勇者武器と魔王武器~聖女奪還作戦その②~
お久しぶりです。
受験まで後数週間ですが、疲れるたびに書いていたら何か一話出来上がってました。
いいね、ブクマ、星等々してくださると嬉しいです。
「先ず始めに、壁一面にかかる武器の説明から始めていこうか。これらは私が過去の文献を漁って発見した国宝級の、古代文明の遺産である武器達だ。好きなのを選ぶと良い。話はそれからだ。」
「なんか一つ…いや七つくらい異常な雰囲気放ってるやつあるけど?」
「言わないでくれ、そしてそれを選んでくれ。私のもどす黒いオーラが出てるんだ。確実に先代が使っていたやつだろうさ。これが所謂特殊武器なんだろう。」
特殊武器。それは特殊職業に就く者達以外には特殊な力が発生して扱うことのできない武器。勇者武器や魔王武器、聖女武器など、各職業に対応した武器が存在する。
「私のは鑑定魔術を使ったら何となく能力は把握できたが、他のはさっぱりなんだ。おそらく対応した職業に就く者以外に鑑定すらできないように作られているんだろうさ。」
「勇者武器は…剣、か。鑑定してみるよ?」
「私も何か変化がないか確認してみよう。さあて、『鑑定魔術』」
その瞬間、「ヴォン」という音とともに大量の文字が規則性を持って現れる。それは触ることが出来ず、素材と原理を解析する魔術を行使しようとすると消えてしまった。こんな物質は見たことはないが、現れた文字列は理解することが出来た。
「特殊機構?神代の遺産かい…?」
「私はそれを仮想板と仮称している。再現は不可能だ、今のところは。何と書いてある?」
「ええと…」
「紙ならあるぞ」
「ありがとうぅ…」
ヴィルから羽ペンと紙を借りて、記されていることを写していく。
勇者武器:『希望潰先汝求物有』
概要:人類の敵に墜ちた勇者を、この世界は咎めることはない。
人類は罪を重ねすぎた。この世界は、人類の敵となる。
神の怒りの欠片は今、躍動を始める。
武器特性:『因果応報』
罪在る者に、この剣は悠久の恨みを有する。
世界は種族としての罪を観測する。
その基準は■■■■■■■■■ことで増減する。
罪深き者程、その者の死は確約される。
『我は執行人であるが故に』
この剣を扱う者、汝世界の執行人の片割れなり。
しかし時に他なる執行人の障壁となりうるだろう。
それもまた一興。■■■はただ嘲笑するのみ。
『効果』:使用者の身体能力を大幅に向上させる。
その他武器特性は現在封印中。戦略級に勇者が昇華されたとき部分解放。
「執行人なあ…君、そういう柄じゃないだろう?」
「うん、僕には復讐者ってののほうが合っている気がするよ。」
「少なくとも人格に合わせた役割ってわけでもなさそうだな。それがわかっただけでも僥倖だよ、ありがとう。私のも一応共有しておこうかな?」
そっと僕の目の前にあった紙を自分の前へと移動させ、新しい羽ペンを出して今度は自分自身の魔王武器の性能を記し始める。最も概要の欄はほとんど一緒なのだが。
勇者武器:『汝絶望希望変者』
概要:勇者たちと肩を並べる魔王を、この世界は咎めることはない。
人類は罪を重ねすぎた。この世界は、人類の敵となる。
神の怒りの欠片は今、躍動を始める。
武器特性:『因果応報』
罪在る者に、この剣は悠久の恨みを有する。
世界は種族としての罪を観測する。
その基準は■■■■■■■■■ことで増減する。
罪深き者程、その者の死は確約される。
『我は帝王であるが故に』
この杖剣を扱う者、汝世界の執行人の片割れなり。
しかし時に他なる執行人の障壁となりうるだろう。
それもまた一興。■■■はただ嘲笑するのみ。
『効果』:使用者の身体能力/魔力を向上させる。
その他武器特性は現在封印中。戦略級に魔王が昇華されたとき部分解放。
「それにしても執行人なぁ…正直、想像もつかないのだが。」
「執行人なんて存在は神話にも出てきていないよね…探すしかないのかな、真なる歴史を紡ぐ神殿を。」
「何だそれは。聞いたことがないぞ?」
「別名神之図書館だったかな。帝国の遺跡の奥深くに存在だけはあるのが知られているはずだよ。」
「そちらの名前なら私も知っている。しかし神の知識か、確かに探す価値はありそうだ。私たちの職業についてもわかると思うしな。しかし今は目先の課題を ――― ―」
「Don't move!君たちはすでに包囲されている!」
閑話休題して本題に入ろうとした瞬間、突然ドアが乱暴に開けられたかと思えば、銃を構えた屈強な男が扉の前で立っていた。明らかに臨戦態勢のその姿を見て、少々困惑する。
「待ってくれ。なぜ私たちが追われなければならない?」
秘匿は完璧のはず。更に二人は偽造した国民票で出国したのだから足がつくはずもない。何かの誤解だという風に装い、ヴィルが男に向かって穏便に済まそうと問いかけた。
「四大国会議での正式な決議が下された。ヴィルテゥエル帝国での事件の関係で、すべての出国者を一度国に戻し、事情聴取を行うことになった。君たちにも一応同行してもらいたい。」
「四大国?五大国ではなく?それにどうやって私たちの居場所をお国が知ったんだ?」
「そんなことも知らんのか。幼いし仕方ないかもしれないが、出国者には目的の国家に入国するまで位置情報が私たちに共有されている。つまりこのまま逃げても無駄だということだ。」
もちろんそんなこと知っている。時間を稼いで通信魔術を秘匿展開し、リベリオスに通信を行う。
『通信魔術は使えるな?情報共有をしたい。戦術級七人、作戦級三人だよな?』
『うん。僕の探知魔術にも映ってるよ。秘匿考えないなら殺れるけど。』
『どうせこの根城は捨てる。同時に行くぞ。武器を構えろ。』
「さあ、こっちへ来るんだ。武器は捨て…」
「「抜刀術『瞬閃』」」
「グハァっ⁉」
目くばせして同時に一閃。男に肉薄し、そのまま命を刈り取る。血しぶきが空間を赤く彩り、ペロリと刀についた血を舐めるヴィルに全員の視線が釘付けになる。
(『過剰な魅力』。効果は一瞬だけど、その一瞬で十分。)
「「『因果応報』」」
「っ!臨戦態勢!何らかのバフが盛られた!作戦級を軸に攻めるぞ!」
「帝国のエンブレム持ちが二人、機国の特殊武装が一人。作戦級は三人だな?戦闘級を連れてこなかった判断は褒めてやるが。でも第二戦略級(二度の戦闘級職業を経た戦略級)が半分しかいないのは甘えじゃないか?」
「化け物が…」
この幼さでこの強さ。十人全員が直感した。この二人が、特殊職業に就く者だと。
「帝国B級戦闘部隊所属、作戦級序列七位ヴェルディエ=アルフレッド。」
「同じく帝国B級戦闘部隊所属、作戦級序列十二位クロード=ディルミニア。」
「機国特殊部隊『先遣隊』所属、作戦級序列十位アルカ=メリード。」
「相対するは世界に復讐を誓う者、暗黒勇者リベリオス。」
「世界に覇を唱える者、そして勇者の隣に居る者。暗黒魔王ヴィルサーク。」
「「「「「いざ尋常に、勝負!」」」」」
死を迎えるであろう者たちに、最後の手向けを。これがこの世界の作法だった。
今、一つ目の伝説が幕を開ける。
いいね、ブクマ、星等々してくださると嬉しいです!!!!(しつこい)