魔と勇が交わりて、物語は始まりを告げる。
流石に始まりまでは出しとこうかな。
んん…設定ゲロりたい欲があるけど、そうすると勉学が疎かになりそうだから我慢します。
ありふれてるお話で、私の文章力もあんまりかもしれないけれど、楽しんでくださると嬉しいです。
勇者と魔王は、二人とも心に闇を抱えていた。
だからこそ惹かれ合う。だからこそ惹かれ合っているのだから ――――
「勇者が生まれれば魔王も生まれる」
…それがこの世界の常識だった。勇者がいなければ魔王も生まれない。このルールは神によって定められた、不変のものだった。いつ如何なるときもそれが間違いであることはなく、災厄がやってくることを表している。
だからこそ、勇者とは嫌悪の対象だった。無駄に優秀で、正義感が強く、多くの人々を巻き込む疫病神。最もそんなイメージを国民に植え付けたのは■■たちなのだが。
<勇者視点>
「お前がいなければ」「お前が生まれてこなければ」
もう、何度言われたかわからない。わかりたくない。5歳、物心もまだついたばかりの僕に、神はなんて試練を与えたのだろう。どこを歩いても、家ですらも、僕は嫌悪の対象だった。人と会えば石ころが飛んでくる。結果的に、僕の体はいつも血だらけだった。母がいてくれたらと何度も思った。生まれたときに感じた母親の愛。父が僕の職業を知って豹変してからも、変わらず注いでくれた愛情は、今ではもう感じることはできない。…父親によって、殺されたからだ。
幼心に人の汚さを知った。そして同時に、それがどれほどまでに痛いものなのかを知った。
もう、限界だった。
「勇者が消えたぞ!」「あのクソガキ、ドアをぶち抜きやがった!」
「嘘だろ、魔鉄だぞ⁉ 鬼どもの一撃にもびくともしねえんだぞ⁉」
そんな僕に、ある日救いの手が差し伸べられた。
「辛かったな、私も同じだ。だが…それも今日で終いだ。」
僕を抱き上げ空へと連れ出した、僕と同じくらいの背丈の女の子。悟る。この子は僕と同類だと。
「あと何人いると思う?」
「あと四人だ。君も気づいているだろう?」
「…ああ!」
彼女は、魔王だ。
「あのガキ飛んでやがるぞ!どこにそんな魔力残してやがった!」
「ああ…?何だああの娘…」
「『過剰な力の暴走』」「『過剰な力の暴走』」
白色の炎と黒色の炎が混ざり合い、眼下の街を焼き尽くす。血が焦げる不快な匂いがあたりを満たす。だがそんな匂いも気にならないほどに、僕は歓喜していた。
初めて、肩を並べた。
初めて、人を殺した。
それに何の抵抗もないことに気がついた僕の中で、何かがぷつんと切れた。
「…お?」
魔王が小さく吐息を漏らす。勇者であることを知ったその日から、ずっと輝いていた腕の紋章が形を変える。輝き方を変える。
「暗黒勇者…」
「あ?」
「ひっ…助け、」
顔に見覚えがあった。…神官だ。僕に勇者だと告げた張本人。
「お前が、僕の人生を狂わせたんだ。」
紋章は、一振りの剣が女神様を突き刺しているものに変わっていた。
「私はっ…神のお告げに従っただけなんだっ…!」
「『黒剣グラディウス』」
…ああ、、
これが、殺意か。
「ぎゃぁぁぁあああぁぁぁ…」
風もなく、雲のない。あの快晴の日、一つの街が、勇者の生まれ故郷が…勇者の手によって滅んだ。この男の境遇を知っていれば想像に固くはない。しかし今ではそれらは改変されてしまっている。生き残った王族たちによって美化され、嘘を織り交ぜられることによって。
老若男女問わず殺された血の海の中で、微笑みを浮かべながら立っていた者たちのことなど、今では知るものは数人だけになった。英雄たちの本質など、暴けばこんなものなのかと思うかもしれない。だが…考えても見てほしい。
血の匂いに慣れた人間など、狂人以外の何者でもないのだから。
今でも血を吸った木々の群生地となっている街の跡地を見れば、人々も流石に何かがあったことは想像できた。しかし、英雄の虚像に魅せられてしまっている者たちは言う。勇者様たちが化け物を討伐してくださったのだ!と。
「勇者、名前は?」
「リベリオス。…今亡き母が、つけてくれた名だよ。」
「…そうか、良い名だな。」
少女は少年が座る、半ば半壊した屋根に飛び移る。
「…君の名前は?」
「私か?…私に、名前はない。」
少しだけ悲しげな顔を見て、少年…改めリベリオスがぽつりと呟いた。
「…なら、僕がつけても良い?」
「え?」
「嫌なら大丈夫だ、だけれど…わっ」
むぎゅ、と抱きすくめられる。同時に首筋に水滴のような感触が伝う。
「…それは反則だぞ、リーベ。…ああ、頼むよ。」
「…大丈夫、僕は君の側にいるよ。これから先、ずっと。」
張本人たちと空の満天の星だけが、この事の次第を知っていた。
「君はヴィル。優しき魔王、ヴィルサークだ。」
「ふふ、大切にするよ。これから、ずっと。」
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