5:テロリストチーム、武装開始(無自覚)
座右の銘は「初心を忘れず」。
なので実質初投稿です
奴隷たちを買い取ってから一週間。
俺はあちこちの奴隷オークションに顔を出し、次々と亜人種たちを買い取っていった。
下衆な客どもが悔しがる様子が楽しい。たびたび競り合う者がいるが、俺の【無限にお金が出るサイフ】の前には敵なしだ。完膚なきまでに蹴散らしてやった。
それと、買い取った者たちを合流させてやると思わぬ人間ドラマも見れた。
「ママぁああ!」
「姫様、生きてらっしゃったのですねっ!」
「おぉ戦士長ッ、また会うことが出来るとは!」
再会に涙ぐむ姿が微笑ましい。
同じ国からさらわれた者が多く、以前に買い取った者たちの中に身内がいることが多かった。
そんなこんなで、オリオンの街外れに借りた屋敷『未来英雄アシュリーハウス』には、次々と人が増えていったのだった。
◆ ◇ ◆
「そうだ。そろそろ装備を買わなければいけなかったな」
ある日の午後。屋敷のお庭で紅茶を飲みながら、俺は当初の目的を思い出した。
忘れていた。元々は冒険者になるための剣や鎧を買うために、オークションへの参加を決めたんだ。
それなのにだ。初日も二日目も三日目も、そこらへんを歩いてる人(偶然みんな顔が怖かった)にお金を握らせて「オークション会場まで案内を」と言ったら、毎回どこかの奴隷オークションに連れていかれた。
それでクズな客たちに競り勝つことや奴隷を解放するのが気持ちよくなって、四日目からは嬉々として奴隷オークションを探し回るようになっていた。
しまったぁ……と三秒ほど思ったが、やっぱり『流石は俺だ』と自分をほめることにする。
悪を挫き、囚われている人を救い出すのに夢中になるとは、まさに英雄。素晴らしい脳みその持ち主だ。
お父さんはそんな俺のことを『お前トリ頭すぎる上に自己陶酔が激しすぎて反省というのをまったくしないから、間違っても頭脳職には就くなよ』と失礼なことを言ってたが、これは英雄の資質だと思いますよ。
というわけで普通に装備が売ってるオークションに出向くとしますかぁ。
あ、でも普通のオークションなら、奴隷オークション以上に色んな所で色んな人がやってそうだし、ここは……!
「来てくれ、隠密部隊」
『はッ!』
名を呼ぶや、黒づくめのイヌ耳少女たちがザッとどこかから現れた。
彼女たちは隠密部隊『影犬』。
元は極東の島国『マガテラス』の王族に仕えていた者たちだ。
あちこちのオークションでばら売りになっていたところを、全員買い取らせてもらった。
「何なりとおっしゃってくだされ、主様。アナタ様はこうして拙者たちを出会わせてくれた上、カグヤ姫のことも救い出してくださった。このご恩に報いるためなら、どんな命令でも聞くでござる」
隠密部隊のちっちゃなリーダー、マメコちゃんが深々と頭を下げてくる。えらいね。
ちゃんと恩義を感じてくれる人ってステキだと思いますよ。俺のお母さんも、肩たたきしたらその日は大好きなカレー作ってくれるしね。
「では命じよう。お前たちには街中の装備オークションに参加し、武器や鎧の類を全て買い取ってきて欲しい」
「ほほう……!」
感心したような声を出すマメコちゃん&隠密部隊。どうやら俺の考えに気付いたようだ。
そう。ひとつのオークションに参加している間に、別のオークションで俺に相応しい装備が売られていないとは限らないからな。
それならば人海戦術とお金パワーで、全部買い取ってしまえばいいわけだ。かしこい。
「もちろん金は持たせるが、それゆえに悪しき輩に狙われる危険性もある」
特に亜人種は差別されてるからね。商品を買いまくった後でも、今度はそれを狙って客たちが迫ってくるかもだし。
「そこでお前たち隠密部隊だ。カグヤからは、『気配を消して移動できる上、いざという時には腕も立つ』と聞く。お前たちならば安心して任せられるだろう」
『ありがたきお言葉っっっ!』
再び頭を下げる隠密部隊。
そのリーダーであるマメコちゃんはニッと笑うと、俺にこう言ってきた。
「いよいよ、我らの装備を揃えていくわけでござるか。これは滾るでござるなぁ……!」
ん? 我らの装備??? えっ、どゆことそれ? 俺、自分用のヤツが欲しいだけなんだけど?
……あー。もしかしてこの子たちも冒険者になりたかったわけ? それで装備が買ってもらえると思ってたと? そりゃ気付かなかったわ。
俺の気遣いパワーもまだまだだな。彼女たちの願いに気付けなかったことに、俺はちょっと情けなくなって眉を下げた。
「……本当はな、自分一人だけが戦えればいいと思ってたんだ……」
「なんですとっ……!?」
素直に自分の装備しか考えてなかったことを打ち明ける。
俺は未来の英雄だからね。ちゃんと間違いは説明して謝罪しますよ。
「(冒険者は)危険な道だ。お前たちのような美しい少女たちが歩むには、あまりにも苛烈に思える。
こんな道に身を捧げていいのは俺のような命知らずだけだ……お前たちには普通に幸せになってほしいと思う」
「っっ……!」
胸を打たれたような表情をする少女たち。
彼女たちへと言葉を続ける。
「だがしかし。お前たちの胸に真なる闘志があるならば、それを無下に出来るわけがない……!」
俺は黒革のサイフを取り出した。
それをひっくり返し、山ほどの金貨を少女たちの前に出す。
「さぁ戦士たちよ。好きなだけ使い、装備を揃えろ。命尽きる最後の時まで、共に同じ夢(冒険者)を目指そうじゃないか!」
『はッ、ははぁッ!』
少女たちは三度頭を下げた。
その中には涙を流す者もいた。
……ふふふ。たぶん『女の子なのに冒険者を目指すなんて、おてんばな夢を認めてくれた!』とか喜んでくれてるんだろうね~! うふふふ!
お読みいただきありがとうございます!
【読者の皆様へのお願い】
少しでも面白いと思って頂けたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!
評価はページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップすると付けることができます。
ポイントを頂けるとやる気がモリモリ湧いてくるのです・・・!
これからも面白い物語を提供していきたいと思います、よろしくお願い致します!
あと友達と家族とネット上の知り合いに『頭良くなる経済モノ小説だよ』と勧めておいてください