9:カグヤ「IQ300はあるなこの人……」※3です。
まだ冒険者になってないので、ここまではプロローグ。
つまり初投稿です。
「俺はいずれ英雄になる男と、常々言っているだろう? そのためには冒険者となり、様々なダンジョンや危険地帯に向かい、人に仇なす存在を滅殺するのが一番だ。
そうやって平和を守り、人々から信頼を得てこそ、初めて英雄と名乗れるのだ」
――その言葉を聞いた瞬間、カグヤとマメコたちはハッとした。
なぜアシュリーが冒険者になると言い出したのか。それはつまり、
(そうか! 善行を為して人々からの信頼を得ることで、国家転覆をやりやすくするのか!)
成る程、やはりこの人は素晴らしいとカグヤは彼を敬愛の目で見る。
(人々から信頼を集め、英雄と呼ばれる存在になるメリットは数多くある。
たとえばいよいよ経済崩壊が起こり、私たち亜人種と共に弱り果てた帝国軍を蹴散らすとしよう)
問題はその後だ。国の崩壊後、市民たちは酷く混乱するだろう。
そんな彼らに亜人種たちが「落ち着け」と言ったところで、誰が聞いてくれる?
その亜人種たちに慕われた『よくわからない無名の少年』が言っても、結果は同じだ。
(このままでは自分たちも殺されると、民衆たちは亜人種たちやアシュリー殿に恐怖するだろう。
そして始まる無益な戦い。ある者は民兵となって私たちを狙い、ある者は野に逃げ出して魔物に食われ、ある者は混乱に乗じて犯罪行為を行うようになり……)
まさに地獄だ。ゲオルギス帝国を恨むカグヤだが、流石に一般市民を苦しめようとは思わない。
アシュリー曰く、出した金は回収も出来ると聞く。
経済崩壊から国家転覆を起こした後は、溢れた金貨を回収し、混乱を収めようとも考えていた。
(そのための策が、冒険者として名を上げて、民衆に愛される事だったか!
無名の少年の言うことなど聞かないだろうが、『英雄』の言葉なら話は別! それにッ)
その英雄たるアシュリーが、こういう理由で国を破壊したと言ったらどうなる?
“このゲオルギス帝国の上層部は、ずさんな体制から偽金貨の乱造を招いて国を乱した。だから俺が粛清することにした”と!
(本当は彼がやったことなのだが……それを隠した上で、国家転覆の『正当な理由』にしてしまえば、全ての市民はアシュリー殿に従うことだろう!)
あぁ、なんと悪魔的な策略なのか……!
カグヤは主君の天才的頭脳を前に、下腹部が熱くなる思いだった。
それは隣に立つマメコも同じだ。
(主殿……しゅごい……!)
苛烈で冷酷で大胆で優秀なアシュリーの智謀に、マメコたち隠密部隊もメロメロだ。
(ただのお金持ちじゃなく、冒険者という立場なら、武器をいっぱい集めても怪しむ者は少なくなるでござる……! 主殿は、そこまで考えて……)
アリバイ作りを含めての『冒険者になる』発言だったかと、マメコたちは感心した。
彼女らとカグヤは一瞬目を合わせると、意思の疎通を図る。
(マメコよ。大量の奴隷を買い、武器まで集めているアシュリー殿の存在は、いずれは反逆者として疑われることはわかっていた。
だが彼は冒険者を目指すと公言したことで、無理やりに国から調べられるまでの時間を延ばした)
(時間は拙者たちの味方でござるな。時が経つほど、溢れた金貨は国を蝕み、経済崩壊に向かっていく。
――ならばカグヤ姫よ。拙者たちのやるべきことは……!)
(ああ! アリバイを強化し、その時間をさらに稼ぐことだ!)
彼女たちは小さく頷き合い、そしてアシュリーに言い放つ。「私たちも冒険者になる!」と。
――それが最善策だろうと彼女たちは信じていた。
アシュリー一人が冒険者として大量の武器を集めた場合、何かおかしいと疑う者はいるだろう。
しかし、アシュリーの使用人たちも冒険者ということになれば、たくさんの武器を仕入れなければいけない理由もつく。それで疑う者は減るはずだ。
(きっとアシュリー殿も、私たちにそう行動して欲しいと思っているはず)
(さぁ主殿よ、拙者たちの選択は間違っているでござるか!?)
心の中で緊張する少女たち。
この賢さに溢れた主君の考えを汲み取れているだろうかと、反応を待つ。
かくして数秒後……。
「……嬉しいぞ、お前たちよ!」
「「っっっ!」」
結果は、大正解だった!
アシュリーは口元に微笑を浮かべ、「よしいいだろう、明日は共に冒険者ギルドに行こう!」と、喜ばしそうに言い放つ。
(うおおおおっ、やったぞマメコ! やはり彼は、私たちにもアリバイ作りに協力して欲しいと思っていたようだ!)
(嬉しいでござるなぁカグヤ姫! 考えを先読みできる有能アピールで、好感度アップでござる!)
わーいわーいっと内心喜び合う少女たち。
こうして反逆者であることを隠すために、一大冒険者軍団『アシュリーパーティー』が生まれることになったのだった。
なお。
「……嬉しいぞ、お前たちよ!(わーいっ、冒険者仲間がいっぱいできちゃったー!)」
アシュリーはただ単に、彼女たちが冒険者になってくれることが嬉しいだけの模様。
自分が反逆者ムーブを決めている意識などこれっっっっっっぽっちもないこの男は、従者たちに発言を深堀されまくっていることも知らず、子供のように喜ぶのだった。
断言しよう。アホである。
〜作者からの大切なお願い〜
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