起きた。
それが起きたのは、俺の最愛の彼女が死んだ翌日のこと。もう彼女はこの世界にいないという事実を到底受け入れることはしたくなくて、愚かにも現実逃避をしていたそんな時。最後の力を出し切ったのか、お世辞にも決して綺麗な字だとは言い難い歪んだ筆圧の薄い字が並ぶ手紙が俺の元に届いた。ところどころ泣いた跡が分かる、桜色の手紙が。
その手紙は彼女のお母さんが病室を整理しているときに見つけたもので、律儀にもその場ですぐ俺に電話をかけてきてくれ、取りに来れるか尋ねてきた。もちろん彼女のものであれば迷うことなく取りに行く。
「直哉君、これがさっき電話で伝えた手紙よ。栞ったら、いつの間に書いてたのかしら」
「おばさん……連絡ありがとうございました」
そんな言葉を交わしながら、俺は彼女のお母さんから手紙を受け取った。何が書かれているのか皆目見当もつかず、緊張のせいか手が震えた。
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栞は、今の医療技術では完治が不可能な難病を患っていた。先天性の病気で、産まれたときから苦しめられていたらしい。それでも、最後の間際まで弱音など一切吐かず、笑ったまま昨日この世を去ったのだ。
そんな彼女と付き合っていたのが、平凡でどこにでもいる大学生の俺。俺たちの出会いは、ドラマのようなドラマチックの出会いではなく、ごく普通の平凡な出会い方だったと思う。
俺がたまたま交通事故に遭った幼馴染みのお見舞いに行った病院に、彼女が入院していた。けれど、彼女が入院している病棟と幼馴染が入院している病棟は離れている。それでも出会った俺たちは、本当に偶然だったのだろう。
ふと何気なく、滅多に来ることがない病院を探索したいと好奇心に駆られた俺は、幼馴染みに飲み物を買って行くついでに色んな場所を歩き回った。勿論、立ち入り禁止の場所もあるから全てを歩き回ることは出来なかった。
ある病棟に差し掛かった時、病棟と病棟を繋ぐ渡り廊下で外を見ている少女を見つけた。その少女こそが、後の俺の彼女になる栞だった。




